認知症の帰宅願望への対応方法とは?介護職が焦らず関わるための声かけと注意点

施設内で職員が高齢者に寄り添い、奥に自宅を思い浮かべる情景が浮かぶ、帰宅願望への関わりを表すやわらかなイラスト 4-2.認知症対応

認知症の利用者さんから「家に帰りたい」「もう帰らせて」と言われると、介護職はどう対応すればよいか迷いやすいです。

特に新人のうちは、「止めないと危ない」「でも否定すると怒らせてしまう」「何と声をかければいいかわからない」と焦ってしまうこともあります。

認知症の帰宅願望は、単にわがままを言っているわけではありません。本人の中では「帰らなければいけない理由」があり、不安や混乱、役割意識、環境への違和感などが重なって表れることがあります。

この記事では、認知症の帰宅願望への対応方法、介護職が使いやすい声かけ、避けたい対応、安全面での注意点、職場で共有すべきポイントをわかりやすく解説します。

この記事でわかること

・認知症の帰宅願望が起こる主な背景
・「帰りたい」と言われたときの基本対応
・介護職が使いやすい声かけ例
・やってはいけない対応と注意点
・離設や転倒を防ぐための観察ポイント
・一人で抱え込まないための職場内共有の仕方

  1. 認知症の帰宅願望は「家に帰りたい」だけを見ないことが大切
    1. 本人にとっては本当に帰る必要がある感覚になっている
    2. 「家」は建物ではなく安心できる場所を意味していることもある
    3. 夕方・食後・入浴前後など出やすい時間を観察する
  2. 「帰りたい」と言われたときに介護職が最初にする対応
    1. まずは止める前に気持ちを受け止める
    2. 理由を聞くときは問い詰める言い方にしない
    3. 安全を確認しながら距離を取りすぎない
  3. 認知症の帰宅願望で使いやすい声かけ例
    1. 「帰れません」ではなく「一緒に確認しましょう」に変える
    2. 役割意識が強い人には「頼る声かけ」が合うこともある
    3. 外に出たい気持ちが強いときは「付き添い」を前提に考える
  4. 帰宅願望への対応で避けたい関わり方
    1. 正論で説得し続ける
    2. 嘘でその場をしのぎ続ける
    3. 強く止める・囲む・急に触れる
  5. 帰宅願望が強い利用者さんを安全に見守るポイント
    1. 離設リスクは「帰りたい発言」だけで判断しない
    2. 体調不良や痛みが帰宅願望に見えることもある
    3. 環境の刺激を減らすと落ち着く場合がある
  6. 介護職が一人で抱え込まないための記録と共有
    1. うまくいった声かけを記録する
    2. 家族情報や生活歴をケアに活かす
    3. 新人介護職は自己判断で抱え込まない
  7. 帰宅願望に対応するときの職場選び・働き方の注意点
    1. 認知症対応は職場の教育体制で差が出やすい
    2. 職員がいつも怒鳴っている職場は注意が必要
    3. 夜勤帯の帰宅願望は特に確認しておく
  8. まとめ:認知症の帰宅願望は「止める対応」より「安心につなげる対応」を意識する

認知症の帰宅願望は「家に帰りたい」だけを見ないことが大切

本人にとっては本当に帰る必要がある感覚になっている

認知症の帰宅願望では、利用者さんが「ここは自分のいる場所ではない」「家に帰らないといけない」と強く感じていることがあります。

周囲から見ると、施設に入居していることや今の時間帯がわかっていても、本人の中ではそう感じられない場合があります。そのため、介護職が「ここがあなたの部屋ですよ」「もう家には帰れません」と説明しても、納得につながらないことがあります。

認知症では、記憶や時間、場所の理解があいまいになりやすく、環境や体調、心理状態の影響によって不安や落ち着かなさが出ることがあります。厚生労働省の資料でも、BPSDは環境やケア、健康状態、心理状態などの影響を受けるとされています。(厚生労働省)

大切なのは、「帰りたい」という言葉だけで判断せず、その奥にある気持ちを考えることです。

「家」は建物ではなく安心できる場所を意味していることもある

利用者さんが言う「家」は、今の住所や実際の自宅だけを指しているとは限りません。

たとえば、昔住んでいた家、若いころの実家、子育てをしていたころの家、仕事から帰る場所など、本人にとって安心できる記憶の中の場所を指していることがあります。

そのため、「家はもうありません」「ここが今の家です」と現実だけを伝えると、かえって混乱や悲しみにつながることがあります。

介護職は、まず「どんな家に帰りたいのか」「誰に会いたいのか」「何をしに帰るつもりなのか」を探る視点を持つと、対応の糸口が見つかりやすくなります。

見方のポイント

帰宅願望は、単なる外出希望ではなく、
安心したい、役割を果たしたい、慣れた場所に戻りたいという気持ちの表れとして考えると対応しやすくなります。

夕方・食後・入浴前後など出やすい時間を観察する

帰宅願望は、いつでも同じように起こるとは限りません。特定の時間帯や場面で強くなることがあります。

たとえば、夕方になると「そろそろ帰らないと」と言う人もいます。これは、昔の生活習慣として「夕方になったら家に帰る」「家族の夕食を準備する」といった感覚が残っている場合があります。

また、食後や入浴後、レクリエーションが終わった後など、何かの区切りで帰宅願望が出ることもあります。本人の中で「用事が終わったから帰る」という流れになっていることもあります。

帰宅願望が出やすい場面考えられる背景
夕方昔の生活リズムで「帰る時間」と感じる
食後食事が終わり、次に帰宅する流れになる
入浴後外出や用事が終わった感覚になる
面会後家族と一緒に帰れると思う
フロアが騒がしい時落ち着けず、安心できる場所に移動したくなる
職員交代の時間周囲の雰囲気が変わり、不安が強まる

帰宅願望への対応では、言葉だけでなく、いつ、どこで、誰といる時に出やすいかを観察することが大切です。

「帰りたい」と言われたときに介護職が最初にする対応

まずは止める前に気持ちを受け止める

利用者さんが「家に帰りたい」と言ったとき、介護職はすぐに「帰れません」と言いたくなるかもしれません。

しかし、最初から否定すると、本人は「わかってもらえない」「閉じ込められている」と感じることがあります。その結果、不安や怒りが強まり、さらに帰ろうとする場合もあります。

最初の対応では、まず気持ちを受け止めることが大切です。

たとえば、次のような声かけです。

・「お家に帰りたいんですね」
・「何か気になることがありますか?」
・「ご家族のことが心配なんですね」
・「帰る準備をしたい気持ちなんですね」

ここで大切なのは、すぐに説得しようとしないことです。本人の気持ちを一度受け止めるだけでも、緊張が少し下がることがあります。

理由を聞くときは問い詰める言い方にしない

帰宅願望の理由を知ることは大切ですが、「なんで帰りたいんですか?」「どこに帰るんですか?」と強く聞くと、本人が責められているように感じる場合があります。

理由を聞くときは、やわらかく、選びやすい言葉にすると話しやすくなります。

たとえば、

・「お家で何か用事がありましたか?」
・「誰か待っている方がいますか?」
・「心配なことがある感じですか?」
・「少し落ち着かない感じがしますか?」

このように聞くと、本人の中にある不安や目的を知るきっかけになります。

もし「子どもが待っている」「ご飯を作らないと」「仕事に行かないと」と話された場合は、生活歴や過去の役割が関係していることもあります。本人にとっては大切な役割なので、否定せずに受け止めることが必要です。

安全を確認しながら距離を取りすぎない

帰宅願望がある利用者さんは、急に立ち上がったり、玄関やエレベーターの方へ歩き出したりすることがあります。

そのため、声かけと同時に安全確認も必要です。

確認したいポイントは、次のようなことです。

・歩行状態は安定しているか
・杖や歩行器を使う人か
・靴を履こうとしているか
・玄関や非常口に向かっているか
・表情が興奮しているか
・転倒リスクが高い時間帯か
・他の利用者さんを巻き込んでいないか

ただし、危ないからといって、いきなり腕をつかんだり、正面から立ちふさがったりすると、本人が驚いたり怒ったりすることがあります。

現場で意識したいこと

帰宅願望への対応は、
「止める」より先に「落ち着いてもらう」ことを目指すと関わりやすくなります。
ただし、転倒や離設の危険がある場合は、すぐに近くの職員へ協力を求めましょう。

認知症の帰宅願望で使いやすい声かけ例

「帰れません」ではなく「一緒に確認しましょう」に変える

帰宅願望への声かけで避けたいのは、最初から現実を強く突きつける言い方です。

「帰れません」
「もう家じゃなくて施設です」
「何回も言いましたよ」

このような言葉は、介護職に悪気がなくても、本人には冷たく聞こえることがあります。

代わりに、次のような言い方が使いやすいです。

避けたい言い方言い換え例
帰れませんまず一緒に確認しましょう
ここが家です今日はここで休む予定になっていますよ
何回も言いましたよ心配になりますよね。もう一度確認しますね
勝手に出ないでください危ないので、私も一緒に行きますね
そんなことありませんそう感じたんですね。少しお話を聞かせてください

「帰る・帰らない」の対立にしないことがポイントです。介護職が正しさで押すほど、本人は不安になりやすい場合があります。

役割意識が強い人には「頼る声かけ」が合うこともある

「ご飯を作らないと」「子どもが待っている」「仕事に行かないと」という帰宅願望では、本人の役割意識が関係している場合があります。

このときに「もう仕事はしていません」「子どもさんは大人ですよ」と言うと、本人の大切な記憶や役割を否定することになりかねません。

そのような場合は、本人の役割を尊重しながら、今できる行動へつなげる声かけが使いやすいです。

たとえば、

・「ご家族のことが心配なんですね。まずお茶を飲みながら確認しましょう」
・「夕飯の準備が気になるんですね。少しこちらを手伝っていただけますか?」
・「お仕事のことを大切にされていたんですね。出発前に少し休みましょう」
・「いつも家のことをしっかりされていたんですね」

本人の気持ちを受け止めたうえで、洗濯物たたみ、テーブル拭き、タオル整理など、簡単な役割をお願いすると落ち着く人もいます。

ただし、無理に作業へ誘導すると逆効果になることもあります。本人の表情や疲れ具合を見ながら行うことが大切です。

外に出たい気持ちが強いときは「付き添い」を前提に考える

帰宅願望が強いとき、無理にフロアへ戻そうとしても難しいことがあります。

安全が確保でき、職場のルール上可能であれば、少し廊下を歩く、玄関近くまで一緒に行く、中庭や施設周辺を短時間歩くなどの対応が合うこともあります。

そのときの声かけは、次のようにすると自然です。

・「少し一緒に歩きましょうか」
・「外の様子を見に行ってみましょう」
・「私も一緒に行きますね」
・「寒くないように上着を持っていきましょう」

大切なのは、本人を一人で行かせないことです。歩行が不安定な人、離設リスクが高い人、興奮が強い人の場合は、自己判断で外へ連れ出さず、上司や看護師、他の職員に確認しましょう。

声かけの基本

帰宅願望の対応では、
否定・説得・命令よりも、共感・確認・同行の言葉を使うと関わりやすくなります。

帰宅願望への対応で避けたい関わり方

正論で説得し続ける

介護職がやりがちな対応の一つが、正しい説明を何度も繰り返すことです。

「ここは施設です」
「今日は泊まる日です」
「家族さんからも聞いています」
「もう夜だから帰れません」

もちろん、必要な説明をする場面はあります。しかし、認知症の利用者さんが不安の中にいるときは、正しい情報を伝えても安心につながらないことがあります。

むしろ、「自分だけがわかっていない」「だまされている」と感じて、混乱が強まることもあります。

説明する場合は、短く、やさしく、何度も責めない言い方を意識しましょう。

たとえば、

・「今日はここで休む予定です」
・「ご家族にも確認しています」
・「心配なので、私も一緒にいますね」

このように、説明よりも安心感を添えることが大切です。

嘘でその場をしのぎ続ける

帰宅願望への対応では、「もうすぐ迎えが来ますよ」「今日は電車が止まっています」などの言い方が使われることがあります。

その場では落ち着くこともあるかもしれませんが、毎回その場しのぎの嘘で対応すると、本人の不信感につながる場合があります。また、職員によって言うことが違うと、本人がさらに混乱することもあります。

もちろん、現場では本人の不安が強く、安全確保を優先しなければならない場面もあります。そのため、すべてを一律に「絶対にだめ」とは言い切れません。

ただし、基本としては、本人をだますよりも、安心できる言葉で気持ちを受け止める対応を目指した方がよいです。

判断に迷う場合は、職場の方針、ケアプラン、上司の考え方を確認しましょう。

強く止める・囲む・急に触れる

帰宅願望が強くなると、利用者さんが玄関へ向かったり、エレベーターに乗ろうとしたりすることがあります。

そのとき、介護職が焦って強く止めると、本人は「邪魔された」「閉じ込められた」と感じることがあります。

特に避けたいのは、次のような対応です。

・急に腕をつかむ
・複数人で囲む
・大きな声で止める
・正面から立ちふさがる
・本人の荷物を無理に取り上げる
・「だめです」と繰り返す

身体的に制止する必要がある場面もありますが、それは転倒や離設など差し迫った危険がある場合です。身体拘束や行動制限に関わる判断は、職員個人で安易に行うものではありません。厚生労働省の身体拘束廃止・防止の手引きでも、高齢者の尊厳を保持した生活を支えるケアの重要性が示されています。(厚生労働省)

現場では、利用者さんの安全と尊厳の両方を守る視点が必要です。

注意

危険がある場面では安全確保が最優先です。
ただし、強い制止や身体的な対応が必要になりそうな場合は、必ず複数職員で対応し、上司へ報告することが大切です。

帰宅願望が強い利用者さんを安全に見守るポイント

離設リスクは「帰りたい発言」だけで判断しない

帰宅願望があるからといって、すべての人がすぐに離設するわけではありません。

一方で、普段は穏やかな人でも、急に玄関へ向かうことがあります。そのため、離設リスクは「帰りたい」と言う回数だけで判断しない方が安全です。

見るべきポイントは、発言だけでなく行動です。

・荷物をまとめている
・靴や上着を探している
・玄関の場所を何度も聞く
・エレベーター前に行く
・職員の目を避けて移動する
・落ち着かず歩き回る
・家族の面会後に不安定になる
・夜間や早朝に居室から出てくる

このような行動がある場合は、記録に残し、申し送りで共有することが大切です。

体調不良や痛みが帰宅願望に見えることもある

「帰りたい」という訴えの背景に、体調不良が隠れていることもあります。

たとえば、便秘、尿意、痛み、空腹、眠気、発熱、脱水、薬の影響、不眠などがあり、本人がうまく言葉にできない場合です。その不快感が「ここにいたくない」「帰りたい」という言葉として出ることがあります。

特に、急に帰宅願望が強くなった場合や、普段と様子が違う場合は注意が必要です。

確認したいことは、次の通りです。

観察項目見るポイント
表情苦痛、不安、眠そうな様子がないか
歩き方ふらつき、痛みをかばう動きがないか
排泄便秘、尿意、失禁後の不快感がないか
食事・水分空腹、脱水、食事量低下がないか
睡眠夜眠れているか、昼夜逆転がないか
服薬薬の変更後に様子が変わっていないか

介護職だけで判断が難しい場合は、看護師や上司に相談しましょう。急な混乱、発熱、強い痛み、転倒後の変化などがある場合は、医療的な確認が必要になることもあります。

環境の刺激を減らすと落ち着く場合がある

帰宅願望が出る背景には、環境の影響もあります。

フロアが騒がしい、テレビの音が大きい、照明がまぶしい、人の出入りが多い、座席が落ち着かないなど、本人にとって不安になる刺激があると「ここから離れたい」という気持ちにつながることがあります。

厚生労働省の認知症ケアに関する資料でも、温度、明るさ、騒音、整理整頓、職員の表情や行動など、環境面への配慮が示されています。(厚生労働省)

現場でできる工夫としては、次のようなものがあります。

・落ち着いた席へ案内する
・テレビや音量の刺激を減らす
・本人の居室で少し休んでもらう
・なじみの物を近くに置く
・職員が慌ただしく動きすぎない
・夕方前に声かけや水分補給をする
・面会後の不安定さを事前に把握する

環境を少し変えるだけで、帰宅願望が弱まる人もいます。

観察のコツ

帰宅願望が出たときは、
「本人の性格」だけでなく、「時間・場所・体調・周囲の刺激」もセットで見ると原因を探りやすくなります。

介護職が一人で抱え込まないための記録と共有

うまくいった声かけを記録する

認知症の帰宅願望への対応は、人によって合う方法が違います。

ある人には散歩が合っても、別の人には逆に帰宅願望が強まることがあります。ある人には「ご家族に確認しましょう」が安心につながっても、別の人には不安が増すこともあります。

そのため、うまくいった対応は記録して共有することが大切です。

記録するときは、次のように具体的に残すと役立ちます。

・何時ごろ帰宅願望が出たか
・どこで言い始めたか
・その前に何があったか
・どんな言葉を使ったか
・何分くらいで落ち着いたか
・逆効果だった対応は何か
・転倒や離設につながりそうな行動はあったか

「帰宅願望あり」だけでは、次の職員が対応に困ります。できるだけ、状況と対応をセットで残しましょう。

家族情報や生活歴をケアに活かす

帰宅願望への対応では、家族情報や生活歴が大きな手がかりになります。

たとえば、

・昔、農作業をしていた
・夕方に家族の食事を作る役割があった
・仕事熱心だった
・子どもの世話を大切にしていた
・家に強い愛着がある
・犬や猫を飼っていた
・毎日決まった散歩習慣があった

こうした情報があると、「なぜ帰りたいのか」を考えやすくなります。

厚生労働省の意思決定支援に関する資料でも、本人の視点に立つことや、本人の語り・表情などを具体的に記録することの重要性が示されています。(厚生労働省)

本人の言葉や表情を大切にしながら、その人に合う関わりをチームで考えていくことが大切です。

新人介護職は自己判断で抱え込まない

新人介護職ほど、「自分の対応が悪かったのでは」と悩みやすいです。

しかし、認知症の帰宅願望は、一人の職員の声かけだけで完全になくせるものではありません。認知症の症状、生活歴、環境、体調、家族関係、職場の体制など、さまざまな要素が関係します。

特に次のような場合は、早めに上司や先輩へ相談しましょう。

相談したい場面

□ 玄関や非常口へ向かうことが増えた
□ 夜間や早朝に居室から出ることが多い
□ 声かけで怒りや興奮が強くなる
□ 転倒しそうな歩き方で歩き回る
□ 食事量や睡眠など体調の変化がある
□ 家族面会後に毎回不安定になる
□ 職員によって対応がバラバラになっている

「自分で何とかしなければ」と考えすぎる必要はありません。むしろ、早く共有することが安全につながります。

帰宅願望に対応するときの職場選び・働き方の注意点

認知症対応は職場の教育体制で差が出やすい

認知症の帰宅願望への対応は、経験だけで身につけるものではありません。

もちろん慣れも大切ですが、職場で基本的な考え方を教えてもらえるか、先輩が一緒に対応してくれるか、対応方法を記録で共有しているかによって、新人の不安は大きく変わります。

未経験で介護職を始める人や、認知症対応に不安がある人は、求人を見るときに「認知症の方が多いか」だけでなく、「対応を学べる環境があるか」を確認しましょう。

面接や見学で聞ける場合は、次のような質問が役立ちます。

面接・見学で聞きたい質問

「認知症の利用者さんへの対応は、最初にどのように教えてもらえますか?」
「帰宅願望や不穏がある方への対応は、職員間で共有されていますか?」
「未経験の場合、最初から一人で対応することはありますか?」
「困った時に相談できるリーダーや看護師はいますか?」
「夜勤で認知症対応に困った場合の連絡体制はありますか?」

「未経験歓迎」と書かれていても、教育体制が十分とは限りません。仕事内容だけでなく、相談しやすさを確認することが大切です。

職員がいつも怒鳴っている職場は注意が必要

認知症対応では、職員の雰囲気も大きく影響します。

利用者さんは、職員の声の大きさ、表情、歩き方、忙しそうな雰囲気を敏感に感じ取ることがあります。職員が常に怒鳴っていたり、利用者さんを急かしていたりすると、不安が強まりやすい場合があります。

職場見学では、次の点を見ておくとよいです。

・利用者さんへの声かけが丁寧か
・「何回言ったらわかるの」といった言葉がないか
・フロアが常に騒がしすぎないか
・新人が質問しやすそうか
・帰宅願望がある人に複数職員で落ち着いて対応しているか
・職員が利用者さんの前で強い口調になっていないか

帰宅願望への対応は、職員個人の技術だけでなく、職場全体のケア方針に影響されます。

夜勤帯の帰宅願望は特に確認しておく

認知症の帰宅願望は、日中だけでなく夜間にも起こることがあります。

夜勤帯は職員数が少ないため、利用者さんが居室から出てきたり、玄関方向へ向かったりすると、対応が難しくなることがあります。

夜勤がある職場で働く場合は、次の点を確認しておくと安心です。

確認項目見るポイント
夜勤開始時期未経験でもすぐ夜勤に入るのか
同行夜勤何回くらい先輩と一緒に入れるか
認知症の利用者数夜間に歩く人、帰宅願望がある人がいるか
連絡体制困った時に誰へ連絡するか
記録共有夜間の行動パターンが共有されているか
建物構造玄関、階段、エレベーターへの動線は安全か

夜勤が不安な人は、最初から夜勤ありの正社員にこだわらず、日勤帯で認知症対応に慣れてから働き方を広げる方法もあります。

まとめ:認知症の帰宅願望は「止める対応」より「安心につなげる対応」を意識する

認知症の帰宅願望への対応では、介護職が焦ってしまう場面も多いです。

利用者さんが玄関へ向かったり、「帰らせて」と強く言ったりすると、すぐに止めなければと感じるのは自然なことです。

ただ、帰宅願望は本人の中にある不安、混乱、役割意識、安心したい気持ちが表れていることがあります。そのため、言葉だけを否定するよりも、まず気持ちを受け止め、理由を探り、安全を確認しながら関わることが大切です。

介護職が意識したいのは、正しい説明で納得させることだけではありません。本人が「わかってもらえた」「一人ではない」と感じられる関わりを積み重ねることです。

この記事のまとめ

・認知症の帰宅願望は、不安や混乱、役割意識の表れとして起こることがある
・「帰れません」と否定する前に、まず本人の気持ちを受け止める
・声かけは、説得よりも共感、確認、同行を意識する
・急な変化や体調不良がある場合は、看護師や上司に確認する
・離設や転倒のリスクは、発言だけでなく行動も見て判断する
・対応方法は一人で抱え込まず、記録と申し送りで共有する
・未経験者は、認知症対応を学べる職場かどうかを確認しておくと安心

帰宅願望への対応に、いつも完璧な正解があるわけではありません。

同じ声かけでも、日によって反応が違うこともあります。だからこそ、介護職一人で抱え込まず、利用者さんの生活歴や体調、環境をチームで見ながら対応を考えていくことが大切です。

焦って止めるだけではなく、**「なぜ帰りたいのか」「どうすれば安心できるのか」**を考える姿勢が、認知症の利用者さんにとっても、介護職にとっても無理の少ない関わりにつながります。

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