認知症の利用者に怒鳴られる介護職へ|つらい理由と落ち着いて対応するコツを解説

認知症の利用者から強い言葉を受けた介護職が距離を保ちながら対応を考える介護施設内の様子 4-2.認知症対応

認知症の利用者さんに怒鳴られると、介護職であっても心が傷つきます。

頭では「認知症の症状かもしれない」「自分に悪意があるわけではない」とわかっていても、強い口調で怒鳴られたり、何度も責められたりすると、つらくなるのは自然なことです。

特に新人介護職や未経験から介護の仕事を始めた人は、「自分の対応が悪かったのかな」「また怒鳴られたらどうしよう」「介護職に向いていないのでは」と不安になりやすいです。

この記事では、認知症の利用者さんに怒鳴られる場面で、介護職が自分を責めすぎず、落ち着いて対応するための考え方と具体的なコツを解説します。

この記事でわかること

・認知症の利用者さんに怒鳴られるとつらい理由
・怒鳴る背景にある不安や混乱の考え方
・怒鳴られたときに介護職がまず意識したい対応
・やってはいけない声かけや関わり方
・一人で抱え込まないための相談・記録のポイント
・今の職場で無理を続けてよいか判断する基準

  1. 認知症の利用者さんに怒鳴られると介護職がつらくなる理由
    1. 怒鳴られることに慣れている介護職ばかりではない
    2. 「仕事だから我慢しなきゃ」と思いすぎると苦しくなる
    3. 怒鳴られる場面は新人ほど強く記憶に残りやすい
    4. 利用者さんの言葉と自分の価値を切り離すことが大切
  2. 認知症の利用者さんが怒鳴る背景にあるもの
    1. 怒鳴る行動の裏には不安や混乱があることが多い
    2. 痛みや体調不良が怒りとして出ることもある
    3. 介助のタイミングや環境が合っていない場合もある
    4. 過去の生活歴や本人のこだわりが関係することもある
  3. 怒鳴られたときに介護職がまず意識したい対応
    1. すぐに言い返さず、まず距離と安全を確保する
    2. 低い声・短い言葉・ゆっくりした動きを意識する
    3. 否定よりも受け止める言葉を先に使う
    4. 介助を続けるか中断するかをその場で判断する
  4. 怒鳴られる場面で避けたい声かけと関わり方
    1. 正論で説得しようとしすぎない
    2. 「さっき言いました」は使い方に注意する
    3. 感情的に返すと関係が悪化しやすい
    4. 「認知症だから仕方ない」で終わらせない
  5. 介護職が自分を守りながら対応するための工夫
    1. 怒鳴られた場面を一人で抱え込まない
    2. 記録に残すことでチーム対応につなげる
    3. 対応を統一すると怒鳴られる回数が減ることもある
    4. 自分の心が限界に近いサインを見逃さない
  6. 怒鳴られる対応に悩む介護職が職場で確認したいこと
    1. 上司や先輩に相談しても改善しない職場は注意が必要
    2. 面接や職場見学で認知症対応の体制を確認する
    3. 怒鳴られることよりも「放置されること」がつらさを大きくする
    4. 今の職場で続けるか迷ったときの判断基準
  7. まとめ:怒鳴られるつらさを一人で抱えず、チームで対応を考えよう

認知症の利用者さんに怒鳴られると介護職がつらくなる理由

怒鳴られることに慣れている介護職ばかりではない

介護職は人と関わる仕事です。

そのため、利用者さんから感謝される場面もあれば、怒られたり、拒否されたり、強い言葉を向けられたりする場面もあります。

しかし、介護職だからといって、怒鳴られることに平気でいられるわけではありません。

大きな声で責められると、誰でも緊張します。胸が苦しくなったり、手が止まったり、次に何を言えばよいかわからなくなったりすることもあります。

特に、真面目な人ほど「自分の対応が悪かったのでは」と考えやすいです。

もちろん、介助の仕方や声かけを振り返ることは大切です。ただし、怒鳴られた原因をすべて介護職一人の責任にする必要はありません。

認知症の症状、体調、環境、過去の生活歴、その日の気分など、さまざまな要素が重なって怒鳴る行動につながることがあります。

「仕事だから我慢しなきゃ」と思いすぎると苦しくなる

介護現場では、利用者さんの立場を考えることが大切です。

認知症によって不安や混乱が強くなり、本人もつらい状態にある場合があります。だからこそ、介護職は利用者さんの言葉をそのまま受け止めすぎず、背景を考えながら関わる必要があります。

ただし、それは「何を言われても我慢しなければいけない」という意味ではありません。

怒鳴られ続ける状況が続くと、介護職側も疲弊します。出勤前に気分が重くなったり、その利用者さんの居室に入るのが怖くなったりすることもあります。

大切な考え方

認知症の利用者さんを責めないことと、介護職が傷つかないように守ることは、どちらも大切です。
どちらか一方だけを我慢する必要はありません。

介護職は感情を持った人間です。

つらいと感じたときに「自分は介護職失格だ」と思う必要はありません。むしろ、つらさに気づけることは、無理をしすぎないために大切なサインです。

怒鳴られる場面は新人ほど強く記憶に残りやすい

新人介護職や経験の浅い人は、怒鳴られた場面を強く覚えてしまいやすいです。

たとえば、食事介助中に「いらないって言ってるだろ」と怒鳴られたり、更衣介助中に「触るな」と強く言われたりすると、その後の介助に不安が残ります。

一度怖い思いをすると、次に同じ場面へ入るときに体が固まることもあります。

これは珍しいことではありません。

経験を積んだ介護職でも、怒鳴られる対応が毎回楽にできるわけではありません。ただ、経験者は「今は不安が強いのかもしれない」「この声かけは合わなかったかもしれない」と、少し距離を取って考えられるようになっていることが多いです。

新人のうちは、怒鳴られた事実だけが大きく見えてしまいます。

そのため、まずは「自分だけがうまくできない」と思わず、先輩や上司と一緒に状況を整理することが大切です。

利用者さんの言葉と自分の価値を切り離すことが大切

怒鳴られると、言葉がそのまま心に刺さることがあります。

「下手くそ」
「帰れ」
「あんたなんか嫌だ」
「触るな」
「何してるんだ」

このような言葉を向けられると、落ち込むのは当然です。

しかし、認知症の利用者さんの言葉は、必ずしもその人の本心や、介護職への正確な評価とは限りません。

不安、痛み、眠気、環境の変化、見当識の混乱などによって、目の前の介護職に強い言葉が向いてしまうことがあります。

もちろん、言われた側が傷つかないわけではありません。ですが、利用者さんの言葉を「自分の人格への評価」として受け取りすぎないことが、自分を守るうえで大切です。

怒鳴られた後は、心の中で次のように切り分けて考えてみましょう。

・今の言葉は症状や不安から出た可能性がある
・自分のすべてが否定されたわけではない
・対応を振り返ることと、自分を責めることは別
・次にどう関わるかは一人で考えなくてよい

この切り分けができると、少しずつ冷静に対応しやすくなります。

認知症の利用者さんが怒鳴る背景にあるもの

怒鳴る行動の裏には不安や混乱があることが多い

認知症の利用者さんが怒鳴るとき、単に「怒りっぽい性格だから」と決めつけるのは危険です。

本人の中では、何かしらの不安や混乱が起きている場合があります。

たとえば、急に知らない人が近づいてきたように感じたり、自分の服を脱がされる理由がわからなかったり、食事をすすめられても状況が理解できなかったりすることがあります。

介護職にとっては日常的な介助でも、利用者さんにとっては「なぜ今これをされるのか」がわからないことがあります。

その結果、防衛反応として怒鳴ることがあります。

怒鳴る場面背景にあるかもしれない気持ち
入浴を促したとき裸になる不安、寒さ、恥ずかしさ
排泄介助のとき失敗を知られたくない、触られたくない
食事介助のとき口に入れられることへの不快感、飲み込みにくさ
更衣介助のとき何をされるかわからない、痛みがある
帰宅願望があるとき家族や家への不安、今いる場所への違和感

このように、怒鳴る行動だけを見ると「困った行動」に見えますが、背景には本人なりの理由があることがあります。

痛みや体調不良が怒りとして出ることもある

認知症の利用者さんは、痛みや体調不良をうまく言葉で伝えられないことがあります。

たとえば、腰が痛い、関節が痛い、便秘で苦しい、眠れていない、空腹や脱水があるなどの状態でも、「痛い」「つらい」とはっきり言えないことがあります。

その代わりに、怒鳴る、拒否する、手を払いのける、不機嫌になるといった行動で表れることがあります。

介助中に急に怒鳴られた場合は、次のような視点で確認することが大切です。

・体に痛みがないか
・無理な姿勢になっていないか
・皮膚トラブルや違和感がないか
・眠気や疲れが強くないか
・便秘や尿意、空腹、脱水の可能性はないか
・薬の影響や体調変化が考えられないか

介護職だけで判断が難しい場合は、必ず看護師や上司に相談しましょう。

確認したい視点

怒鳴る行動が急に増えた場合は、性格や認知症だけで片づけず、体調変化の可能性も考えることが大切です。
医療的な判断が必要な場合は、看護師や専門職に確認しましょう。

介助のタイミングや環境が合っていない場合もある

利用者さんが怒鳴る背景には、介助のタイミングや環境が関係していることもあります。

たとえば、眠い時間に入浴へ誘われたり、周囲が騒がしい場所で食事をすすめられたり、急いで介助されたりすると、不安や不快感が強くなることがあります。

介護現場では時間に追われることも多いです。

朝の更衣、食事、排泄、入浴、記録、ナースコール対応などが重なると、一人ひとりにゆっくり関わるのが難しい場面もあります。

しかし、認知症の利用者さんにとっては、急かされることが混乱につながる場合があります。

「早くしてください」
「立ちますよ」
「こっちに来てください」
「もう時間なので行きます」

このような声かけが、利用者さんによっては責められているように聞こえることもあります。

もちろん、現場の都合もあります。すべてを利用者さんのペースに合わせるのは難しいこともあります。

それでも、怒鳴られる場面が続くときは、時間帯、場所、声の大きさ、周囲の人の数、介助の順番などを見直すと、対応のヒントが見つかることがあります。

過去の生活歴や本人のこだわりが関係することもある

認知症の利用者さんの反応には、過去の生活歴や価値観が影響することがあります。

たとえば、もともと人に世話をされることを嫌がる人、自分で何でもしてきた人、身だしなみへのこだわりが強い人、他人に体を触られることに抵抗がある人などは、介助を受けること自体に強いストレスを感じる場合があります。

介護職から見ると必要な介助でも、本人にとっては「自分の生活に勝手に踏み込まれている」と感じることがあります。

この場合、ただ説得するだけではうまくいかないことがあります。

本人のこだわりを知ることで、声かけや関わり方を変えられる場合があります。

たとえば、

・昔から朝はゆっくり過ごす人だった
・入浴は夕方のほうが落ち着きやすい
・男性職員より女性職員のほうが安心する
・人前で介助されることを強く嫌がる
・「手伝います」より「一緒に確認しましょう」のほうが受け入れやすい

このような情報は、日々の観察や家族からの情報、ケア記録から見えてくることがあります。

怒鳴る行動だけを止めようとするのではなく、その人が何を大切にしているのかを知ることが、対応の土台になります。

怒鳴られたときに介護職がまず意識したい対応

すぐに言い返さず、まず距離と安全を確保する

利用者さんに怒鳴られたとき、最初に大切なのは、正しい説明をすることではありません。

まずは安全を確保することです。

怒鳴っている利用者さんに近づきすぎると、本人の不安がさらに強くなることがあります。介護職側も焦ってしまい、言葉が強くなりやすくなります。

そのため、可能であれば少し距離を取り、声のトーンを落として対応します。

「びっくりさせてしまいましたね」
「少し離れますね」
「ここで待っていますね」
「落ち着いてからで大丈夫です」

このように、まずは場を落ち着かせる声かけを意識します。

最初に意識すること

怒鳴られた直後は、説得よりも安全と安心が優先です。
利用者さんを追い詰めず、介護職自身も近づきすぎないようにしましょう。

ただし、転倒リスクがある場合や、他の利用者さんに危険が及ぶ可能性がある場合は、一人で対応しようとせず、すぐに他職員を呼ぶことが大切です。

低い声・短い言葉・ゆっくりした動きを意識する

怒鳴られている場面では、介護職の声や動きも利用者さんに影響します。

焦って早口になると、利用者さんの混乱が強くなることがあります。説明をたくさん重ねるほど、かえって伝わりにくくなる場合もあります。

認知症の利用者さんに関わるときは、次のような声かけを意識します。

・声のトーンを少し低くする
・一度に長く説明しない
・短い言葉で伝える
・正面から急に近づかない
・手を出す前に一声かける
・急に体に触れない

たとえば、排泄介助で怒鳴られた場合に、

「汚れているので交換しないと皮膚がただれてしまいますし、このままだと感染のリスクもあるので、今からパッドを交換しますね」

と長く説明しても、利用者さんには負担になることがあります。

その場合は、

「気持ち悪くないように整えますね」
「少しだけ確認しますね」
「痛くないようにしますね」

のように、短く安心につながる言葉のほうが伝わりやすいことがあります。

否定よりも受け止める言葉を先に使う

怒鳴られたときに、介護職がすぐに否定してしまうと、利用者さんの怒りが強くなることがあります。

たとえば、

「違います」
「そんなこと言ってません」
「さっきも説明しました」
「怒らないでください」
「わがまま言わないでください」

このような言葉は、介護職に悪気がなくても、利用者さんには否定されたように伝わることがあります。

まずは、本人の感情を受け止める言葉を使うことが大切です。

利用者さんの言葉返し方の例
「触るな!」「嫌でしたね。少し離れますね」
「帰れ!」「今は一人でいたい気持ちなんですね」
「何するんだ!」「驚かせてしまいましたね。説明しますね」
「いらない!」「今はしたくないんですね。少し時間を置きますね」
「あんた嫌い!」「そう感じさせてしまったんですね。無理に進めませんね」

受け止めるとは、すべて言いなりになることではありません。

本人の感情をいったん認めることで、次の関わりにつなげやすくする対応です。

介助を続けるか中断するかをその場で判断する

怒鳴られたときに、介助を続けるべきか、中断すべきか迷うことがあります。

入浴や更衣であれば時間を置ける場合もありますが、排泄介助や転倒リスクがある場面では、すぐに対応が必要なこともあります。

判断に迷ったときは、次の視点で考えます。

状況対応の考え方
怒鳴っているが危険は少ないいったん距離を取り、時間を置く
介助を続けると興奮が強まりそう他職員に交代や同行を依頼する
排泄物や皮膚トラブルのリスクがある無理に一人で進めず、応援を呼ぶ
転倒や事故の危険がある安全確保を優先し、複数人で対応する
暴力につながりそうすぐに離れ、上司へ報告する

「今やらなければ」と思いすぎると、介護職も利用者さんも追い詰められます。

一方で、必要なケアを放置してよいわけでもありません。

だからこそ、一人で判断せず、職場のルールや上司の判断を確認することが大切です。

怒鳴られる場面で避けたい声かけと関わり方

正論で説得しようとしすぎない

認知症の利用者さんに怒鳴られたとき、介護職はつい正しい理由を説明したくなります。

「入浴しないと清潔が保てません」
「薬の時間だから飲まないといけません」
「転ぶと危ないので座ってください」
「もうご飯の時間は終わりました」

これらは介護職としては正しい内容です。

しかし、怒鳴っている利用者さんに正論を重ねると、かえって反発が強くなることがあります。

本人の中では、不安や混乱が先に立っているため、理屈を聞く余裕がない場合があるからです。

避けたい対応

怒鳴っている最中に、長い説明や正論で説得し続けると、利用者さんがさらに追い詰められることがあります。
まずは感情を落ち着ける関わりを優先しましょう。

もちろん、説明が不要という意味ではありません。

落ち着いてから、短く、わかりやすく、安心できる言葉で伝えることが大切です。

「さっき言いました」は使い方に注意する

認知症の利用者さんへの対応で、つい言ってしまいやすい言葉があります。

それが「さっき言いましたよ」です。

介護職側からすると、何度も同じ説明をしているため、疲れてしまうことがあります。忙しい現場では、同じ質問や同じ怒りに何度も対応するのが大変に感じることもあります。

しかし、認知症の利用者さんは、説明されたこと自体を覚えていない場合があります。

そのため、「さっき言いましたよ」と言われても、本人にとっては責められているように感じることがあります。

代わりに、次のような言い方に変えてみましょう。

・「もう一度お伝えしますね」
・「今から一緒に確認しましょう」
・「こちらに書いてありますね」
・「不安になりますよね」
・「ゆっくりで大丈夫です」

言い方を変えるだけで、利用者さんの受け止め方が変わることがあります。

感情的に返すと関係が悪化しやすい

怒鳴られると、介護職も人間なので腹が立つことがあります。

「なんでそんな言い方をされないといけないの」
「こっちは一生懸命やっているのに」
「毎回怒鳴られてつらい」

このような気持ちになるのは自然です。

ただし、その場で感情的に返してしまうと、利用者さんの興奮が強くなり、事故やトラブルにつながることがあります。

特に、次のような対応は避けたいところです。

・大きな声で言い返す
・ため息をつく
・表情に怒りを出す
・無理やり介助を続ける
・他の利用者さんの前で注意する
・「困ります」「迷惑です」と強く責める

怒りを感じたときは、いったん距離を取ることも必要です。

自分の感情が強くなっていると感じたら、可能であれば他の職員に交代を依頼しましょう。

交代することは逃げではありません。利用者さんと介護職の双方を守るための対応です。

「認知症だから仕方ない」で終わらせない

認知症の利用者さんに怒鳴られると、周囲から「認知症だから仕方ないよ」と言われることがあります。

たしかに、症状として怒鳴る行動が出る場合はあります。

しかし、「仕方ない」で終わってしまうと、介護職のつらさが置き去りになります。また、原因を探る機会も失われます。

大切なのは、次のように考えることです。

・認知症の症状として起こる可能性がある
・でも、怒鳴られる介護職の負担も軽く見ない
・原因やきっかけを記録して共有する
・対応方法をチームで統一する
・必要に応じて専門職に相談する

認知症だからすべて我慢するのではなく、認知症だからこそ、チームで関わり方を考える必要があります。

介護職が自分を守りながら対応するための工夫

怒鳴られた場面を一人で抱え込まない

怒鳴られたあとに一番避けたいのは、一人で抱え込むことです。

「こんなことで相談していいのかな」
「先輩は普通に対応しているから、自分が弱いだけかも」
「忙しそうだから言いづらい」

このように思ってしまう人もいます。

しかし、怒鳴られる場面は、介護職個人だけで解決する問題ではありません。

利用者さんの状態、ケア方法、声かけ、職員配置、時間帯、環境などが関係している可能性があります。

そのため、相談するときは感情だけでなく、具体的な状況を伝えると共有しやすくなります。

相談するときに伝えたいこと

□ いつ怒鳴られたか
□ どの介助中だったか
□ どんな声かけをしたか
□ 利用者さんは何と言ったか
□ その前後に体調変化はあったか
□ 自分一人で対応してよい状況だったか
□ 次回は誰に同行してもらうべきか

「怒鳴られてつらかったです」だけでも相談してよいですが、状況を整理すると、上司や先輩も具体的な助言をしやすくなります。

記録に残すことでチーム対応につなげる

認知症の利用者さんに怒鳴られる場面が何度もある場合は、記録が大切です。

記録は、誰かを責めるためのものではありません。利用者さんの状態をチームで共有し、より安全なケアにつなげるためのものです。

たとえば、次のように記録します。

・何時ごろに起きたか
・どの場面で怒鳴ったか
・どのような言葉があったか
・介助を続けたか、中断したか
・どの声かけで落ち着いたか
・体調や表情に変化があったか
・他職員への申し送りが必要か

記録するときは、感情的な表現ではなく、事実を中心に書くことが大切です。

たとえば、

「機嫌が悪く怒鳴った」

だけではなく、

「更衣介助のため上衣に触れた際、『触るな』と大きな声あり。いったん距離を取り、5分後に別職員と再度声かけ。本人より『寒い』との発言あり」

のように書くと、次の対応につながりやすくなります。

記録のポイント

「困った利用者さん」と書くのではなく、何が起きたかを具体的に残すことが大切です。
事実を共有することで、介護職個人の負担をチームの課題に変えやすくなります。

対応を統一すると怒鳴られる回数が減ることもある

同じ利用者さんでも、職員によって怒鳴られる回数が違うことがあります。

これは、職員の能力差だけではありません。声かけの言葉、近づき方、介助の順番、本人との相性などが影響している場合があります。

もし、ある職員では落ち着いているのに、自分のときだけ怒鳴られるように感じる場合は、落ち込む前に観察してみましょう。

・その職員は最初に何と言っているか
・どの距離から声をかけているか
・介助を始めるまでにどれくらい待っているか
・本人が嫌がる言葉を避けているか
・どのタイミングなら受け入れやすいか

先輩の対応をまねることは、未経験者や新人にとって大切な学びです。

ただし、相性もあるため、すべて自分の努力不足と考える必要はありません。

チームで「この利用者さんにはこの声かけが合いやすい」「この時間帯は避けたほうがよい」などを共有できると、介護職全体の負担が減りやすくなります。

自分の心が限界に近いサインを見逃さない

怒鳴られる場面が続くと、心身に負担がたまります。

次のような状態がある場合は、無理を続けすぎているサインかもしれません。

・出勤前に強い不安がある
・特定の利用者さんの対応を考えるだけでつらい
・家に帰っても怒鳴られた言葉を思い出す
・眠れない、食欲が落ちる
・介助に入るのが怖くて動けない
・涙が出る、気持ちが沈む
・「自分が悪い」と何度も考えてしまう

このような状態が続く場合は、早めに上司へ相談しましょう。

必要に応じて、対応の担当を一時的に外してもらう、二人体制にしてもらう、声かけ方法を見直すなどの調整が必要です。

介護職が限界の状態で無理に対応し続けると、利用者さんにも良いケアができなくなります。

自分を守ることは、利用者さんの安全を守ることにもつながります。

怒鳴られる対応に悩む介護職が職場で確認したいこと

上司や先輩に相談しても改善しない職場は注意が必要

認知症の利用者さんに怒鳴られる場面があること自体は、介護現場では珍しくありません。

しかし、その対応を介護職個人に丸投げする職場は注意が必要です。

たとえば、

・相談しても「我慢して」と言われるだけ
・危険な場面でも一人で対応させられる
・記録しても共有されない
・怒鳴られる職員だけが責められる
・ケア方法の見直しがない
・人員不足で常に急かされる

このような職場では、介護職の負担が大きくなりやすいです。

認知症ケアは、個人の根性だけで乗り切るものではありません。

もちろん、介護職自身が声かけや対応を学ぶことは大切です。ですが、職場として相談できる体制や情報共有がなければ、同じつらさを繰り返してしまいます。

面接や職場見学で認知症対応の体制を確認する

これから介護職へ転職する人や、今の職場から別の職場を考えている人は、認知症対応の体制を確認しておくと安心です。

求人票には「未経験歓迎」「研修あり」と書かれていても、実際の現場でどこまでサポートがあるかは職場によって違います。

面接や見学では、次のような質問をしてみましょう。

面接で聞きたい質問

「認知症の利用者さんへの対応は、未経験者にも教えてもらえますか?」
「介助拒否や怒鳴る場面があったときは、どのように共有していますか?」
「新人が一人で対応に入るまでに、同行期間はありますか?」
「困った場面があったとき、相談しやすい体制はありますか?」
「利用者さんごとの対応方法は記録や申し送りで確認できますか?」

質問したときに、具体的な説明がある職場は安心材料になります。

反対に、「慣れれば大丈夫」「みんなやっているから」といった説明だけで、具体的なサポートが見えない場合は慎重に考えたほうがよいでしょう。

怒鳴られることよりも「放置されること」がつらさを大きくする

認知症の利用者さんに怒鳴られること自体もつらいですが、それ以上につらいのは、職場で放置されることです。

怒鳴られたあとに誰も声をかけてくれない、相談しても対応が変わらない、自分だけが悪いように言われる。

このような環境では、介護職の心がすり減ってしまいます。

働きやすい職場では、怒鳴られる場面があっても、次のような対応があります。

・先輩が声をかけてくれる
・原因や対応を一緒に考えてくれる
・必要に応じて二人体制にする
・記録や申し送りで共有する
・看護師や相談員とも連携する
・新人だけに難しい対応を任せない

介護職が続けやすいかどうかは、利用者さんの状態だけでなく、職場の支援体制にも大きく左右されます。

今の職場で続けるか迷ったときの判断基準

怒鳴られる対応がつらくて、今の職場を続けるか迷うこともあると思います。

そのときは、「自分が弱いから辞めたいのか」と考える前に、職場環境を整理してみましょう。

続けるか考えるためのチェックリスト

□ 怒鳴られた場面を上司に相談できる
□ 対応方法をチームで共有している
□ 危険な場面では一人対応にならない
□ 新人や経験の浅い職員へのフォローがある
□ 記録や申し送りが機能している
□ 体調変化があれば看護師へ相談できる
□ 自分だけが責められる雰囲気ではない
□ 出勤できないほど心身に負担が出ていない

チェックがほとんど入らない場合は、あなたの努力だけで改善するのは難しいかもしれません。

介護職自体が合わないのではなく、今の職場の体制が合っていない可能性もあります。

無理を続けて心身を壊す前に、上司への相談、異動の希望、働き方の見直し、転職も含めて考えてよいでしょう。

まとめ:怒鳴られるつらさを一人で抱えず、チームで対応を考えよう

認知症の利用者さんに怒鳴られると、介護職は大きなストレスを感じます。

「認知症だから仕方ない」と頭ではわかっていても、強い言葉を受ければ傷つきます。怖くなったり、落ち込んだり、自信をなくしたりするのは自然なことです。

大切なのは、怒鳴られた事実だけで自分を責めないことです。

認知症の利用者さんが怒鳴る背景には、不安、混乱、痛み、環境への違和感、介助への抵抗など、さまざまな理由が隠れていることがあります。

そのため、介護職は一人で抱え込まず、記録や申し送りを通してチームで対応を考えることが大切です。

この記事のまとめ

・認知症の利用者さんに怒鳴られてつらいと感じるのは自然なこと
・怒鳴る背景には不安、混乱、痛み、環境の影響がある場合がある
・怒鳴られた直後は説得よりも安全確保と安心できる声かけを優先する
・「さっき言いました」「怒らないでください」などの否定的な言葉は注意が必要
・記録と相談を通して、個人対応ではなくチーム対応につなげる
・相談しても放置される職場では、働き方や職場変更を考えてもよい

介護職は、利用者さんの気持ちに寄り添う仕事です。

しかし、介護職自身の心を守ることも同じくらい大切です。

怒鳴られる場面が続くときは、「自分が我慢すればいい」と抱え込まず、上司や先輩、看護師、相談員などに共有しましょう。

対応を見直すことで、利用者さんが落ち着きやすくなる場合もあります。介護職自身の負担が軽くなることもあります。

それでも改善せず、心身に強い負担が出ている場合は、今の職場だけにこだわる必要はありません。

認知症ケアは簡単ではありませんが、学びながら少しずつ対応できるようになるものです。

一人で全部を背負わず、確認しながら関わっていくことが、介護職として無理なく働き続けるための大切な考え方です。

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