介護現場で働き始めると、「ヒヤリハットを書いておいて」と言われる場面があります。
しかし新人のうちは、「何を書けばいいのかわからない」「事故ではないのに書く必要があるの?」「自分のミスだと思われそうで怖い」と感じることも多いです。
ヒヤリハットは、誰かを責めるための記録ではありません。利用者さんの安全を守り、同じような危険を繰り返さないために、現場でとても大切な情報共有です。
この記事では、介護のヒヤリハットの書き方について、新人でも迷いにくいように、基本の考え方・記録例・注意点をわかりやすく解説します。
この記事でわかること
・介護現場でヒヤリハットを書く意味
・ヒヤリハットと事故報告書の違い
・新人が迷いやすいヒヤリハットの書き方
・場面別のヒヤリハット記録例
・書いてはいけない表現と注意点
・ヒヤリハットを書くときに確認すべきこと
介護のヒヤリハットは「事故になる前の気づき」を残す記録
ヒヤリハットは小さな危険を共有するためのもの
介護現場でいうヒヤリハットとは、事故にはならなかったものの、一歩間違えば転倒・誤薬・誤嚥・けがなどにつながる可能性があった出来事を指します。
たとえば、利用者さんが立ち上がろうとしてふらついたけれど職員が支えて転倒しなかった場合や、薬を渡す前に別の利用者さんの薬だと気づいた場合などです。
結果として事故になっていなくても、「危なかった」「次は起こるかもしれない」と感じた出来事は、ヒヤリハットとして記録する意味があります。
介護の仕事では、同じ利用者さんを複数の職員で支えます。そのため、一人の職員が気づいた小さな危険を共有できないと、別の時間帯や別の職員のときに事故につながることがあります。
ヒヤリハットを書く目的は、失敗を探すことではなく、次の事故を防ぐために現場全体で情報を共有することです。
事故報告書との違いを知っておく
新人が迷いやすいのが、「これはヒヤリハットなのか、事故報告なのか」という点です。
施設によって判断基準や書式は異なりますが、一般的には、実際に利用者さんにけがや不利益が生じた場合は事故報告書、事故には至らなかったが危険があった場合はヒヤリハットとして扱われることが多いです。
ただし、転倒して外傷がない場合、薬の飲み間違いが起こりそうになった場合、食事中にむせ込みがあった場合など、判断に迷うケースもあります。
| 記録の種類 | 主な内容 | 例 |
|---|---|---|
| ヒヤリハット | 事故にはならなかったが危険があった出来事 | 転倒しかけたが支えた、薬を渡す前に違いに気づいた |
| 事故報告書 | 実際に事故やけが、不利益が起きた出来事 | 転倒した、誤薬が発生した、皮膚剥離が起きた |
| 介護記録 | 日々の様子やケア内容の記録 | 食事量、排泄状況、入浴時の様子、体調変化 |
判断に迷ったとき
「ヒヤリハットでよいのか」「事故報告になるのか」は、自己判断で決め込まないことが大切です。
迷った場合は、リーダー、上司、看護師などに確認しましょう。
特に医療的な判断が関わる内容や、利用者さんの体調変化がある場合は、介護職だけで判断せず、看護師や責任者に報告する必要があります。
書くこと自体を怖がりすぎなくてよい
ヒヤリハットを書くと、「自分がミスをしたと責められるのではないか」と不安になる人もいます。
特に新人の場合、「こんなことを書いたら仕事ができないと思われるかも」「先輩に怒られるかも」と感じることがあるかもしれません。
しかし本来、ヒヤリハットは個人を責めるためのものではありません。むしろ、危険に気づいて記録できることは、利用者さんの安全を考えている証拠でもあります。
もちろん、同じミスを何度も繰り返している場合や、報告を怠った場合は指導が入ることもあります。ただ、それは責めるためではなく、再発を防ぐためです。
**ヒヤリハットは「怒られるための書類」ではなく、「事故を防ぐための材料」**と考えると、少し書きやすくなります。
新人がヒヤリハットの書き方で迷いやすいポイント
どこまで詳しく書けばいいかわからない
ヒヤリハットを書くとき、新人が最初に悩みやすいのが「どこまで詳しく書くか」です。
短すぎると状況が伝わりませんが、長く書きすぎると要点がぼやけてしまいます。
たとえば、「転びそうになった」だけでは、どこで、いつ、何をしているときに、どのように危なかったのかがわかりません。
一方で、関係のない会話や感情まで長く書いてしまうと、読み手が必要な情報を探しにくくなります。
ヒヤリハットでは、次の5つを意識すると書きやすくなります。
・いつ起きたか
・どこで起きたか
・誰に関する出来事か
・何が起きそうになったか
・その後どう対応したか
この5つが入っていると、後から読んだ職員も状況を理解しやすくなります。
「自分の感想」と「事実」が混ざりやすい
ヒヤリハットで大切なのは、できるだけ事実を中心に書くことです。
新人のうちは、「危ないと思った」「焦った」「いつもより落ち着きがなかった気がする」など、自分の感想が先に出てしまうことがあります。
もちろん、職員が感じた違和感が大切な場合もあります。ただし記録として残すときは、見たこと・聞いたこと・行った対応を具体的に書くことが基本です。
たとえば、次のような違いがあります。
| 書き方 | 内容 |
|---|---|
| 感想が中心 | 利用者さんが危なそうだった |
| 事実が中心 | 居室入口で立ち上がり、右側へふらついたため職員が支えた |
「危なそうだった」だけでは、何が危なかったのかが伝わりにくいです。
一方で、「右側へふらついた」「手すりを持たずに立ち上がった」「車椅子のブレーキがかかっていなかった」など、具体的な事実があると、再発防止策を考えやすくなります。
原因を決めつけて書いてしまう
ヒヤリハットでは、「なぜ起きたのか」を考えることも大切です。
ただし、新人が注意したいのは、原因を決めつけて書かないことです。
たとえば、「利用者さんが勝手に立ち上がったため」「認知症だから理解できなかったため」「職員が見ていなかったため」と書くと、利用者さんや職員を責めるような印象になりやすいです。
実際には、立ち上がった理由にはさまざまな可能性があります。
・トイレに行きたかった
・痛みや不快感があった
・声かけが十分に伝わっていなかった
・ナースコールが手元になかった
・車椅子やベッド周辺の環境が合っていなかった
・職員配置や見守りのタイミングに課題があった
原因は一つとは限りません。そのため、記録には決めつけではなく、状況として確認できたことを書くようにしましょう。
書き方のポイント
「〇〇のせいで起きた」と書くよりも、
「〇〇の状況で、△△が起こりそうになった」と書く方が、冷静で伝わりやすい記録になります。
介護のヒヤリハットを書くときの基本の型
まずは「日時・場所・場面」を整理する
ヒヤリハットを書くときは、いきなり文章にしようとすると迷いやすくなります。
まずは、出来事を頭の中で整理しましょう。
基本は、次の順番で考えると書きやすいです。
| 項目 | 書く内容の例 |
|---|---|
| 日時 | 〇月〇日、〇時〇分頃 |
| 場所 | 居室、食堂、トイレ、浴室、廊下など |
| 場面 | 移乗時、食事中、排泄介助後、服薬前など |
| 状況 | 何が起こりそうになったか |
| 対応 | 職員が何をしたか |
| 結果 | 事故に至らなかったか、体調変化はなかったか |
| 今後の対策 | 見守り、声かけ、環境調整、情報共有など |
たとえば、転倒しかけた場面であれば、「どこで立ち上がったのか」「何をしようとしていたのか」「職員はどう対応したのか」を整理します。
書式が決まっている施設では、その項目に沿って記入します。書式がない場合でも、この順番で整理すると、読みやすいヒヤリハットになりやすいです。
文章は「事実→対応→今後」の流れにする
介護のヒヤリハットの書き方で迷ったときは、次の流れを意識するとまとまりやすくなります。
基本の流れ
- いつ・どこで・どんな場面だったか
- 何が起こりそうになったか
- その場でどう対応したか
- 利用者さんの状態はどうだったか
- 今後どう防ぐか
たとえば、次のような形です。
「〇時〇分頃、食堂にて昼食後、A様が椅子から立ち上がろうとされた。椅子を後方へ引いた際にバランスを崩しかけたため、近くにいた職員が右側から支えた。転倒はなく、痛みの訴えや外傷は見られなかった。今後は食後の立ち上がり時に声かけを行い、必要時は近くで見守る。」
このように書くと、出来事の流れがわかりやすくなります。
大切なのは、反省文のように書くことではありません。ヒヤリハットは、現場で再発を防ぐための記録です。誰が悪かったかよりも、何が起きて、次にどう防ぐかを中心に書きましょう。
再発防止策は現実的に書く
ヒヤリハットには、今後の対策を書く欄があることが多いです。
ここでよくあるのが、「注意する」「気をつける」「見守りを強化する」とだけ書いてしまうことです。
もちろん気をつける意識は大切ですが、それだけでは具体的な対策になりにくいです。
たとえば、次のように少し具体化すると、現場で共有しやすくなります。
| 抽象的な対策 | 具体的な対策 |
|---|---|
| 注意する | 食後の立ち上がり時は職員が声かけしてから移動する |
| 見守りを強化する | トイレ誘導後はズボンを整えるまで近くで見守る |
| 確認する | 服薬前に氏名・日付・薬袋を指差し確認する |
| 声かけする | 移乗前に「ブレーキをかけますね」と声をかけて確認する |
再発防止策は、理想だけでなく、実際の人員や業務の流れの中で実行できる内容にすることが大切です。
現場の状況によっては、新人一人で対策を決めるのが難しい場合もあります。そのときは、リーダーや先輩に相談しながら記入しましょう。
場面別に見るヒヤリハットの記録例
転倒・転落につながりそうだった場合
介護現場で多いヒヤリハットの一つが、転倒や転落につながりそうな場面です。
特に、ベッドからの立ち上がり、車椅子から椅子への移乗、トイレ後の動作、食堂での立ち上がりなどは注意が必要です。
転倒に関するヒヤリハットを書くときは、次の点を入れると伝わりやすくなります。
・どの姿勢から動こうとしたか
・手すりや歩行器を使っていたか
・ふらつきの方向や様子
・職員がどのように支えたか
・外傷や痛みの有無
・今後の見守りや声かけの方法
記録例:転倒しかけた場合
10時20分頃、居室にてB様がベッド端座位から立ち上がろうとされた。ベッド柵を持たずに立ち上がり、前方へふらついたため、訪室した職員が左側から支えた。転倒はなく、痛みの訴えや外傷は確認されなかった。本人より「トイレに行こうと思った」と発言あり。今後はナースコールを手元に設置し、トイレ希望時は職員を呼ぶよう声かけを行う。職員間で情報共有する。
この記録では、「勝手に立った」とは書いていません。
利用者さんがなぜ立ち上がろうとしたのか、どのような状況だったのかを整理して書いています。
転倒リスクのある利用者さんの場合、動作そのものを止めるだけではなく、トイレのタイミング、環境、声かけ、見守り方法を考えることが大切です。
服薬ミスにつながりそうだった場合
服薬に関するヒヤリハットも、介護現場では特に注意が必要です。
薬は利用者さんの健康に関わるため、介護職だけで判断せず、施設のルールや看護師の指示に従うことが基本です。
服薬前に違いに気づいた場合でも、ヒヤリハットとして記録することで、確認方法の見直しにつながります。
記録例:薬を渡す前に気づいた場合
18時00分頃、夕食後の服薬準備時、C様の薬袋を確認したところ、配薬トレー内に別利用者D様の薬袋が入っていることに気づいた。服薬前であり、C様への内服は行っていない。直ちに看護師へ報告し、薬袋と配薬トレーを確認してもらった。今後は服薬前に氏名、日付、食前・食後の表示を声出し確認し、配薬時は職員間で確認手順を統一する。
この場合、実際に誤薬が起きていなくても、薬を渡す直前まで進んでいたなら大切なヒヤリハットです。
服薬に関しては、施設ごとに手順が決まっていることが多いため、必ずマニュアルや看護師の指示を確認しましょう。
「たぶん大丈夫」と自己判断するのは避ける必要があります。
食事介助中にむせ込みや誤嚥の危険があった場合
食事介助では、むせ込み、飲み込みにくさ、姿勢の崩れ、食事形態の違いなどがヒヤリハットにつながります。
特に新人は、食事介助中にどの程度のむせ込みを報告すべきか迷うことがあります。
少しむせただけに見えても、普段と違う様子があれば記録や報告が必要な場合があります。判断に迷ったら、看護師や上司に相談しましょう。
記録例:食事中にむせ込みがあった場合
12時15分頃、食堂にてE様の昼食介助中、お茶を一口摂取された後に咳込みが見られた。食事を一時中止し、姿勢を整えて様子を確認した。顔色不良はなく、しばらくして咳込みは落ち着いた。看護師へ報告し、以降は少量ずつ提供するよう指示を受けた。今後は食事前に座位姿勢を確認し、水分提供時は一口量に注意する。
食事に関する記録では、「むせた」だけで終わらせず、どの食品や水分で起きたのか、どのように対応したのかを書くと役立ちます。
食事形態やとろみの調整は、介護職だけで判断するものではありません。必要に応じて、看護師、管理栄養士、言語聴覚士など専門職の確認が必要です。
排泄介助や入浴介助で起こりやすいヒヤリハット
排泄介助や入浴介助は、転倒、皮膚トラブル、羞恥心への配慮、体調変化など、注意することが多い場面です。
新人のうちは、介助手順に集中するあまり、利用者さんの表情や足元、手すりの位置、衣類の引っかかりなどを見落としやすいことがあります。
たとえば、次のような出来事はヒヤリハットとして共有する意味があります。
・トイレで立ち上がった際にふらついた
・ズボンを上げる途中でバランスを崩しかけた
・浴室の床で足が滑りそうになった
・シャワーチェアのブレーキや位置が不十分だった
・衣類やリハビリパンツが足に引っかかった
・入浴中に顔色の変化や疲労感が見られた
記録例:トイレ介助中の場合
15時30分頃、トイレにてF様の排泄介助後、立位保持中にズボンを上げようとした際、右膝が折れそうになる様子があった。職員が腰部を支え、便座に再度座っていただいた。転倒はなく、痛みの訴えなし。以後、立位での更衣介助時は手すり把持を確認し、必要時は二人介助を検討する。リーダーへ報告済み。
排泄や入浴の場面では、利用者さんの尊厳に関わる内容も含まれます。記録では、必要な事実を残しつつ、利用者さんを傷つけるような表現は避けましょう。
ヒヤリハットで書いてはいけない表現と注意点
利用者さんを責める書き方は避ける
ヒヤリハットを書くときに避けたいのが、利用者さんを責めるような表現です。
たとえば、次のような書き方は注意が必要です。
・勝手に立った
・言うことを聞かなかった
・何度言っても理解しない
・わがままを言った
・危ない行動をした
現場では忙しい中で対応しているため、ついそのように感じてしまうこともあるかもしれません。
しかし記録として残す場合は、感情的な言葉ではなく、具体的な行動として書くことが大切です。
| 避けたい表現 | 言い換え例 |
|---|---|
| 勝手に立ち上がった | 職員の声かけ前に立ち上がられた |
| 言うことを聞かなかった | 声かけに対して返答なく動作を継続された |
| 落ち着きがなかった | 立ち上がり動作が数回見られた |
| 危ない行動をした | 手すりを持たずに歩き出そうとされた |
| わがままを言った | 「帰りたい」との訴えが繰り返し聞かれた |
介護記録やヒヤリハットは、後から職員だけでなく、場合によっては家族や関係機関が確認する可能性もあります。
利用者さんの尊厳を守る意味でも、冷静で客観的な表現を心がけましょう。
職員個人を責める文章にしない
ヒヤリハットでは、職員側の対応に課題がある場合もあります。
ただし、「〇〇職員が見ていなかったから」「新人が確認しなかったため」など、個人を責める書き方は避けた方がよいです。
もちろん、事実として誰が対応していたかを施設内で確認する必要がある場合もあります。しかし記録の目的は、個人攻撃ではなく再発防止です。
たとえば、次のように書くと冷静です。
・服薬前の氏名確認が不十分だった
・移乗前のブレーキ確認ができていなかった
・トイレ誘導後の見守り位置が離れていた
・情報共有が十分でなかった
・声かけのタイミングが遅れた
このように書くと、個人ではなく業務手順や環境の改善につなげやすくなります。
注意したい考え方
ヒヤリハットは「誰が悪いか」を決めるためではなく、
「どうすれば次に防げるか」を考えるための記録です。
新人の場合、自分の関わったヒヤリハットを書くのは勇気がいるかもしれません。
しかし、報告しないままにしてしまう方が、あとから大きな事故につながる可能性があります。気づいた時点で、早めに相談・報告することが大切です。
曖昧すぎる言葉だけで終わらせない
ヒヤリハットでは、曖昧な言葉だけで書くと、状況が伝わりにくくなります。
たとえば、次のような表現です。
・少し危なかった
・いつもと違った
・ふらつきあり
・様子がおかしかった
・気をつける
これらの言葉が絶対に使えないわけではありません。ただ、それだけでは読み手が具体的な状況を想像しにくくなります。
「ふらつきあり」と書くなら、どの場面で、どの方向に、どの程度ふらついたのかを書いた方が伝わります。
「いつもと違った」と感じたなら、何が違ったのかを具体的に書きます。
たとえば、次のような書き方です。
・立ち上がり時に右側へ身体が傾いた
・歩行器を持たずに廊下へ出ようとされた
・昼食時、普段より咀嚼に時間がかかっていた
・声かけに対する返答が少なく、目を閉じる様子が多かった
ただし、体調変化や医療的な判断が必要な場合は、介護職だけで判断しないことが重要です。
気になる様子があれば、記録だけでなく、看護師や上司へ報告しましょう。
ヒヤリハットを現場で活かすための確認ポイント
書いた後に共有されなければ意味が薄くなる
ヒヤリハットは、書いて終わりではありません。
記録した内容が職員間で共有され、次のケアに活かされてこそ意味があります。
たとえば、夜勤帯で転倒しかけた利用者さんの情報が日勤者に伝わっていなければ、同じ場面でまた危険が起こる可能性があります。
ヒヤリハットを書いたら、施設のルールに従って、申し送り、記録システム、リーダーへの報告などを行いましょう。
特に次のような内容は、早めの共有が必要です。
・転倒や転落につながりそうだった
・服薬ミスにつながりそうだった
・食事中にむせ込みや飲み込みにくさがあった
・排泄や入浴時にふらつきがあった
・利用者さんの行動パターンに変化があった
・環境面に危険があった
共有するときのポイント
「記録に書いたから大丈夫」と考えず、必要な内容は口頭でも伝えましょう。
特にすぐ対応が必要な内容は、記録より先に報告することが大切です。
記録と報告はセットで考えると、ヒヤリハットが現場で活かされやすくなります。
新人は「小さいことでも相談」でよい
新人のうちは、「こんなことまでヒヤリハットにしていいのかな」と迷うことがあります。
たしかに、すべてを記録すればよいというわけではありません。施設によって、ヒヤリハットとして扱う範囲には違いがあります。
ただし、新人のうちは自分だけで判断しすぎない方が安心です。
特に、次のような場合は、まず先輩やリーダーに相談しましょう。
新人が相談した方がよい場面
□ 利用者さんが転びそうになった
□ 薬、食事、水分に関する危険があった
□ 介助中に痛みや違和感の訴えがあった
□ 皮膚の赤み、傷、内出血などに気づいた
□ いつもと違う様子があった
□ 報告すべきか迷った
□ 自分の対応に不安が残っている
「これくらいなら大丈夫」と思っても、経験のある職員から見ると注意が必要なケースもあります。
逆に、相談してみた結果、「今回は記録ではなく申し送りでよい」と判断されることもあります。
どちらにしても、相談することで学びになります。新人のうちは、迷ったら確認する姿勢を大切にしましょう。
ヒヤリハットは職場の安全文化にも関わる
ヒヤリハットを書きやすい職場と、書きにくい職場があります。
書きやすい職場では、「よく気づいてくれた」「次からこうしよう」と前向きに共有されることが多いです。
一方で、書くたびに強く責められたり、個人攻撃のように扱われたりする職場では、職員が報告をためらいやすくなります。
報告しにくい雰囲気があると、小さな危険が見逃され、結果として大きな事故につながることもあります。
ヒヤリハットは、職員一人だけの問題ではなく、職場全体の安全への向き合い方にも関わります。
もし今の職場で、ヒヤリハットを書くたびに必要以上に責められる、相談しても聞いてもらえない、報告しづらい雰囲気が強いと感じる場合は、一人で抱え込まないことが大切です。
信頼できる先輩、リーダー、上司に相談し、それでも改善が難しい場合は、働き方や職場環境を見直すことも選択肢になります。
新人でも書きやすいヒヤリハット作成の実践手順
書く前にメモで出来事を整理する
ヒヤリハットをいきなりきれいな文章にしようとすると、手が止まりやすくなります。
まずは、メモのように出来事を分けて整理してみましょう。
メモで整理する項目
・いつ起きたか
・どこで起きたか
・誰に関することか
・どんな場面だったか
・何が危なかったか
・その場で何をしたか
・利用者さんの状態はどうだったか
・誰に報告したか
・次からどうするか
たとえば、「トイレでふらついた」という出来事なら、次のように整理します。
・15時頃
・トイレ内
・排泄後の立ち上がり
・ズボンを上げる途中で右膝が折れそうになった
・職員が支えて便座に座ってもらった
・転倒なし、痛みの訴えなし
・リーダーに報告
・次回から立位時は手すり把持を確認し、必要時二人介助を相談
このようにメモを作ってから文章にすると、抜け漏れが減ります。
文章力に自信がなくても、情報が整理されていれば、ヒヤリハットとして伝わりやすくなります。
例文をそのまま覚えるより「型」を覚える
新人がヒヤリハットの書き方を覚えるとき、例文を見るのは役に立ちます。
ただし、例文を丸暗記するよりも、型を覚えた方が応用しやすいです。
おすすめの型は、次の形です。
ヒヤリハットの書き方の型
〇時〇分頃、〇〇にて、〇〇中に、〇〇が起こりそうになった。
職員が〇〇し、事故には至らなかった。
利用者さんの状態は〇〇であった。
〇〇へ報告し、今後は〇〇する。
この型に当てはめると、さまざまな場面で書きやすくなります。
たとえば、移乗介助の場合です。
記録例:移乗時
9時40分頃、居室にて車椅子からベッドへの移乗介助中、車椅子のブレーキが片側のみ解除されていることに気づいた。移乗前であり、利用者様の転倒はなかった。ブレーキを再度確認し、移乗を実施した。今後は移乗前に左右のブレーキ、フットレスト、足底位置を確認してから介助を行う。
次に、環境面のヒヤリハットです。
記録例:環境面
16時10分頃、廊下にて、床に水滴が落ちているのを確認した。近くを歩行器使用のG様が通行予定であり、転倒の危険があったため、すぐに拭き取りを行った。転倒等はなし。今後は清掃後や配茶後に床面を確認し、濡れがあれば速やかに対応する。
ヒヤリハットは、利用者さんの行動だけでなく、環境や職員の手順に関する内容でも書くことがあります。
「事故が起きていないから書かなくてよい」と考えず、危険を防いだ出来事も共有する意識が大切です。
提出前に確認したいチェックリスト
ヒヤリハットを書いた後は、提出前に内容を見直しましょう。
特に新人のうちは、次のチェックリストを使うと確認しやすいです。
ヒヤリハット提出前チェック
□ 日時、場所、場面が書かれている
□ 何が起こりそうになったかが具体的に書かれている
□ 利用者さんを責める表現になっていない
□ 職員個人を責める文章になっていない
□ 実際に行った対応が書かれている
□ 利用者さんの状態確認について書かれている
□ 必要な報告先が書かれている
□ 再発防止策が具体的になっている
□ 医療的判断を自己判断で書いていない
□ 施設の書式やルールに沿っている
ヒヤリハットは、完璧な文章を書くことが目的ではありません。
大切なのは、現場の人が読んだときに、何が起きたのか、次に何を気をつけるのかがわかることです。
不安がある場合は、提出前に先輩へ「この書き方で伝わりますか」と確認してもよいでしょう。
最初から一人で完璧に書けなくても問題ありません。何度か書くうちに、必要な情報の整理の仕方が少しずつ身についていきます。
まとめ:介護のヒヤリハットは責める記録ではなく安全を守る記録
介護のヒヤリハットの書き方で大切なのは、難しい言葉を使うことではありません。
「いつ、どこで、何が起こりそうになり、どう対応し、次にどう防ぐか」を、事実に沿ってわかりやすく書くことです。
新人のうちは、ヒヤリハットを書くことに抵抗を感じるかもしれません。
しかし、小さな危険に気づいて記録できることは、利用者さんの安全を守るうえで大切な力です。
事故にならなかった出来事でも、共有することで次の事故を防げる可能性があります。
この記事のまとめ
・ヒヤリハットは事故になる前の危険を共有する記録
・介護現場では転倒、服薬、食事、排泄、入浴などで起こりやすい
・書き方は「事実、対応、状態、再発防止策」を意識するとよい
・利用者さんや職員を責める表現は避ける
・判断に迷う場合は自己判断せず上司や看護師に確認する
・新人は小さな違和感でも相談しながら覚えていけばよい
ヒヤリハットは、書いた人を責めるためのものではなく、現場全体で安全な介護を続けるためのものです。
最初は迷って当然です。
「これで合っているかな」と不安なときは、一人で抱え込まず、先輩や上司に確認しながら書いていきましょう。


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