介護現場で転倒、誤薬、皮膚剥離、誤嚥の疑いなどが起きたとき、介護職の中には「怒られるのが怖い」「自分のせいにされたらどうしよう」「大ごとにしたくない」と感じてしまう人もいます。
特に新人や経験の浅い介護職ほど、介護事故を隠すつもりはなくても、報告を後回しにしたり、事実を少しぼかして伝えたりしてしまうことがあります。
しかし、介護事故は「バレなければいい」で済むものではありません。利用者さんの安全、家族との信頼、職場全体の再発防止、そして介護職自身を守るためにも、事故が起きたときは早めに正しく報告することが大切です。
この記事でわかること
・介護事故を隠すのがなぜ危険なのか
・事故を隠したくなる介護職の心理
・隠した場合に起こりうるリスク
・介護事故が起きた直後に取るべき対応
・報告書や上司への伝え方の注意点
・隠さず報告できる職場を選ぶポイント
介護事故を隠すのがNGと言われる本当の理由
事故報告は「犯人探し」ではなく利用者さんを守るためにある
介護事故の報告というと、「誰が悪かったのかを責められるもの」と感じてしまう人がいます。
もちろん、明らかな不注意や確認不足があれば振り返りは必要です。しかし本来、事故報告の目的は個人を責めることではなく、利用者さんの安全を守り、同じ事故を繰り返さないために原因を整理することです。
厚生労働省の通知でも、介護現場で報告された事故情報を収集・分析・共有することは、事故の予防・再発防止や介護サービスの質向上に役立つとされています。また、死亡に至った事故や、医師の診断を受け投薬・処置など何らかの治療が必要となった事故は、原則として報告対象とされています。(ウェブアクセシビリティ基盤委員会)
つまり、事故報告は「怒られるための書類」ではありません。
利用者さんの状態を正しく把握し、必要な処置や受診につなげ、今後の介助方法を見直すための重要な情報です。
大切な考え方
介護事故の報告は、失敗を責めるためだけのものではありません。
利用者さんを守り、職員同士で同じ危険を共有するために必要な対応です。
隠すと状態変化に気づくのが遅れる
介護事故を隠すことで一番怖いのは、利用者さんの状態変化に気づくのが遅れることです。
たとえば、転倒直後は「大丈夫」と話していても、時間が経ってから痛みが強くなったり、骨折や頭部打撲の影響が出たりすることがあります。誤嚥の可能性がある場合も、その場では落ち着いて見えても、後から発熱や呼吸状態の変化が出ることがあります。
介護職だけで判断できないことも多いため、事故後は看護師、上司、管理者などに早めに報告し、必要に応じて医療職の判断を受けることが大切です。
「少しぶつけただけだと思った」「痛がっていなかったから大丈夫だと思った」という自己判断が、後から大きな問題になることもあります。
介護現場では、事故そのものよりも、事故後にどう観察し、どう報告し、どう対応したかが重要になります。
小さな事故やヒヤリハットも再発防止の材料になる
介護事故を隠す人の中には、「この程度で報告したら大げさだと思われるかも」と考える人もいます。
しかし、介護現場では小さな違和感やヒヤリハットが、次の大きな事故を防ぐヒントになることがあります。
たとえば、以下のような場面です。
・車いすのブレーキが甘く、立ち上がり時に動きかけた
・トイレ誘導中にふらついたが、転倒はしなかった
・薬を配る直前に別の利用者さんの薬だと気づいた
・ベッド柵の位置が合わず、転落しそうになった
・床が濡れていて滑りそうになった
この段階で共有できれば、環境整備や声かけ、見守り方法の変更につなげられます。
逆に、「何も起きなかったからいい」と流してしまうと、同じ状況が繰り返され、次は本当に事故になる可能性があります。
事故を隠さないことは、自分を守るだけでなく、次の事故を防ぐ行動でもあります。
介護事故を隠したくなる心理と現場で起こりやすい場面
「怒られるのが怖い」と感じるのは自然な反応
介護事故を起こしたとき、真っ先に「どうしよう」と焦るのは自然なことです。
特に新人の場合、まだ業務に慣れていないため、事故が起きると強い不安を感じます。
「また失敗したと思われるかもしれない」
「先輩にきつく言われるかもしれない」
「自分だけが悪いことにされるのではないか」
このように考えてしまうと、報告するまでに時間がかかってしまうことがあります。
ただし、怖いからといって黙っていると、状況はさらに悪くなります。事故直後に報告すれば、周囲が一緒に対応できます。しかし時間が経ってから発覚すると、「なぜすぐ言わなかったのか」という問題が加わります。
事故が起きたときは、完璧な説明をしようとしなくて大丈夫です。
まずは、**「事故が起きたこと」「利用者さんの今の状態」「自分が見た事実」**を短く伝えることが大切です。
忙しさで報告のタイミングを逃してしまう
介護現場は、時間に追われやすい仕事です。
食事介助、排泄介助、入浴介助、ナースコール対応、記録、申し送りなどが重なると、「あとで報告しよう」と思っているうちに時間が過ぎてしまうことがあります。
しかし、介護事故の報告は「落ち着いたらでいい」とは限りません。
厚生労働省は、事故が発生した場合、速やかに市町村や入所者の家族等へ連絡し、必要な措置を講じること、事故に際して採った処置を記録することなどを示しています。実際の外部報告は管理者や事業所のルールに沿って行われることが多いですが、現場職員はまず上司や看護師へ速やかに伝える必要があります。(厚生労働省)
忙しいときほど、報告を後回しにしない仕組みが大切です。
たとえば、現場では次のように動くと混乱を減らしやすくなります。
・利用者さんの安全を確保する
・近くの職員に応援を頼む
・看護師やリーダーにすぐ伝える
・その場で見たことをメモしておく
・落ち着いてから事故報告書に整理する
忙しいからこそ、「あとでまとめて言う」ではなく、第一報だけでも早く伝えることが重要です。
ヒヤリハットと事故の線引きに迷う
介護職が報告を迷いやすい理由の一つに、「これは事故なのか、ヒヤリハットなのか判断できない」というものがあります。
たとえば、利用者さんがつまずいたけれど転倒しなかった場合、事故ではなくヒヤリハットとして扱う職場もあります。転倒したが外傷がない場合は、事故報告書が必要な職場もあれば、内部記録と経過観察で対応する職場もあります。
この線引きは、施設形態や自治体、職場のルールによって異なります。
そのため、現場職員が自己判断で「これは報告しなくていい」と決めるのは危険です。
迷ったときの判断
「事故かヒヤリハットか」よりも、まずは上司に共有することが大切です。
報告書が必要かどうかは、職場のルールや管理者の判断に沿って確認しましょう。
「報告したら大げさかな」と思う内容でも、上司に伝えたうえで「ヒヤリハットで記録しましょう」と判断されるなら問題ありません。
一番避けたいのは、自分だけで抱え込んで誰にも伝えないことです。
夜勤中や人手不足の時間帯は隠れやすい
夜勤中や早朝、入浴介助の時間帯などは、事故が起きてもすぐに相談できる人が少ないことがあります。
特に夜勤では、少人数で多くの利用者さんを見守るため、転倒、転落、失禁対応中のふらつき、認知症の方の歩行などが起きやすくなります。
「今、看護師がいない」
「リーダーに電話するほどではないかも」
「朝になってから言えばいいかな」
このように考えてしまうこともあります。
しかし、夜勤中の事故ほど、記録と報告が重要です。なぜなら、発生時の状況を見ていた職員が限られているからです。
時間、場所、発見時の姿勢、意識状態、痛みの訴え、外傷の有無、バイタル確認の有無、誰に連絡したかなどを残しておかないと、日勤帯へ正確に引き継げません。
夜勤中に判断に迷う事故が起きた場合は、職場の緊急連絡体制に沿ってリーダーや看護師、管理者へ相談しましょう。
介護事故を隠した場合に起こりうるリスク
利用者さんや家族との信頼関係が崩れる
介護事故を隠すことで、最も大きく失われるものの一つが信頼です。
利用者さんや家族は、介護職に対して「安全に見てもらえているか」「何かあったときにきちんと知らせてくれるか」を気にしています。
事故そのものが起きたことよりも、事故後に説明がなかったこと、記録が曖昧だったこと、後から別の職員の話で発覚したことの方が、不信感につながる場合があります。
たとえば、家族から見て以下のような状況があると、不安が大きくなります。
| 家族が不信感を持ちやすい状況 | 受け止められ方 |
|---|---|
| あざがあるのに説明がない | 何か隠しているのではと思われる |
| 転倒した時間が曖昧 | 見守り体制に不安を持たれる |
| 職員によって説明が違う | 施設全体への信頼が下がる |
| 受診や観察の記録がない | 適切に対応したのか疑われる |
家族への説明は、基本的に管理者や相談員、看護師など職場のルールに沿って行います。現場職員が個人的に判断して説明するのではなく、まず事実を正確に職場へ報告することが必要です。
記録や説明の食い違いが大きくなる
介護事故を隠そうとすると、記録や説明に矛盾が出やすくなります。
最初は「少し言わないだけ」のつもりでも、後から利用者さんの痛みや外傷が見つかった場合、次のような問題が起こります。
・事故が起きた時間がわからない
・誰がその場にいたのかわからない
・発生時の姿勢や状況が記録に残っていない
・家族への説明内容と現場の話が違う
・看護師や管理者への報告時刻が曖昧になる
事故直後なら、「何時ごろ、どこで、どのような状況だったか」を思い出しやすいです。
しかし時間が経つほど記憶は曖昧になります。あとから記録を書こうとしても、事実と推測が混ざりやすくなります。
事故報告書では、反省や言い訳よりも、客観的な事実が重要です。
そのためにも、事故が起きたら早い段階でメモを取り、上司に伝え、必要な記録につなげることが大切です。
職場全体の問題に発展しやすい
介護事故を隠した場合、問題は個人だけで終わらないことがあります。
事故内容によっては、施設や事業所として市町村などへ報告が必要になる場合があります。最新の厚生労働省通知では、第1報は事故発生後速やかに、遅くとも5日以内を目安に提出すること、状況の変化に応じて追加報告を行い、原因分析や再発防止策についても作成次第報告することが示されています。(ウェブアクセシビリティ基盤委員会)
もちろん、現場の介護職が直接すべての外部報告を行うわけではありません。
しかし、現場職員が事故を隠したことで、管理者が必要な判断をできなくなると、施設全体の対応遅れにつながります。
報告が遅れると、家族対応、受診判断、保険対応、自治体への報告、再発防止策の検討など、すべてが後手に回ります。
介護事故を隠すことは、結果的に自分だけでなく、同僚や管理者、施設全体にも負担を広げてしまう行動です。
介護職本人も守られにくくなる
介護事故を隠すことは、介護職本人にとっても大きなリスクです。
早く報告していれば、上司や看護師が一緒に対応し、職場として状況を整理できます。必要な処置、家族連絡、受診、記録、再発防止策をチームで進められます。
しかし、隠してしまうと、「事故を起こしたこと」だけでなく、「報告しなかったこと」も問題になります。
事故そのものは、介護現場では完全にゼロにできないことがあります。高齢者の身体状態や認知症、病気、環境、職員配置など、さまざまな要因が関係するからです。
一方で、報告しないことは防げる行動です。
だからこそ、事故が起きたときは、完璧に説明できなくても早めに伝えることが大切です。正直に報告することは、利用者さんだけでなく、自分を守るための行動でもあります。
介護事故が起きた直後に介護職が取るべき報告対応
まず利用者さんの安全確認を最優先にする
介護事故が起きたとき、最初にするべきことは「報告書を書くこと」ではありません。
まずは利用者さんの安全確認です。
転倒や転落であれば、無理に起こさず、痛みの訴え、意識状態、出血、外傷、麻痺のような変化、気分不快などを確認します。状況によっては看護師や上司をすぐ呼びます。
誤薬、誤嚥、チューブ抜去、入浴中の急変などは、介護職だけで判断せず、すぐに看護師や管理者へ連絡します。
介護事故直後は焦りやすいですが、慌てて利用者さんを動かすことで状態を悪化させる可能性もあります。
事故直後の基本
□ 利用者さんの安全を確保する
□ 無理に動かさない
□ 近くの職員に応援を頼む
□ 看護師・リーダー・上司へすぐ報告する
□ 見た事実を忘れないうちにメモする
「大丈夫そうだから」と自己判断しないことが大切です。
特に頭部打撲、骨折の疑い、誤嚥、意識状態の変化、出血、強い痛みがある場合は、職場のマニュアルに沿って速やかに対応しましょう。
上司への第一報は短くてもよい
事故直後は、頭の中が混乱しやすく、うまく説明できないことがあります。
そのため、最初からきれいに報告しようとしなくても大丈夫です。まずは第一報として、必要な情報を短く伝えることを優先します。
たとえば、次のように伝えます。
第一報の例
「〇〇さんが、10時15分ごろトイレ前で転倒されました。今は床に座った状態で、右膝の痛みを訴えています。外傷はまだ確認中です。看護師さんに見てもらいたいです。」
この時点で原因まで断定する必要はありません。
「私の見守り不足でした」「急いでいたからです」と先に決めつけるよりも、まずは事実を伝えます。
第一報で伝えたい内容は、以下のようなものです。
| 伝える内容 | 例 |
|---|---|
| 誰が | 〇〇さんが |
| いつ | 10時15分ごろ |
| どこで | トイレ前で |
| 何が起きたか | 転倒された |
| 今の状態 | 右膝の痛みを訴えている |
| すでにした対応 | ナースコールで応援を呼んだ |
大切なのは、早く共有することです。
詳しい原因分析や再発防止策は、利用者さんの安全確認が終わってから整理します。
記録には「見た事実」と「行った対応」を分けて書く
介護事故の記録では、感情や推測をそのまま書くのではなく、客観的な事実を整理することが重要です。
悪い例としては、以下のような書き方があります。
・たぶん急いでいたため転倒した
・職員の不注意で起きた
・本人が勝手に歩いた
・大きな問題はなさそうだった
・いつも通りだったと思う
このような表現は、事実と推測が混ざっています。
事故報告書では、以下のように書くと整理しやすくなります。
・〇時〇分ごろ、居室入口付近で床に座っているところを発見
・本人より「右足が痛い」と発言あり
・右膝に赤みあり、出血なし
・看護師へ報告し、バイタル測定を実施
・管理者へ報告し、家族連絡は相談員が実施
記録のポイント
「見たこと」「聞いたこと」「行った対応」「報告した相手」を分けて書くと、あとから確認しやすい記録になります。
介護事故の記録は、自分を責める文章ではありません。
利用者さんに何が起き、職員がどう対応したかを残すためのものです。
医療的な判断は看護師や専門職に確認する
介護職は、利用者さんの生活を支える専門職です。
一方で、医療的な診断や処置の判断は、看護師や医師などの専門職に確認する必要があります。
たとえば、転倒後に「骨折はなさそう」と介護職だけで判断したり、誤嚥の可能性があるのに「むせが治まったから大丈夫」と決めたりするのは危険です。
介護職が確認できるのは、主に以下のような観察情報です。
・痛みの訴えがあるか
・出血や腫れがあるか
・意識状態に変化があるか
・顔色や呼吸の様子はどうか
・いつもと違う言動があるか
・食事や水分摂取に変化があるか
これらを看護師や上司に伝え、必要な判断を仰ぎます。
「自分で判断しない」という姿勢は、介護職として未熟だからではありません。安全に働くために必要な基本です。
報告書・家族説明・職場内共有で気をつけたいこと
事故報告書は反省文ではない
介護事故を起こしたあと、報告書を書くときに「とにかく謝らなければ」と感じる人もいます。
もちろん、利用者さんに痛みや不安を与えてしまった場合、誠実な気持ちは大切です。しかし、事故報告書に必要なのは、感情的な反省文ではなく、事実に基づいた記録です。
報告書には、主に次のような内容を整理します。
・事故が起きた日時
・事故が起きた場所
・発生時の状況
・利用者さんの状態
・職員が行った対応
・報告した相手
・受診や処置の有無
・原因として考えられる要因
・再発防止策
厚生労働省の標準報告様式にも、発生時状況、事故内容の詳細、発生時の対応、家族等への報告、原因分析、再発防止策などの項目が示されています。(ウェブアクセシビリティ基盤委員会)
つまり、報告書は「自分が悪かったです」と書くためだけのものではありません。
事実を残し、チームで再発防止につなげるための書類です。
曖昧な表現や責任転嫁に見える言葉は避ける
事故報告書では、言葉選びにも注意が必要です。
特に、利用者さんを責めるように見える表現や、事実が曖昧な表現は避けた方がよいです。
| 避けたい表現 | 書き換え例 |
|---|---|
| 勝手に立ち上がった | 職員が離れている間に立ち上がられた |
| 目を離したすきに転倒した | 〇〇対応中、居室前で転倒を確認 |
| たぶん滑った | 床に水分あり。転倒との関連は確認中 |
| 問題なさそうだった | 外傷なし。痛みの訴えなし。看護師へ報告済み |
| いつも通りだった | 意識状態、会話、表情に普段との大きな違いなし |
大切なのは、利用者さんを責めないこと、職員の感情を入れすぎないこと、推測を断定しないことです。
もちろん、原因分析では職員要因、本人要因、環境要因を整理することがあります。
ただし、「本人が悪い」「職員が悪い」と単純に決めるのではなく、複数の要因を見て再発防止策につなげることが大切です。
家族への説明は職場のルールに沿って行う
介護事故が起きたとき、家族への連絡が必要になる場合があります。
ただし、現場の介護職が自己判断で家族に詳しく説明するのではなく、施設や事業所のルールに従うことが大切です。
多くの職場では、管理者、生活相談員、ケアマネジャー、看護師、リーダーなどが家族対応を行います。
現場職員がするべきことは、家族へ直接説明する前に、まず職場へ正確な情報を伝えることです。
家族説明で必要になる情報は、以下のようなものです。
・事故が起きた時間と場所
・発生時の状況
・利用者さんの現在の状態
・行った対応
・看護師や医師の確認状況
・受診の有無
・今後の観察や再発防止策
この情報が曖昧だと、家族への説明も曖昧になります。
そのため、現場職員の第一報と記録はとても重要です。
再発防止策は現実的な内容にする
事故報告書では、最後に再発防止策を書くことがあります。
このとき、「今後は注意する」「見守りを強化する」だけでは不十分な場合があります。なぜなら、具体的に何を変えるのかがわからないからです。
再発防止策は、できるだけ現実的で、職員全員が実行しやすい内容にすることが大切です。
たとえば、次のように考えます。
| 事故の例 | 再発防止策の考え方 |
|---|---|
| トイレ前で転倒 | 排泄リズムを見直し、声かけ時間を調整する |
| ベッドから転落 | ベッドの高さ、センサー、マット位置を確認する |
| 車いす移乗時にふらつき | 移乗方法を統一し、介助量を再評価する |
| 誤薬しかけた | 配薬前の確認手順と声出し確認を見直す |
| 入浴時に皮膚剥離 | 洗身時の力加減と皮膚状態の共有を行う |
再発防止の視点
「もっと気をつける」だけで終わらせず、手順・環境・情報共有・人員配置・利用者さんの状態変化を具体的に見直すことが大切です。
介護事故を隠すと、この再発防止の機会が失われます。
同じ事故を繰り返さないためにも、報告は現場全体に必要な行動です。
介護事故を隠さずに働くための職場選びと日々の備え
ミスを共有できる職場は働きやすい
介護職が安心して働くためには、事故やヒヤリハットを報告しやすい職場環境が重要です。
もちろん、事故を軽く考える職場がよいわけではありません。
大切なのは、事故が起きたときに、感情的に責めるだけで終わらず、原因と対策をチームで考える職場です。
報告しやすい職場には、次のような特徴があります。
・事故報告の流れが決まっている
・新人にも報告方法を教えてくれる
・ヒヤリハットを出しても責められない
・看護師やリーダーに相談しやすい
・事故後に再発防止策を共有している
・記録の書き方を一緒に確認してくれる
反対に、事故が起きるたびに職員を強く責めるだけの職場では、報告しづらくなります。
その結果、隠すつもりがなくても「言いにくい雰囲気」ができ、事故の共有が遅れる可能性があります。
事故をゼロにする努力と、事故を隠さない仕組みは、どちらも大切です。
面接や職場見学で確認したいこと
転職や就職を考えている人は、面接や職場見学の段階で、事故対応の考え方を確認しておくと安心です。
特に未経験者は、介護事故が起きたときの流れがわからないため、教育体制と報告体制を見ておくことが大切です。
応募前に確認したい質問
「事故やヒヤリハットが起きた場合、どのような流れで報告しますか?」
「新人には事故報告書の書き方を教えてもらえますか?」
「転倒や誤薬が起きたとき、看護師や上司へ相談できる体制はありますか?」
「夜勤中に判断に迷った場合の連絡体制はありますか?」
「ヒヤリハットは職員間で共有されていますか?」
この質問をしたときに、丁寧に説明してくれる職場は、比較的安心しやすいです。
逆に、「事故なんて起こさなければいい」「うちは各自で判断している」といった答え方をされる場合は、少し慎重に見た方がよいでしょう。
介護職は、職場によって働きやすさが大きく変わります。
給与や通勤時間だけでなく、事故やミスが起きたときに相談できる環境かどうかも確認しておくことが大切です。
事故を起こした自分を責めすぎない
介護事故が起きると、強く落ち込む人もいます。
「自分は介護職に向いていないのでは」
「利用者さんに申し訳ない」
「もう仕事に行きたくない」
このように感じることもあるでしょう。
反省は必要ですが、自分を責めすぎると、次の仕事にも影響します。大切なのは、事故を隠すことではなく、起きたことを正しく振り返り、次に活かすことです。
事故には、本人の状態、環境、職員配置、時間帯、介助方法、情報共有など、複数の要因が関係します。
自分一人ですべてを抱え込まず、上司や先輩、看護師に相談しましょう。
もし、報告しただけで強く責められ続ける、相談しても無視される、事故の責任を一人に押しつけられるような職場であれば、その職場環境自体を見直すことも必要です。
介護職を続けるためには、頑張りだけでなく、安心して相談できる環境も大切です。
介護事故を隠さないために普段から準備しておく
介護事故は、突然起こります。
だからこそ、事故が起きてから慌てるのではなく、普段から報告の流れを確認しておくことが大切です。
日ごろの備えチェックリスト
□ 事故発生時に最初に報告する相手を知っている
□ 夜勤中の緊急連絡先を確認している
□ 事故報告書の書き方を一度は教わっている
□ ヒヤリハットと事故の記録ルールを確認している
□ 転倒・誤薬・誤嚥時の基本対応を把握している
□ 看護師へ伝える観察ポイントを知っている
□ 判断に迷ったときは自己判断しないと決めている
この準備があるだけで、事故が起きたときの焦りは少し減らせます。
新人のうちは、事故対応がわからなくて当然です。わからないままにせず、「この場合は誰に報告すればよいですか」「報告書はどこまで書けばよいですか」と確認していきましょう。
介護事故を隠さないために必要なのは、強いメンタルだけではありません。
迷ったときに確認できる習慣と、報告しやすい職場環境です。
まとめ|介護事故を隠すより早く報告した方が自分も利用者さんも守れる
介護事故は「隠さない」が基本
介護事故を隠すのは、利用者さんの安全を守るうえで避けるべき対応です。
事故を隠すと、状態変化の発見が遅れたり、家族への説明が不十分になったり、記録の食い違いが起きたりする可能性があります。
また、職場として必要な対応や再発防止策を取れなくなるため、結果的に同じ事故が繰り返されるリスクも高まります。
事故が起きたときは怖いものです。
しかし、早く報告すれば、周囲の職員と一緒に対応できます。利用者さんの安全確認、看護師への相談、家族連絡、受診判断、記録、再発防止策をチームで進めることができます。
完璧な説明よりも第一報が大切
事故直後から完璧に説明できる人は多くありません。
大切なのは、事故をなかったことにせず、まず第一報を入れることです。
「〇〇さんが転倒されました」
「右膝の痛みを訴えています」
「看護師さんに確認してほしいです」
このように、短くてもよいので早く伝えましょう。
そのあとで、時間、場所、状況、利用者さんの状態、行った対応、報告先を整理して記録します。
原因分析や再発防止策は、上司やチームと一緒に考えれば大丈夫です。
この記事のまとめ
・介護事故を隠すと、利用者さんの安全確認や必要な対応が遅れやすい
・事故報告は責めるためだけでなく、再発防止と情報共有のためにある
・迷ったときは自己判断せず、上司・看護師・管理者へ早めに相談する
・報告書には感情や推測ではなく、見た事実と行った対応を書く
・事故を隠さず共有できる職場は、介護職にとっても働きやすい
・報告しづらい雰囲気が強い職場では、働き方や職場環境を見直すことも大切
報告できる介護職は信頼される
介護事故が起きたときに大切なのは、「一度もミスをしない人」になることではありません。
もちろん事故を防ぐ努力は必要です。しかし介護現場では、利用者さんの身体状態や認知症、環境、職員体制などが複雑に関係するため、どれだけ気をつけていても事故が起きることがあります。
そのときに信頼されるのは、事故を隠す人ではなく、早く報告し、事実を整理し、次に活かそうとする人です。
介護事故を起こしてしまったときは、怖くても一人で抱え込まないでください。
まず利用者さんの安全を確認し、すぐに上司や看護師へ報告しましょう。正しく報告することは、利用者さんを守るだけでなく、介護職としての自分自身を守る行動でもあります。


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