介護記録を書くとき、新人のうちは「どこまで書けばいいのか」「この表現で失礼にならないか」「書いてはいけないことがあるのでは」と不安になりやすいです。
介護記録は、ただのメモではありません。利用者さんの状態を職員間で共有し、安全なケアにつなげるための大切な情報です。そのため、書き方を間違えると、誤解を招いたり、利用者さんの尊厳を傷つけたり、事故やトラブル時に問題になることもあります。
特に新人のうちは、悪気なく「わがまま」「暴れた」「認知症がひどい」など、主観的な表現を書いてしまうことがあります。しかし介護記録では、職員の感想ではなく、見たこと・聞いたこと・行ったことを客観的に書くことが基本です。
この記事でわかること
・介護記録で書いてはいけないこと
・新人が使いやすいNG表現と正しい書き換え方
・主観と事実の違い
・利用者さんの尊厳を守る記録の考え方
・事故やトラブルを防ぐための記録の注意点
・介護記録を書くときに迷った場合の確認ポイント
介護記録で大切なのは「事実を客観的に残すこと」
介護記録は職員同士の申し送りだけではない
介護記録は、職員同士が利用者さんの状態を共有するために使います。食事量、排泄状況、入浴時の様子、体調変化、転倒の有無、発言や行動の変化などを記録することで、次の勤務者が安全にケアを続けられます。
しかし、介護記録の役割はそれだけではありません。家族への説明、ケアプランの見直し、医師や看護師への情報共有、事故発生時の確認資料として使われることもあります。
つまり、介護記録は「その日の出来事を書いて終わり」ではなく、利用者さんの生活を支えるための公式な記録です。
だからこそ、あいまいな表現や感情的な言葉は避ける必要があります。あとから読んだ人が同じように状況を理解できるように、できるだけ具体的に書くことが大切です。
「自分がどう感じたか」より「何が起きたか」を書く
新人が介護記録でつまずきやすいのは、出来事と感想が混ざってしまうことです。
たとえば、利用者さんが介助を拒否した場面で「機嫌が悪かった」「わがままだった」と書くと、記録としては主観が強くなります。実際には、体調が悪かったのか、眠かったのか、羞恥心があったのか、不安があったのかはわかりません。
介護記録では、職員の解釈よりも、実際に確認できた事実を優先します。
たとえば次のように書くと、状況が伝わりやすくなります。
| 避けたい書き方 | 記録に向いている書き方 |
|---|---|
| 機嫌が悪かった | 声かけに対し「今は嫌」と発言あり |
| わがままだった | 更衣介助を提案するも拒否あり |
| 暴れた | 介助時に職員の手を払う動作あり |
| 落ち着きがなかった | 10分間に居室と廊下を3往復される |
| 認知症がひどい | 同じ質問を5分間に3回される |
このように、見たこと・聞いたこと・行ったことに分けて書くと、主観を減らしやすくなります。
記録は「誰が読んでも同じ意味になる」ことが大切
介護記録は、自分だけが読むものではありません。早番、遅番、夜勤、看護師、ケアマネジャー、相談員、管理者など、さまざまな職種が確認することがあります。
そのため、読む人によって受け取り方が変わる言葉は注意が必要です。
たとえば「少し食べた」と書くと、人によって「2割くらい」「半分くらい」「ほとんど食べた」と受け取り方が変わります。食事量なら「主食3割、副食5割」など、できるだけ具体的に書く方が伝わりやすいです。
また、「いつもより元気がない」と書く場合も、何を見てそう判断したのかが必要です。
「発語少なく、朝食時の声かけにうなずきのみ。普段は自ら挨拶されるが、本日は発言少ない」と書けば、他の職員も状態をイメージしやすくなります。
記録の基本
介護記録では、感想ではなく事実を書くことが大切です。
「どう感じたか」ではなく、「何を確認したか」「何を行ったか」「利用者さんがどう反応したか」を残すようにしましょう。
介護記録で書いてはいけないNG表現
利用者さんを決めつける言葉は書かない
介護記録で特に注意したいのが、利用者さんの性格や人格を決めつける表現です。
たとえば、以下のような書き方は避けた方がよいです。
・わがまま
・頑固
・面倒くさい
・うるさい
・しつこい
・迷惑行為
・問題行動
・性格が悪い
・言うことを聞かない
これらの言葉は、職員の感情や評価が含まれています。読んだ人に悪い印象を与えやすく、利用者さんの尊厳を傷つける表現にもなりかねません。
介護の現場では、介助拒否や同じ話の繰り返し、大きな声を出す場面などがあります。しかし、それには不安、痛み、羞恥心、環境の変化、認知症による混乱など、さまざまな背景がある場合があります。
記録では、利用者さんを責める言葉ではなく、実際にあった言動を具体的に書くことが大切です。
たとえば「しつこく訴えあり」ではなく、「10分間に『家に帰りたい』と4回発言あり」と書くと、状況が客観的に伝わります。
職員の感情が強く出る表現は避ける
介護記録には、職員の感情をそのまま書かないように注意します。
たとえば、以下のような表現です。
・大変だった
・困った
・怖かった
・イライラした
・手に負えない
・何度も同じことを言って疲れた
・対応に苦労した
もちろん、現場で大変な場面はあります。新人であれば、暴言や介助拒否、転倒リスクのある行動などに戸惑うこともあるでしょう。
ただし、介護記録は日記ではないため、感情を中心に書くと正確な情報共有になりにくいです。
「怖かった」と書くよりも、「右手を振り上げる動作あり。職員は距離を取り、応援を依頼した」と書いた方が、次の対応につながります。
「大変だった」と書くよりも、「排泄介助時に立位不安定あり。膝折れが見られたため、職員2名で対応した」と書く方が、ケア上の注意点が伝わります。
病名や医療判断を自己判断で書かない
介護職は、利用者さんの生活の様子を観察する大切な立場です。しかし、病名や医療的な判断を自己判断で記録することは避ける必要があります。
たとえば、以下のような書き方は注意が必要です。
・肺炎だと思われる
・脱水になっている
・認知症が進んだ
・うつ状態である
・誤嚥した
・脳梗塞のような症状
・薬が合っていない
これらは医師や看護師など、専門職の判断が必要な内容です。介護職が記録する場合は、診断名のように書くのではなく、観察した事実を残します。
たとえば「脱水だと思う」ではなく、「口唇の乾燥あり。水分摂取を促すも2口で中止。看護師へ報告」と書く方が適切です。
「誤嚥した」と断定するのではなく、「食事中にむせ込みあり。咳込み約30秒続く。看護師へ報告」と書くと、見た事実が伝わります。
医療的な内容で迷ったら
介護職が記録するのは、診断ではなく観察内容です。
体調変化や異常がある場合は、自己判断で断定せず、看護師・上司・医師などに確認したうえで記録しましょう。
他職員や家族への批判を書かない
介護記録には、他職員や家族への批判も書かないようにします。
たとえば、以下のような書き方です。
・前の職員の対応が悪かった
・家族が無理な要求をしてきた
・看護師が対応してくれなかった
・夜勤者がきちんと見ていなかった
・職員のミスで混乱した
職員間の連携で気になることがある場合、記録に感情的な批判を書くのではなく、必要な事実を整理して報告することが大切です。
たとえば「家族が無理な要求をした」ではなく、「家族より『毎日入浴させてほしい』との希望あり。相談員へ報告」と書くと、客観的な記録になります。
職員間のミスや連携不足が疑われる場合も、勝手に原因を決めつけず、上司へ報告し、施設のルールに沿って記録します。
介護記録は、誰かを責めるためのものではありません。利用者さんの安全とケアの継続のために必要な情報を残すものです。
新人が間違えやすい介護記録の書き方
「いつも通り」「特変なし」だけで終わらせない
新人のうちは、何を書けばいいかわからず、「いつも通り」「特変なし」とだけ書いてしまうことがあります。
もちろん、施設によっては簡潔な記録が求められる場合もあります。しかし、毎回「特変なし」だけでは、利用者さんの状態やケアの様子が伝わりにくくなります。
特に、食事量、排泄、睡眠、表情、歩行状態、介助時の反応などは、普段との違いに気づくための大切な情報です。
たとえば、次のように少し具体的に書くだけでも記録の質は変わります。
・昼食は主食8割、副食全量摂取
・午前中はリビングで過ごされ、職員の声かけに笑顔あり
・トイレ誘導時、立ち上がりにふらつきなし
・入浴後、疲労感の訴えなく居室で休まれる
・夜間、2時にトイレ希望あり。再入眠される
「変化がない」ことも大切な情報です。ただし、何を確認して変化がなかったのかが伝わるように書くと、より役立つ記録になります。
あいまいな言葉はできるだけ具体的にする
介護記録では、あいまいな言葉を使いすぎると、あとから状況がわかりにくくなります。
よくあるあいまいな表現には、次のようなものがあります。
| あいまいな表現 | 具体的にするとよい例 |
|---|---|
| 少し食べた | 主食2割、副食3割摂取 |
| たくさん飲んだ | お茶150ml摂取 |
| 何度も訴えあり | 30分間に同内容の訴え3回あり |
| しばらく休んだ | 居室ベッド上で約20分休まれる |
| ふらつきあり | 立ち上がり時に右側へ体が傾く |
| 大声あり | 「帰りたい」と廊下で声量大きく発言あり |
| 不穏あり | 表情硬く、歩行しながら「帰る」と発言あり |
すべてを細かく書きすぎる必要はありませんが、ケアに関係する部分はできるだけ具体的に残すことが大切です。
特に、転倒リスク、食事中のむせ込み、排泄状況、皮膚状態、痛みの訴え、介助拒否などは、次の職員が対応するために具体性が必要です。
書き換えのコツ
「少し」「たくさん」「何度も」「しばらく」などの言葉を使ったときは、
数字や時間、回数、発言内容に置き換えられないか確認してみましょう。
略語や施設独自の言葉を使いすぎない
介護現場では、略語や施設独自の言葉が使われることがあります。
たとえば、「トイレ誘導」を「トイレ誘」などと略したり、「リハビリパンツ」を「リハパン」と書いたりする職場もあります。施設内で共通理解がある略語なら問題ない場合もありますが、新人が自己判断で略語を増やすのは避けた方が安心です。
略語は、読む人によって意味が変わることがあります。特に、事故報告や医療職との情報共有、家族説明に関係する記録では、誤解が起きない表現が大切です。
また、施設内では通じる言葉でも、外部の人が読むと意味がわからないことがあります。
新人のうちは、職場の記録ルールを確認し、使ってよい略語と避けるべき略語を把握しておきましょう。
記録をあと回しにしすぎない
忙しい現場では、介助やコール対応に追われて記録が後回しになることがあります。新人のうちは、仕事に慣れていないため、記録を書く時間が取れずに焦ることもあるでしょう。
ただし、時間が経つほど記憶はあいまいになります。
「何時ごろだったか」「誰に報告したか」「利用者さんが何と言ったか」が曖昧になると、記録の正確性が下がります。
すぐに詳しく書けない場合でも、メモに残す、時間だけ記録しておく、報告した相手を確認しておくなど、忘れない工夫が必要です。
特に、転倒、皮膚トラブル、体調変化、服薬に関わる出来事、家族からの重要な申し出などは、できるだけ早めに記録・報告することが大切です。
新人が意識したい記録の流れ
□ 出来事が起きた時間を確認する
□ 利用者さんの発言や様子をメモする
□ 自分が行った対応を書く
□ 誰に報告したかを残す
□ 不明点は自己判断せず確認する
NG表現を正しい介護記録に書き換える具体例
介助拒否の記録は「拒否した理由」を決めつけない
介助拒否は、介護記録で表現に迷いやすい場面です。
「言うことを聞かない」「拒否が強い」「わがまま」などと書いてしまうと、利用者さんを責めるような印象になります。
介助拒否があった場合は、まず何の介助に対して、どのような反応があったのかを書きます。
| NG表現 | 書き換え例 |
|---|---|
| おむつ交換を嫌がり怒った | 排泄介助の声かけに対し「今は嫌」と発言あり。再度時間を空けて声かけ予定 |
| 入浴を拒否して困った | 入浴の声かけに対し「今日は入りたくない」と発言あり。体調確認し、上司へ報告 |
| 着替えを嫌がって暴れた | 更衣介助時、職員の手を払う動作あり。声かけを中止し、距離を取って見守り実施 |
| わがままで介助できなかった | トイレ誘導を提案するも「行かない」と発言あり。10分後に再度声かけし誘導できた |
介助拒否の背景には、羞恥心、痛み、疲労、不安、眠気、認知症による混乱などが関係していることがあります。
そのため、記録では原因を決めつけず、発言・表情・動作・対応結果を残すことが大切です。
暴言や大声は「言葉の内容」と「状況」を分けて書く
利用者さんから暴言を受けた場合、職員としてつらく感じるのは自然なことです。新人であれば、ショックを受けたり、対応に迷ったりすることもあります。
ただし、記録では感情的な表現を避け、状況を整理して書きます。
たとえば「暴言あり」とだけ書くと、どの程度の内容だったのか、何がきっかけだったのかがわかりません。
必要に応じて、発言内容をそのまま書く場合もあります。ただし、施設のルールによって表現方法が決まっていることもあるため、迷う場合は上司に確認しましょう。
| NG表現 | 書き換え例 |
|---|---|
| 暴言がひどかった | トイレ誘導の声かけ時、「うるさい」と大きな声で発言あり |
| 怒鳴られて怖かった | 更衣介助時、声量大きく「やめて」と発言あり。介助を中止し見守りへ変更 |
| ずっと文句を言っていた | 夕食前より「帰りたい」と繰り返し発言あり。傾聴し、リビングで見守り実施 |
| 職員に失礼なことを言った | 職員に対し「来るな」と発言あり。距離を取り、別職員が声かけ実施 |
記録する目的は、職員が受けたつらさを証明することではなく、次に安全な対応をするための情報を残すことです。
暴言や大声が続く場合、職員一人で抱え込まず、上司やチームで対応方法を相談することも必要です。
転倒や事故につながる場面は時系列で残す
転倒、転落、誤薬、皮膚剥離、食事中のむせ込みなど、事故やヒヤリハットに関係する記録は特に注意が必要です。
このような場面では、「転んでいた」「危なかった」だけでは不十分です。いつ、どこで、どのような状態で発見したのか、その後どう対応したのかを時系列で書くことが大切です。
たとえば転倒の場合、以下のような情報が必要になります。
・発見時間
・発見場所
・発見時の姿勢
・意識状態や表情
・痛みの訴え
・外傷の有無
・バイタル測定の有無
・看護師や上司への報告
・その後の対応
記録例としては、次のようになります。
記録例
14時10分、居室入口付近の床上に座り込んでいるところを発見。本人より「トイレに行こうとした」と発言あり。右膝に痛みの訴えあり。外傷の有無を確認し、看護師へ報告。バイタル測定実施。以後、車椅子にてリビングへ移動し見守り継続。
このように書くと、状況と対応が順番に伝わります。
事故に関わる記録は施設のルールがあるため、必ず上司や看護師の指示に沿って書きましょう。事故報告書が必要になる場合もあります。
家族対応は感情ではなく「申し出内容」を残す
家族からの連絡や要望も、介護記録に残すことがあります。
このとき注意したいのは、家族の態度を評価する言葉を書かないことです。
たとえば「家族が怒っていた」「クレームを言われた」「細かい家族」などは、感情的な表現になりやすいです。
記録では、家族が何を言ったのか、誰に報告したのか、その後どう対応したのかを書きます。
| NG表現 | 書き換え例 |
|---|---|
| 家族からクレームあり | 家族より「衣類の汚れが気になる」と申し出あり。相談員へ報告 |
| 家族が怒っていた | 家族より電話にて「転倒時の状況を詳しく知りたい」と希望あり。管理者へ報告 |
| 細かい要望が多い | 家族より「水分摂取量を毎日教えてほしい」と希望あり。対応方法について上司へ相談 |
| 無理な希望を言われた | 家族より「毎日入浴希望」と申し出あり。施設の入浴日程を説明し、相談員へ共有 |
家族対応は、内容によって相談員、看護師、管理者などにつなぐ必要があります。新人が一人で判断せず、報告した事実を記録に残すことが大切です。
利用者さんの尊厳を守るために避けたい書き方
排泄や入浴の記録は配慮ある表現を使う
介護記録では、排泄介助や入浴介助など、利用者さんにとってとてもプライベートな内容を書くことがあります。
必要な情報は記録しなければなりませんが、表現には配慮が必要です。
たとえば、排泄失敗があったときに「汚した」「漏らした」と書くと、責めるような印象になる場合があります。
状況を記録する場合は、できるだけ中立的な言葉を使います。
| 避けたい表現 | 配慮した表現 |
|---|---|
| 便を漏らした | リハビリパンツ内に便失禁あり |
| 尿で服を汚した | 下衣に尿汚染あり |
| おむつが汚い | パッド内に排尿あり、交換実施 |
| 入浴を嫌がって裸にならない | 脱衣の声かけに対し「寒い」と発言あり |
| 体が臭かった | 衣類に尿臭あり、清拭と更衣を実施 |
排泄や入浴に関わる記録は、ケアの継続に必要です。しかし、利用者さんの尊厳を傷つける表現にならないように、事実を淡々と書くことが大切です。
認知症のある利用者さんへの表現に注意する
認知症のある利用者さんの記録では、特に表現に注意が必要です。
「認知症がひどい」「何もわかっていない」「おかしなことを言う」などの表現は避けましょう。
認知症による症状や行動がある場合でも、その人自身を否定するような書き方は適切ではありません。
記録では、実際の発言や行動を具体的に書きます。
たとえば、帰宅願望がある場合は「また帰ると言って困った」ではなく、「15時頃より『家に帰ります』と発言あり。玄関方向へ歩かれる。職員が付き添い、リビングへ誘導」と書くと、状況が伝わります。
同じ話を繰り返す場合も、「しつこい」ではなく、「5分間に『今日は何日ですか』と3回質問あり」と書くと客観的です。
尊厳を守る記録の視点
利用者さんの行動を「困った行動」と決めつける前に、
何が不安だったのか、何を伝えようとしていたのかを考えることも大切です。
記録では人格を評価せず、状況を具体的に残しましょう。
できなかったことだけでなく、できたことも残す
介護記録では、問題や変化があったときほど書くことが多くなります。そのため、利用者さんの「できなかったこと」ばかりが記録に残りやすいです。
しかし、利用者さんの生活を支えるためには、できたこと、落ち着いた場面、本人らしい様子も大切な情報です。
たとえば、次のような記録です。
・声かけにて自ら上衣を脱がれる
・箸を使用し、副食を自力で摂取される
・職員の声かけに笑顔で「ありがとう」と発言あり
・午後はリビングで他利用者と会話される
・トイレ誘導時、手すりを使用し立位保持できる
このような記録があると、その人の生活の様子や残存能力が見えやすくなります。
介護記録は、トラブルを書くためだけのものではありません。利用者さんがその人らしく生活するための情報を残すものでもあります。
個人情報を書きすぎない
介護記録には、利用者さんの個人情報が含まれます。そのため、必要のない情報まで書きすぎないことも大切です。
家族関係、金銭面、過去の生活歴、病歴、本人の発言などは、ケアに必要な範囲で記録します。
たとえば、家族の事情や本人の過去の話を詳しく書きすぎると、プライバシーへの配慮が不足する場合があります。
もちろん、ケアに必要な情報であれば記録が必要です。たとえば「家族の面会後に不安が強くなる」「特定の話題で落ち着かなくなる」などは、対応に関係する可能性があります。
大切なのは、その情報がケアの継続に必要かどうかを考えることです。
迷う場合は、自分だけで判断せず、上司や記録担当者に確認しましょう。
介護記録を書くときに新人が確認したいポイント
職場の記録ルールを最初に確認する
介護記録の書き方は、基本的な考え方は共通していますが、細かなルールは職場によって違います。
紙記録なのか、タブレットやパソコンで入力するのか、どの項目を毎日書くのか、事故時はどの書式を使うのかなど、施設ごとに決まりがあります。
新人のうちは、まず職場のルールを確認することが大切です。
新人が確認したい記録ルール
□ 食事量は何割表記か、具体量で書くのか
□ 排泄記録はどこまで詳しく書くのか
□ 「特変なし」は使ってよいのか
□ 略語や専門用語のルールはあるか
□ 事故やヒヤリハット時の記録方法は決まっているか
□ 家族からの連絡内容は誰に報告するか
□ 看護師へ報告した内容はどのように残すか
職場の書き方に合わせることは大切ですが、明らかに利用者さんを傷つける表現や、事実と異なる記録は避ける必要があります。
わからない場合は、先輩の記録を参考にしながら、上司に確認しましょう。
「報告したこと」も記録に残す
体調変化や事故につながる出来事があった場合、記録には自分が行った対応だけでなく、誰に報告したかも残すことが大切です。
たとえば、発熱、食事中のむせ込み、転倒、皮膚の赤み、強い痛みの訴え、急な様子の変化などは、介護職だけで判断せず、看護師や上司へ報告する場面があります。
記録には、次のように残します。
・看護師へ報告し、様子観察の指示あり
・リーダーへ報告し、2名対応へ変更
・相談員へ家族からの申し出を共有
・管理者へ転倒状況を報告
・夜勤者へ申し送り実施
報告した記録があると、チームでどのように対応したかがわかります。
ただし、「報告したから大丈夫」と自己判断するのではなく、職場の指示や手順に沿って行動することが大切です。
記録に迷ったら「5W1H」で整理する
介護記録で何を書けばいいかわからないときは、5W1Hで整理すると書きやすくなります。
| 項目 | 記録で見るポイント |
|---|---|
| いつ | 何時ごろ、どの時間帯に起きたか |
| どこで | 居室、トイレ、食堂、浴室、廊下など |
| 誰が | 利用者さん、家族、職員、他利用者など |
| 何を | どのような行動・発言・変化があったか |
| なぜ | 原因が明確な場合のみ書く。推測は避ける |
| どうした | 職員がどのように対応し、誰に報告したか |
特に「なぜ」は注意が必要です。
原因がはっきりしていないのに、「寂しかったため」「怒っていたため」「認知症のため」と書くと、推測になります。
原因がわからない場合は、無理に理由を書かず、観察した事実と対応を書きます。
たとえば「不安が強く歩き回る」ではなく、「表情硬く、廊下を歩きながら『帰ります』と発言あり」と書く方が客観的です。
書いてはいけないか迷う内容は一人で判断しない
介護記録は、慣れれば少しずつ書けるようになります。しかし、新人のうちは迷う場面が多くて当然です。
特に、事故、家族対応、医療的な変化、虐待が疑われる内容、職員間のトラブル、利用者さん同士のトラブルなどは、自分だけで判断しない方が安全です。
記録に残すべきか、どの表現を使うべきか迷った場合は、上司、リーダー、看護師、相談員などに確認しましょう。
介護記録は「自分の文章力を見せるもの」ではありません。必要な情報を正しく共有するためのものです。
迷ったときの確認ポイント
□ これは事実か、推測か
□ 利用者さんを傷つける表現になっていないか
□ 読む人によって意味が変わらないか
□ 医療判断を勝手に書いていないか
□ 必要な報告先に報告しているか
□ 職場の記録ルールに合っているか
介護記録は完璧さよりも「安全につながる正確さ」が大切
新人が最初から上手に書けなくても問題ない
介護記録は、最初から完璧に書ける人ばかりではありません。
新人のうちは、どの情報が必要なのか、どこまで詳しく書けばいいのか、どの表現が適切なのか迷うのが普通です。
大切なのは、最初からきれいな文章を書くことではありません。事実を正確に残そうとする姿勢です。
文章が短くても、時間、状況、利用者さんの反応、自分の対応、報告先が書かれていれば、十分に役立つ記録になります。
逆に、長く書いていても、感情や推測が多い記録は、あとから読んだ人が状況を正しく理解しにくくなります。
記録はケアの質を上げる材料になる
介護記録は、ただの事務作業ではありません。
「昨日から食事量が落ちている」「夜間のトイレ回数が増えている」「入浴前に不安が強くなりやすい」「特定の声かけで落ち着きやすい」など、記録を積み重ねることで、利用者さんの変化に気づきやすくなります。
また、記録があることで、職員同士の対応を統一しやすくなります。
たとえば、介助拒否がある利用者さんに対して、「朝一番よりも昼食後の方が入浴を受け入れやすい」と記録があれば、次の職員が声かけのタイミングを工夫できます。
このように、介護記録は利用者さんを管理するためではなく、よりよい関わり方を探すための材料になります。
書いてはいけないことを知ると記録への不安は減らせる
「介護記録で書いてはいけないこと」がわからないと、記録を書くたびに不安になります。
しかし、基本はそれほど複雑ではありません。
・人格を決めつけない
・感情的に書かない
・医療判断を断定しない
・他職員や家族を批判しない
・あいまいな表現を減らす
・利用者さんの尊厳に配慮する
・事実と対応を具体的に書く
この考え方を押さえておくだけでも、記録はかなり書きやすくなります。
新人のうちは、上手に書こうとしすぎなくて大丈夫です。まずは「見たこと」「聞いたこと」「行ったこと」を分けて書く意識を持ちましょう。
まとめ:介護記録で書いてはいけないことを避け、事実を丁寧に残そう
介護記録は、利用者さんの生活と安全を支える大切な記録です。新人のうちは書き方に迷いやすいですが、基本は主観ではなく事実を書くことです。
「わがまま」「暴れた」「認知症がひどい」などの表現は、利用者さんを決めつける印象になりやすいため注意が必要です。代わりに、発言、動作、表情、介助内容、対応結果を具体的に書くようにしましょう。
また、体調変化や事故につながる場面では、自己判断で断定せず、看護師や上司に報告し、職場のルールに沿って記録することが大切です。
この記事のまとめ
・介護記録で書いてはいけないのは、主観や決めつけが強い表現
・「わがまま」「暴れた」「ひどい」などは、具体的な言動に書き換える
・医療的な判断は介護職だけで断定せず、看護師や上司へ確認する
・排泄や入浴などの記録は、利用者さんの尊厳に配慮して書く
・事故や体調変化は、時間・状況・対応・報告先を残す
・新人は完璧な文章よりも、事実を正確に残すことを意識する
介護記録は、慣れるまで時間がかかります。最初から完璧に書こうとせず、職場のルールを確認しながら、少しずつ表現を覚えていけば大丈夫です。迷ったときは一人で判断せず、先輩や上司に確認しながら書くようにしましょう。


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