介護の仕事を始めたばかりの新人にとって、申し送りはとても緊張しやすい場面です。
「何を伝えればいいかわからない」「先輩の前でうまく話せない」「大事なことを言い忘れたらどうしよう」と不安になる人は少なくありません。介助そのものに慣れていない時期は、利用者さんの様子を観察するだけでも精一杯です。そのうえで、短い時間で正確に伝える申し送りまで求められると、緊張して当然です。
ただし、申し送りは話し上手になることが目的ではありません。大切なのは、次の職員が安全にケアを引き継げる情報を、落ち着いて伝えることです。
この記事では、介護の申し送りで緊張する新人に向けて、伝える内容の整理方法、落ち着いて話すコツ、言い忘れや伝達ミスを防ぐポイントを解説します。
この記事でわかること
・介護の申し送りで新人が緊張しやすい理由
・申し送りで最低限伝えたい内容
・話す前に情報を整理するコツ
・緊張しても落ち着いて伝える方法
・申し送りの失敗を防ぐ確認ポイント
・新人が無理なく慣れていくための考え方
介護の申し送りで新人が緊張するのは自然なこと
申し送りは「人前で話す場面」だから緊張しやすい
介護の申し送りは、利用者さんの状態や注意点を次の勤務者へ伝える大切な業務です。内容が大事だからこそ、新人は「間違えたらどうしよう」と緊張しやすくなります。
特に入職して間もない時期は、先輩職員やリーダー、看護師が近くにいるだけでプレッシャーを感じることがあります。普段の会話なら話せるのに、申し送りになると急に言葉が出てこなくなる人もいます。
これは能力がないからではありません。慣れていない業務を、人前で、正確に伝えようとしているから緊張するのです。
介護現場では、申し送りの内容によってその後のケアが変わることもあります。食事量、排泄状況、転倒リスク、体調変化、皮膚状態、服薬後の様子など、伝えるべき情報は多くあります。新人が「全部覚えなきゃ」と焦るのは無理もありません。
何をどこまで話せばいいか迷いやすい
新人が申し送りで緊張する大きな理由の一つは、情報の優先順位がまだわからないことです。
利用者さんの様子を見ていても、「これは申し送るべきことなのか」「ただの普段通りなのか」の判断に迷うことがあります。たとえば、食事を少し残した、トイレの回数がいつもより少ない、表情が暗かった、歩行がふらついていたなど、どの程度まで伝えるべきか悩みやすいです。
また、介護記録には書いたけれど、口頭でも伝えるべきなのか迷うこともあります。申し送りと記録は役割が違うため、重要な変化や注意点は記録だけでなく口頭でも共有した方がよい場合があります。
ただし、何でも長く話せばよいわけではありません。忙しい現場では、次の職員がすぐに動ける情報を簡潔に伝える必要があります。この「簡潔に、でも大事なことは漏らさない」というバランスが、新人には難しく感じられます。
先輩の申し送りと比べて落ち込まなくていい
先輩職員の申し送りを聞いていると、短い言葉で必要な情報をまとめていて、とてもスムーズに感じることがあります。その姿を見ると、「自分は全然できていない」と落ち込んでしまう新人もいます。
しかし、先輩も最初からうまく申し送りができていたわけではありません。利用者さんの普段の様子、職場のルール、よく使う言い回し、注意すべきポイントを少しずつ覚えてきた結果、自然に話せるようになっています。
新人のうちは、先輩のように完璧に伝えようとしなくて大丈夫です。まずは、事実を落とさず、わからないことは確認しながら伝えることを意識しましょう。
新人の申し送りで大切な考え方
うまく話すことよりも、必要な情報を正しく引き継ぐことが大切です。
緊張して言葉に詰まっても、事実を確認しながら伝えられれば問題ありません。
申し送りで伝える内容は「変化」と「注意点」から考える
普段と違う様子は優先して伝える
介護の申し送りでは、すべての出来事を細かく話す必要はありません。まず意識したいのは、普段と違う様子があったかどうかです。
たとえば、いつも完食する利用者さんが食事を半分以上残した場合は、次の勤務者が体調変化に注意する必要があります。普段は穏やかな方が強い不安を訴えていた場合も、夜間や次の時間帯の対応に関わる可能性があります。
申し送りで優先したい「変化」には、以下のようなものがあります。
・食事量や水分量の変化
・排泄回数や便の状態の変化
・歩行や立ち上がりのふらつき
・転倒、転落、ヒヤリハットにつながる出来事
・発熱、痛み、息苦しさ、強い眠気などの体調変化
・表情、発言、落ち着きのなさなど精神面の変化
・皮膚の赤み、傷、内出血、腫れなどの変化
新人のうちは、「これは大したことではないかも」と自己判断で省略してしまうことがあります。しかし、利用者さんによっては小さな変化が大事なサインになる場合もあります。判断に迷うときは、申し送り前に先輩や看護師へ確認しましょう。
次の職員が困らない情報を伝える
申し送りは、自分が見たことを報告するだけでなく、次の職員が安全にケアを続けられるようにするためのものです。そのため、「次に入る人が何を知っておくと助かるか」を考えると、伝える内容を整理しやすくなります。
たとえば、入浴介助で皮膚の赤みを見つけた場合、「赤みがありました」だけでなく、場所や大きさ、痛みの有無、看護師に報告済みかどうかまで伝えると、次の職員が対応しやすくなります。
排泄介助で便汚染があった場合も、単に「汚染がありました」ではなく、便の状態、皮膚トラブルの有無、衣類交換や清拭を行ったかなどを伝えると、次のケアにつながります。
| 場面 | 申し送りで伝えたいこと |
|---|---|
| 食事 | 食事量、水分量、むせ込み、食欲の変化 |
| 排泄 | 排尿・排便の有無、便の状態、失禁、皮膚状態 |
| 移動 | ふらつき、転倒リスク、介助量の変化 |
| 入浴 | 皮膚トラブル、痛みの訴え、体調変化 |
| 認知症対応 | 不穏、帰宅願望、介助拒否、落ち着いた対応方法 |
| 医療面 | 発熱、痛み、服薬後の様子、看護師への報告状況 |
このように、場面ごとに見るポイントを決めておくと、申し送りで何を話せばよいか迷いにくくなります。
「対応済みかどうか」まで伝えると安心されやすい
申し送りでは、出来事だけでなく、その後にどのように対応したかも大切です。
たとえば、「Aさんが昼食後に腹痛を訴えました」と伝えるだけだと、次の職員は「その後どうなったのか」「看護師には伝えたのか」と不安になります。
この場合は、次のように伝えるとわかりやすくなります。
「Aさんが昼食後に腹痛を訴えました。看護師に報告し、バイタル測定済みです。その後は居室で休まれ、今のところ強い訴えはありません」
このように、何が起きたか、誰に報告したか、今どうなっているかをセットで伝えると、申し送りの質が上がります。
申し送りで意識したい流れ
- 何があったか
- いつ起きたか
- どのように対応したか
- 誰に報告したか
- 次の勤務者に何を見てほしいか
この流れを覚えておくと、緊張しても話の順番が崩れにくくなります。
緊張しても伝えやすくなる申し送り前の準備
メモは「文章」ではなく「キーワード」で残す
申し送りで緊張する新人ほど、事前にメモを取ることが大切です。ただし、長い文章でメモを残そうとすると、勤務中に書く時間がなくなったり、申し送り時にどこを見ればよいかわからなくなったりします。
おすすめは、短いキーワードで残す方法です。
たとえば、以下のように簡単で構いません。
・Aさん 昼食5割 水分少なめ
・Bさん トイレ時ふらつき 右足出にくい
・Cさん 入浴時左臀部赤み 看護師報告済み
・Dさん 夕方帰宅願望あり 散歩で落ち着く
このように書いておくと、申し送りのときに内容を思い出しやすくなります。完璧な文章にしようとせず、あとで自分が見て思い出せるメモを作ることが大切です。
介護記録に残す内容とは別に、申し送り用の簡単なメモを持っておくと安心できます。ただし、個人情報の取り扱いには注意が必要です。メモの保管方法や廃棄方法は職場のルールに従いましょう。
話す順番を固定すると焦りにくい
申し送りで言葉が詰まりやすい人は、話す順番をある程度決めておくと落ち着きやすくなります。
毎回ゼロから考えると緊張しますが、型を持っておくと安心です。
たとえば、次の順番で考えると伝えやすくなります。
| 順番 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 1 | 利用者名 | 「Aさんについてです」 |
| 2 | 起きたこと | 「昼食後に腹痛の訴えがありました」 |
| 3 | 状態 | 「顔色は普段と大きく変わりませんでした」 |
| 4 | 対応 | 「看護師へ報告し、バイタル測定済みです」 |
| 5 | 引き継ぎ | 「夕食時の食欲と腹痛の訴えを見てください」 |
このように順番があると、緊張しても「次は対応を話す」「最後にお願いを伝える」と考えやすくなります。
申し送りの基本形
「〇〇さんについてです。
〇時ごろに□□がありました。
△△の対応をしています。
現在は□□の状態です。
次の時間帯で〇〇を確認お願いします。」
この型をそのまま使う必要はありませんが、新人のうちは型に頼って問題ありません。慣れてくると、自然に職場に合った言い方ができるようになります。
不安な内容は申し送り前に確認しておく
申し送りで緊張する原因の一つに、「この内容で合っているのかわからない」という不安があります。曖昧なまま話そうとすると、自信がなくなり、声も小さくなりやすいです。
迷う内容がある場合は、申し送りの直前に先輩へ確認しておきましょう。
たとえば、次のように聞けば大丈夫です。
・「Aさんのふらつきは申し送りで伝えた方がいいですか?」
・「この皮膚の赤みは看護師さんにも報告した方がいいですか?」
・「Bさんの食事量が少なかったのですが、どのように伝えるといいですか?」
・「この内容は記録だけでなく口頭でも共有した方がいいですか?」
確認することは恥ずかしいことではありません。むしろ、介護現場では自己判断で済ませるより、確認する姿勢の方が大切です。
特に体調変化、転倒リスク、痛みの訴え、皮膚トラブル、服薬後の異変などは、介護職だけで判断せず、上司や看護師、専門職に相談することが必要です。
確認してから伝えたい内容
□ 転倒や転落につながりそうな出来事
□ 発熱、痛み、息苦しさなどの体調変化
□ 食事量や水分量の大きな低下
□ 皮膚の赤み、傷、腫れ、内出血
□ 介助拒否や強い不穏が続いた場面
□ 服薬後の眠気や様子の変化
新人のうちは、「これは報告していいのかな」と迷う場面が多いものです。迷ったら確認する、という姿勢を持っておくと失敗を防ぎやすくなります。
申し送りで落ち着いて話すためのコツ
最初に「要点から話す」と聞く側も理解しやすい
緊張していると、出来事を最初から順番に全部話そうとしてしまうことがあります。しかし、話が長くなるほど自分でも何を伝えたいのかわからなくなり、聞く側も要点をつかみにくくなります。
申し送りでは、まず要点を伝えることを意識しましょう。
たとえば、次のような言い方です。
「Aさん、昼食量がいつもより少なかったです」
「Bさん、トイレ誘導時にふらつきがありました」
「Cさん、入浴時に左足に赤みがありました」
最初に要点を言うと、その後に詳しい説明を足しやすくなります。
悪い申し送りというより、新人がやりがちな伝え方としては、次のようなものがあります。
「えっと、昼食のときなんですけど、いつもはけっこう食べられるんですが、今日は少し様子が違っていて、声かけはしたんですけど……」
このように話し始めると、聞く側は「誰の何の話なのか」がすぐにわかりません。
一方で、次のように話すと伝わりやすくなります。
「Aさん、昼食が5割程度でした。いつもより少なめです。声かけしましたが、『いらない』と話されました。水分も少なめなので、午後も様子を見てください」
要点、状況、対応、お願いの順に話すと、短くても必要な情報が伝わります。
早口にならず、区切って話す
緊張すると早口になりやすいです。早く終わらせたい気持ちが出て、言葉が詰まったり、聞き返されたりすることもあります。
申し送りでは、ゆっくり完璧に話す必要はありませんが、一文ごとに少し区切るだけで伝わりやすくなります。
たとえば、以下のように区切ると落ち着いて聞こえます。
「Aさんについてです。
昼食は5割ほどでした。
水分も少なめです。
午後も食欲と水分摂取量の確認をお願いします。」
一気に話そうとしなくて大丈夫です。メモを見ながら、一つずつ伝えれば問題ありません。
また、聞き返されたときに慌てる必要もありません。聞き返されるのは、責められているとは限りません。次の勤務者が正しく理解するために確認しているだけの場合も多いです。
「すみません、確認します」
「記録を見ながらもう一度お伝えします」
「時間は14時ごろです」
このように落ち着いて答えれば大丈夫です。
わからないことは「わかりません」で止めず確認する
申し送り中に質問されて、答えられないこともあります。新人のうちは、利用者さんの普段の状態や詳しい経過まで把握できていないことがあります。
そのときに大切なのは、適当に答えないことです。
わからない場合は、次のように伝えましょう。
・「すみません、そこまでは確認できていません」
・「記録を確認します」
・「先輩に確認してからお伝えします」
・「看護師さんへ確認します」
介護では、曖昧な情報をそのまま伝えると、ケアの判断に影響することがあります。自信がない内容を推測で言うより、確認してから伝える方が安全です。
言い切らない方がよい場面
・見ていない出来事を人から聞いただけで話すとき
・体調変化の原因を自分で判断しそうなとき
・痛みや症状について医療的な判断が必要なとき
・記録と記憶が曖昧なとき
・対応済みかどうか自信がないとき
新人が申し送りで信頼されるために大切なのは、何でも答えられることではありません。わからないことを曖昧にせず、確認する姿勢を持つことです。
申し送りの失敗を防ぐために新人が気をつけたいこと
「言ったつもり」を防ぐために重要事項を優先する
申し送りで起こりやすい失敗の一つが、「伝えたつもりだったけれど、相手に伝わっていなかった」というケースです。
これは新人だけでなく、忙しい介護現場では誰にでも起こり得ます。特に申し送りの時間が短い職場では、情報が多すぎると大事な内容が埋もれてしまうことがあります。
そのため、申し送りでは重要度の高い内容を先に伝えることが大切です。
優先度が高いのは、次のような内容です。
・転倒、転落、事故、ヒヤリハットに関すること
・体調不良やバイタルの変化
・食事や水分が大きく低下していること
・排泄が長時間ない、便秘や下痢が続いていること
・皮膚トラブルや痛みの訴え
・介助方法の変更が必要なこと
・家族、看護師、ケアマネなどへの連絡事項
これらは、次の勤務者の判断や対応に直結しやすい情報です。先に伝えておくと、言い忘れを防ぎやすくなります。
感想ではなく「事実」を中心に伝える
申し送りでは、自分の感想よりも事実を中心に伝えることが大切です。
たとえば、「Aさんがなんとなく元気なかったです」だけでは、次の職員が具体的にどう注意すればよいかわかりません。
この場合は、次のように具体的に伝えるとよいです。
「Aさん、午前中から発語が少なく、昼食も3割程度でした。声かけには返答ありますが、普段より反応がゆっくりです」
このように、見たこと、聞いたこと、数値、時間、対応内容を入れると伝わりやすくなります。
| 避けたい伝え方 | 伝わりやすい伝え方 |
|---|---|
| なんか元気がないです | 発語が少なく、食事量が3割でした |
| ちょっと危なかったです | トイレ立ち上がり時にふらつきがありました |
| すごく怒っていました | 更衣介助時に拒否があり、大きな声で「やめて」と話されました |
| 皮膚が変でした | 左臀部に赤みがあり、痛みの訴えはありません |
| あまり食べていません | 主食2割、副食3割、水分100ml程度でした |
介護の申し送りでは、事実を具体的に伝えることで、聞く側が状況を判断しやすくなります。新人のうちは、上手な表現を探すより、見たままを具体的に伝えることを意識しましょう。
個人情報や言葉遣いにも注意する
申し送りでは、利用者さんの身体状況や生活の様子、家族に関する情報を扱います。そのため、個人情報への配慮も必要です。
職員同士の共有であっても、周囲に他の利用者さんや面会者がいる場所で大きな声で話すのは避けた方がよい場合があります。申し送りの場所や声の大きさは、職場のルールに合わせて注意しましょう。
また、利用者さんを傷つけるような表現や、決めつけた言い方にも気をつけたいところです。
たとえば、「わがままです」「面倒です」「また怒っていました」といった表現は、申し送りとして適切とはいえません。現場で大変な対応があったとしても、申し送りでは感情的な言葉ではなく、状況を客観的に伝えることが大切です。
「介助拒否がありました」
「大きな声で拒否されました」
「声かけを変えると落ち着かれました」
「時間を空けて再度対応しています」
このように伝えると、利用者さんの尊厳を守りながら、必要な情報を共有できます。
申し送り前の確認チェック
□ 利用者名は間違っていないか
□ 時間や場面は伝えられるか
□ 事実と自分の感想が混ざっていないか
□ 対応済みか、未対応かを伝えられるか
□ 看護師や上司へ報告済みか確認したか
□ 次の勤務者に見てほしいことが明確か
□ 個人情報に配慮した場所と声量になっているか
このチェックを習慣にすると、申し送りの失敗を減らしやすくなります。
新人が申し送りに慣れるための練習方法
先輩の言い回しをそのまま真似して覚える
申し送りが苦手な新人は、最初から自分の言葉で完璧に話そうとしなくて大丈夫です。まずは、先輩がよく使う言い回しを真似することから始めましょう。
介護現場では、申し送りで使いやすい表現があります。
・「〇時ごろ、□□がありました」
・「現在は落ち着かれています」
・「看護師へ報告済みです」
・「次の時間帯で様子観察をお願いします」
・「食事量が普段より少なめです」
・「立ち上がり時にふらつきがありました」
・「声かけで落ち着かれました」
こうした表現を覚えると、申し送りの言葉選びに迷いにくくなります。
先輩の申し送りを聞くときは、内容だけでなく「どの順番で話しているか」「どんな言葉で短くまとめているか」に注目してみましょう。自分に合う言い回しをメモしておくのもおすすめです。
1人分ずつ短くまとめる練習をする
申し送りが長くなってしまう人は、1人の利用者さんにつき、短くまとめる練習をするとよいです。
たとえば、勤務中に気になった利用者さんについて、次の3点で整理します。
・何があったか
・どう対応したか
・次に何を見てほしいか
この3点だけでも、申し送りの基本は押さえられます。
例としては、次のようになります。
「Aさん、昼食が5割ほどで水分も少なめでした。声かけしましたが進まず、看護師へ報告済みです。午後も食欲と水分量の確認をお願いします」
「Bさん、トイレ誘導時に立ち上がりでふらつきがありました。転倒はありません。次回誘導時も近くで見守りをお願いします」
「Cさん、更衣介助時に拒否がありました。時間を空けて声かけすると着替えられました。急かすと不穏になりやすい様子です」
このように、短くても必要な情報が入っていれば十分です。長く話すより、次の人が動きやすい申し送りを目指しましょう。
申し送り後に振り返ると上達しやすい
申し送りは、経験を重ねるほど慣れていきます。ただし、ただ回数をこなすだけでなく、終わった後に少し振り返ると上達しやすくなります。
たとえば、次のように振り返ってみましょう。
・言い忘れたことはなかったか
・話が長くなりすぎなかったか
・先輩に聞き返された内容は何だったか
・次回はどの順番で話すとよさそうか
・メモの取り方はわかりやすかったか
聞き返されたことがあっても、落ち込む必要はありません。聞き返された部分こそ、次から具体的に伝えればよいポイントです。
もし可能であれば、申し送り後に先輩へ短く確認してみるのもよいです。
「今の申し送りで足りないところはありましたか?」
「次からどこを意識するといいですか?」
「この内容は口頭で伝えるべきでしたか?」
こうした質問ができると、職場ごとの申し送りの基準を覚えやすくなります。
慣れるための小さな目標
最初から完璧を目指す必要はありません。
まずは「1人分を落ち着いて伝える」「重要な変化を言い忘れない」「迷ったら確認する」ことから始めましょう。
どうしても申し送りが怖いときの考え方
緊張の原因が「自分」ではなく「職場環境」の場合もある
申し送りがいつまでも強く怖い場合、自分の努力だけで解決しようとしすぎないことも大切です。
たとえば、次のような職場では、新人が申し送りに強い緊張を感じやすくなります。
・質問すると冷たい反応をされる
・申し送り中に強い口調で責められる
・新人に十分な説明がないまま独り立ちさせる
・記録や申し送りのルールが曖昧
・職員同士の連携が悪く、情報共有が不足している
・ミスを防ぐ仕組みより、個人を責める雰囲気が強い
このような環境では、どれだけ真面目に頑張っても緊張が強くなることがあります。介護職に向いていないのではなく、職場の教育体制や雰囲気が合っていない可能性もあります。
申し送りが苦手だからといって、すぐに介護職そのものを諦める必要はありません。職場が変わると、同じ介護の仕事でも働きやすさが大きく変わることがあります。
怒られるのが怖いときは「確認の言葉」を用意しておく
新人が申し送りで緊張する背景には、「先輩に怒られるのが怖い」という気持ちがある場合もあります。
もちろん、介護現場では安全に関わる指摘が必要な場面もあります。しかし、必要以上に責められる環境では、新人が萎縮してしまい、かえって報告や相談が遅れることもあります。
怒られるのが怖い人は、申し送りで使える確認の言葉を用意しておくと少し安心です。
・「確認不足があれば教えてください」
・「この内容も申し送りに入れた方がよいでしょうか」
・「記録には残していますが、口頭でも共有します」
・「判断に迷ったため、報告させていただきます」
・「次回から気をつける点を確認させてください」
こうした言葉を使うと、責められる前に自分から確認する姿勢を示しやすくなります。
ただし、強い叱責や人格を否定するような言葉が続く場合は、一人で抱え込まないでください。上司、教育担当、相談しやすい先輩、法人の相談窓口などに相談することも必要です。
無理に完璧を目指さず「安全に引き継ぐ」を目標にする
申し送りで大切なのは、きれいに話すことではありません。目的は、利用者さんの安全と生活を次の職員につなぐことです。
緊張しやすい人ほど、「噛まずに話さなきゃ」「先輩みたいにまとめなきゃ」と考えてしまいます。しかし、申し送りは発表会ではありません。
メモを見てもいいです。言い直してもいいです。わからないことを確認してもいいです。
大切なのは、次の3つです。
・大事な変化を伝える
・対応済みか未対応かを伝える
・次に見てほしいことを伝える
この3つができれば、申し送りとして大きく外れてはいません。
申し送りが怖い新人へ
緊張するのは、真剣に仕事をしようとしている証拠でもあります。
ただし、毎回強い不安でつらい場合は、やり方だけでなく職場のサポート体制も確認しましょう。
介護職は、確認しながら少しずつ覚えていけばよい仕事です。
まとめ
介護の申し送りで緊張する新人は少なくありません。特に入職して間もない時期は、利用者さんの状態を把握するだけでも大変です。そのうえで、先輩や他職種の前で正確に伝える必要があるため、不安になるのは自然なことです。
申し送りでは、話し方の上手さよりも、次の職員が安全にケアを引き継げる情報を伝えることが大切です。普段と違う変化、対応済みかどうか、次に見てほしいことを意識すると、緊張していても内容を整理しやすくなります。
新人のうちは、メモを見ながら話しても問題ありません。先輩の言い回しを真似したり、基本の型を使ったりしながら、少しずつ慣れていきましょう。
この記事のまとめ
・介護の申し送りで新人が緊張するのは自然なこと
・申し送りは上手に話すより、必要な情報を安全に引き継ぐことが大切
・普段と違う変化、対応内容、次に見てほしいことを中心に伝える
・緊張する人ほど、短いメモと話す順番を用意しておくと安心
・わからないことは自己判断せず、先輩や看護師に確認する
・強い不安が続く場合は、自分だけでなく職場環境も見直すことが大切
申し送りは、最初から完璧にできるものではありません。失敗しないように身構えすぎるより、確認しながら少しずつ慣れていく意識を持つことが大切です。
緊張しても、言葉に詰まっても、必要なことを伝えようとする姿勢は現場にとって大切な力です。焦らず、メモを使いながら、一つずつ申し送りに慣れていきましょう。


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