介護職でインシデントが多いと悩む人へ|原因と減らすための見直しポイントを解説

複数のインシデント場面を整理しながら見直す、明るい介護施設内の机上空間 4-4.事故・ヒヤリハット

介護職として働いていると、転倒しそうになった、服薬確認で迷った、利用者さんの状態変化に気づくのが遅れたなど、さまざまなインシデントに直面することがあります。

インシデントが続くと、「自分は介護職に向いていないのでは」「またミスをしたらどうしよう」「周りからできない人だと思われているかも」と落ち込んでしまう人も少なくありません。

しかし、インシデントが多いからといって、すぐに能力不足と決めつける必要はありません。大切なのは、起きたことを責める材料にするのではなく、次に同じことを起こさないための見直し材料にすることです。

この記事でわかること

・介護職でインシデントが多いと感じるときの考え方
・インシデントが起こりやすい場面
・確認不足だけではない本当の原因
・インシデントを減らすための見直しポイント
・報告や記録で気をつけたいこと
・落ち込みすぎず働き続けるための考え方

  1. 介護職でインシデントが多いと感じたときにまず知っておきたいこと
    1. インシデントは「事故になる前の気づき」でもある
    2. 「多い=向いていない」とは限らない
    3. 隠すより早く共有したほうが利用者さんを守れる
    4. 落ち込むより「次に何を変えるか」を考える
  2. インシデントが起こりやすい介護現場の場面
    1. 移乗・歩行・トイレ誘導は小さな油断が出やすい
    2. 食事介助や服薬は「確認の重なり」が大切になる
    3. 忙しい時間帯ほど確認が抜けやすい
    4. 新人や異動直後は利用者さんの特徴がわからず迷いやすい
  3. インシデントが多いときに見直したい原因
    1. 「確認不足」だけで片づけると改善しにくい
    2. 思い込みや慣れが危険につながることもある
    3. 業務量が多すぎると安全確認の余裕がなくなる
    4. 情報共有が弱いと同じ危険が繰り返される
  4. インシデントを減らすための具体的な見直しポイント
    1. 自分用の確認手順を決めておく
    2. 「急ぐ業務」と「急いではいけない場面」を分ける
    3. わからないまま介助に入らない
    4. 小さな違和感を記録や申し送りに残す
  5. インシデント報告で自分を守り、現場を良くする考え方
    1. 報告は怒られるためではなく再発防止のためにある
    2. 報告するときは「事実」と「推測」を分ける
    3. 報告書はきれいな文章より具体性が大切
    4. 同じインシデントが続くときは一人で抱え込まない
  6. インシデントが多い自分を責めすぎないための働き方
    1. 反省は必要でも人格否定までしない
    2. 苦手な場面を見える形にすると対策しやすい
    3. 職場の雰囲気が合わない場合もある
    4. 続けるか迷うときは「改善できる悩みか」を見る
  7. 介護職のインシデントを減らすには「責める」より「仕組みを変える」ことが大切
    1. 個人の注意力だけに頼らない
    2. 利用者さんの尊厳と安全を両方大切にする
    3. 不安が強いときは必ず相談する

介護職でインシデントが多いと感じたときにまず知っておきたいこと

インシデントは「事故になる前の気づき」でもある

介護現場でいうインシデントとは、簡単にいえば事故につながる可能性があった出来事のことです。

たとえば、利用者さんが立ち上がろうとして転倒しそうになった、薬を渡す前に違う利用者さんのものだと気づいた、車いすのブレーキをかけ忘れそうになったなどが挙げられます。

実際に大きな事故にならなかったとしても、介護現場では「危なかった出来事」として共有することが大切です。なぜなら、同じような場面が続けば、次は転倒、誤薬、誤嚥、けがなどにつながる可能性があるからです。

つまり、インシデントは単なる失敗ではありません。事故を防ぐために現場が気づけたサインでもあります。

「多い=向いていない」とは限らない

インシデントが多いと、自分だけがミスをしているように感じることがあります。

特に新人や転職直後の介護職は、業務の流れ、利用者さんの特徴、職場ごとのルールを同時に覚えなければなりません。そのため、確認に時間がかかったり、判断に迷ったり、周囲の動きについていけないと感じたりしやすいです。

また、インシデントが多く見える職場には、報告しやすい雰囲気がある場合もあります。反対に、報告しづらい職場では、表面上は少なく見えても、実際には小さな危険が共有されていないこともあります。

大切なのは、件数だけで自分を責めることではありません。どの場面で、どのような流れで起きているのかを見直すことです。

隠すより早く共有したほうが利用者さんを守れる

インシデントが起きたときに一番避けたいのは、怒られるのが怖くて報告を遅らせることです。

介護現場では、少しの変化が後から大きな問題につながることがあります。たとえば、転倒しそうになっただけに見えても、その後に痛みやふらつきが出ることもあります。食事中のむせ込みも、状態によっては看護師や上司への相談が必要です。

自分で「大丈夫だろう」と判断せず、早めに共有することが重要です。

最初に意識したいこと

インシデントは、隠すものではなく共有するものです。
早く報告するほど、利用者さんの安全を守りやすくなります。
自分だけで判断せず、上司・看護師・先輩職員に確認しましょう。

落ち込むより「次に何を変えるか」を考える

インシデントが続くと、反省ばかりになってしまうことがあります。

もちろん、起きたことを軽く考えてよいわけではありません。利用者さんの安全に関わる以上、真剣に振り返る必要があります。

ただし、反省だけで終わると、次の行動が変わりません。

「なぜ起きたのか」
「どの確認が抜けたのか」
「どのタイミングで声をかければよかったのか」
「自分だけで対応しようとしていなかったか」

このように、行動に落とし込んで考えることが大切です。落ち込む時間を、次の安全につながる見直しに変えることが、介護職として成長するうえで大事な視点です。

インシデントが起こりやすい介護現場の場面

移乗・歩行・トイレ誘導は小さな油断が出やすい

介護職のインシデントで多いのが、移乗や歩行、トイレ誘導に関する場面です。

ベッドから車いすへ移るとき、車いすからトイレへ立ち上がるとき、歩行器で移動するときなどは、利用者さんの身体状況やその日の体調によって危険度が変わります。

昨日は安定していた人でも、今日は眠気が強い、足が出にくい、ふらつきがあるということもあります。

特に注意したいのは、次のような場面です。

・車いすのブレーキ確認が不十分
・フットレストを上げ忘れる
・立ち上がり前の声かけが短い
・利用者さんの足の位置を見ていない
・「いつもできるから」と見守りを減らす
・急いでいて介助姿勢が崩れる

移乗や歩行は、慣れてくるほど流れ作業になりやすい業務です。だからこそ、毎回同じように見えても、その日の状態を見る意識が必要です。

食事介助や服薬は「確認の重なり」が大切になる

食事介助や服薬に関するインシデントも、介護現場では注意が必要です。

食事では、むせ込み、食べるペース、姿勢、飲み込みの状態、食事形態の違いなどを確認します。利用者さんによっては、刻み食、ミキサー食、とろみ付き飲料など、細かな違いがあります。

服薬では、薬の内容そのものは看護師や薬剤師など専門職の管理が関わることが多いですが、介護職が配薬や服薬確認に関わる職場もあります。その場合は、施設のルールに沿って慎重に対応する必要があります。

自己判断で「たぶんこの人の薬だろう」と進めるのは危険です。

場面起こりやすいインシデント見直したいポイント
食事介助むせ込み、誤嚥リスク、食事形態の間違い姿勢・食形態・ペースを確認する
水分提供とろみ忘れ、量の記録漏れ指示内容と記録方法を確認する
服薬介助利用者間違い、飲み忘れ、確認漏れ名前・時間・方法を職場ルール通り確認する
配膳禁止食や形態違い食札や指示書を見てから配る

食事や服薬に不安がある場合は、必ず上司や看護師に確認しましょう。特に、むせ込みが強い、飲み込みに違和感がある、薬を飲めていない可能性がある場合は、自己判断で済ませないことが大切です。

忙しい時間帯ほど確認が抜けやすい

インシデントが起こりやすいのは、職員が忙しくなる時間帯です。

たとえば、起床介助、朝食前後、入浴介助、昼食前後、夕方の排泄介助、就寝介助などは、複数の業務が重なります。

このような時間帯は、ナースコール対応、トイレ誘導、食事準備、記録、申し送りなどが同時に発生しやすく、気持ちが焦りやすくなります。

焦っていると、普段なら気づけることを見落とすことがあります。

・ブレーキ確認を後回しにする
・声かけが短くなる
・利用者さんの表情を見ないまま介助する
・記録を後で書こうとして忘れる
・他の職員に伝えたつもりになる

忙しい時間帯ほど、完璧に急ぐよりも、止まって確認するポイントを決めておくことが大切です。

新人や異動直後は利用者さんの特徴がわからず迷いやすい

新人や異動直後の介護職は、インシデントが起こりやすい状態にあります。

それは、本人の意識が低いからではなく、まだ利用者さん一人ひとりの特徴を十分に把握できていないからです。

介護は、同じ「トイレ誘導」でも利用者さんによって注意点が変わります。

ある人は立ち上がりが不安定、ある人は声かけが急だと怒りやすい、ある人は歩き始めは安定していても方向転換でふらつきやすいなど、細かな違いがあります。

そのため、新人のうちは「この人はどこが危ないのか」を覚えるだけでも時間がかかります。

新人が意識したい見方

「この業務を早く終わらせる」よりも、
「この利用者さんは何に注意が必要か」を確認することが大切です。
わからないまま介助に入るより、短くても先輩に確認してから動きましょう。

インシデントが多いときに見直したい原因

「確認不足」だけで片づけると改善しにくい

インシデントが起きたとき、よく原因として挙がるのが「確認不足」です。

もちろん、確認不足は大きな原因の一つです。しかし、毎回「確認不足でした」で終わってしまうと、具体的な改善につながりにくくなります。

大切なのは、どの確認が、なぜ抜けたのかを考えることです。

たとえば、車いすのブレーキ確認が抜けた場合でも、原因はいくつか考えられます。

・急いでいた
・他の利用者さんに呼ばれて焦った
・確認する順番が自分の中で決まっていなかった
・先輩の動きを見て真似したが意味を理解していなかった
・利用者さんが先に立ち上がろうとして慌てた

同じ確認不足でも、背景によって対策は変わります。

「次から気をつけます」だけではなく、次から何を、どのタイミングで確認するのかまで決めることが大切です。

思い込みや慣れが危険につながることもある

介護職として少し慣れてくると、利用者さんの動きや業務の流れを予測できるようになります。

これは仕事に慣れてきた証拠でもありますが、一方で思い込みにつながることもあります。

「この人は一人で立てる」
「いつもこの食事形態だから大丈夫」
「前回も問題なかった」
「この時間はいつも落ち着いている」

このような思い込みがあると、その日の変化に気づきにくくなります。

高齢の利用者さんは、体調や睡眠、薬の影響、気分、環境の変化によって状態が変わることがあります。昨日できたことが今日も同じようにできるとは限りません。

慣れてきたときほど、基本確認に戻ることが大切です。

業務量が多すぎると安全確認の余裕がなくなる

インシデントが多い原因は、個人だけにあるとは限りません。

人手不足、業務量の多さ、休憩が取れない状況、記録の負担、職員間の連携不足など、職場環境が影響していることもあります。

たとえば、常に時間に追われている職場では、確認や声かけが短くなりやすいです。職員同士がピリピリしていると、わからないことを質問しにくくなります。

その結果、迷ったまま動いてしまい、インシデントにつながることがあります。

注意したい視点

インシデントをすべて「自分のせい」と考えすぎると、根本的な改善が見えなくなります。
自分の行動を振り返ることは大切ですが、業務量や職場の仕組みも一緒に見直す必要があります。

情報共有が弱いと同じ危険が繰り返される

介護現場では、情報共有がとても重要です。

利用者さんの状態変化、転倒リスク、食事量の変化、排泄状況、夜間の様子、家族からの要望など、共有すべき情報は多くあります。

しかし、申し送りが短すぎたり、記録が曖昧だったり、職員によって情報の受け取り方が違ったりすると、同じようなインシデントが繰り返されやすくなります。

たとえば、「最近ふらつきあり」とだけ書かれていても、いつ、どの場面で、どの程度ふらついたのかがわからなければ、次の職員が注意しにくくなります。

情報共有では、感想よりも具体的な事実が大切です。

インシデントを減らすための具体的な見直しポイント

自分用の確認手順を決めておく

インシデントを減らすには、毎回その場の気合いで確認するのではなく、自分の中で確認手順を決めておくことが効果的です。

たとえば、移乗介助なら次のような流れです。

・利用者さんの表情と覚醒状態を見る
・足の位置を確認する
・車いすのブレーキを確認する
・フットレストを上げる
・立ち上がる前に声をかける
・立位が安定してから動く

このように順番を決めておくと、忙しいときでも確認漏れを減らしやすくなります。

特に新人のうちは、頭の中だけで覚えようとすると抜けやすいため、メモにしておくのも有効です。職場で使えるチェック表がある場合は、それに沿って確認しましょう。

「急ぐ業務」と「急いではいけない場面」を分ける

介護職は時間に追われやすい仕事です。

食事、排泄、入浴、記録、申し送りなど、決まった時間内に終わらせなければならない業務が多くあります。そのため、どうしても「早くしなければ」と焦りやすくなります。

ただし、すべてを急いでよいわけではありません。

特に、移乗、歩行、食事介助、服薬確認、入浴時の立ち座りなどは、急ぐほど危険が増える場面です。

場面急ぎすぎると起こりやすいこと意識したいこと
移乗介助ふらつき、転倒リスク立位の安定を確認してから動く
食事介助むせ込み、飲み込み確認漏れペースと姿勢を見る
服薬確認利用者・時間・薬の確認漏れ職場ルール通りに確認する
入浴介助滑り、立ち上がり時の転倒足元と手すりの位置を見る
夜間対応眠気や焦りによる見落とし一つずつ確認して動く

早く動くことより、安全に進めることが必要な場面もあります。焦りそうなときほど、心の中で「ここは急がない」と区切る意識が大切です。

わからないまま介助に入らない

インシデントを減らすうえで大切なのが、わからないまま介助に入らないことです。

新人や経験が浅い介護職は、忙しい先輩に質問するのを遠慮してしまうことがあります。

「こんなことを聞いたら迷惑かな」
「前にも聞いたのにまた聞きづらい」
「自分で判断しないといけないのかな」

このように感じる人もいるでしょう。

しかし、介護現場では、わからないまま動くほうが危険です。特に、移乗方法、食事形態、服薬、医療的な注意点、認知症の方への対応などは、自己判断で進めないほうがよい場面が多くあります。

確認してよいこと

・この利用者さんは一人介助でよいか
・立ち上がり時に注意することはあるか
・食事形態やとろみの指示は合っているか
・服薬確認の手順はこれでよいか
・転倒リスクが高い時間帯はあるか
・声かけで避けたほうがよい言葉はあるか

質問することは、未熟さの証明ではありません。安全に介助するための確認です。

小さな違和感を記録や申し送りに残す

インシデントを減らすには、「事故になったこと」だけでなく「危なかったこと」や「いつもと違ったこと」を共有することが大切です。

たとえば、次のような違和感です。

・今日は立ち上がりに時間がかかった
・いつもより眠そうだった
・食事中にむせ込みが増えた
・トイレ後に足が出にくそうだった
・何度も同じ方向へ歩こうとしていた
・表情が険しく、介助拒否があった

こうした情報が共有されると、次の職員が注意しやすくなります。

ただし、記録には感情的な表現ではなく、できるだけ事実を書くことが大切です。

「危なかった」だけではなく、「何時ごろ、どこで、何をしたとき、どのような様子だったか」を残すと、再発防止につながりやすくなります。

インシデント報告で自分を守り、現場を良くする考え方

報告は怒られるためではなく再発防止のためにある

インシデント報告と聞くと、反省文のように感じてしまう人もいます。

しかし、本来の目的は、誰かを責めることではなく、同じ危険を繰り返さないために原因を共有することです。

もちろん、職場によっては報告時に厳しく言われることもあるかもしれません。利用者さんの安全に関わるため、真剣な指導になることもあります。

ただ、それでも報告を避けるのは危険です。報告しないままにすると、利用者さんの状態変化に気づくのが遅れたり、同じ場面で他の職員も危険に直面したりする可能性があります。

報告は自分を責めるためではなく、利用者さんと職員の両方を守るための仕組みとして考えましょう。

報告するときは「事実」と「推測」を分ける

インシデントを報告するときは、事実と推測を分けることが大切です。

たとえば、利用者さんが立ち上がろうとしてふらついた場合、次のように整理すると伝わりやすくなります。

・いつ起きたか
・どこで起きたか
・誰が関わっていたか
・何をしていたときか
・利用者さんはどのような状態だったか
・職員はどう対応したか
・その後の様子はどうだったか

一方で、「たぶん大丈夫だと思います」「いつもこうなので問題ないと思います」といった自己判断だけで終わらせるのは避けたほうがよいです。

転倒、打撲、痛み、出血、意識状態の変化、むせ込み、服薬に関することなどは、必要に応じて看護師や上司に確認しましょう。

報告書はきれいな文章より具体性が大切

インシデント報告書を書くとき、文章の上手さを気にしすぎる人もいます。

しかし、報告書で大切なのは、きれいな表現よりも具体性です。

悪い書き方の例としては、次のようなものがあります。

・「不注意で危なかった」
・「いつも通り対応した」
・「少しふらついた」
・「特に問題なし」

これだけでは、状況が伝わりにくくなります。

改善するなら、次のように書くと具体的になります。

・「10時15分ごろ、居室内でベッドから車いすへ移乗する際、立ち上がり直後に右側へふらつきが見られた」
・「職員が腰部を支え、転倒はなかった。その後、本人に痛みの訴えはなかったが、看護師へ報告した」
・「車いすのブレーキは確認済み。立位保持が普段より不安定に感じたため、次回以降は二人介助を検討する」

職場ごとに書式やルールは違います。迷った場合は、上司やリーダーに確認しながら書きましょう。

同じインシデントが続くときは一人で抱え込まない

同じようなインシデントが続くときは、自分だけで何とかしようとしないことが大切です。

たとえば、同じ利用者さんの転倒リスクが何度も出ている場合、介護職一人の注意だけでは限界があります。

環境調整、福祉用具の見直し、介助方法の統一、見守り位置の変更、排泄リズムの確認、看護師やリハビリ職との連携など、チームで考える必要があります。

一人で抱え込まないための相談例

「同じ場面でふらつきが続いているので、介助方法を確認したいです」
「この利用者さんのトイレ誘導のタイミングを見直したほうがよいでしょうか」
「自分の対応で足りない点があれば教えてください」
「次から同じことを防ぐために、手順を一緒に確認してもらえますか」

相談の仕方を工夫すると、ただ落ち込むだけでなく、次の行動につなげやすくなります。

インシデントが多い自分を責めすぎないための働き方

反省は必要でも人格否定までしない

インシデントが起きたとき、反省することは大切です。

ただし、「自分はダメだ」「介護職に向いていない」「迷惑ばかりかけている」と考えすぎると、次の勤務が怖くなってしまいます。

介護職は、人の生活と安全に関わる仕事です。そのため、緊張感があるのは自然なことです。

大切なのは、自分を責め続けることではなく、行動を見直すことです。

・確認手順を決める
・苦手な介助を先輩に見てもらう
・記録や申し送りの書き方を確認する
・不安な利用者さんの注意点をメモする
・忙しい時間帯の動き方を相談する

このように、具体的な改善に変えていくことが大切です。

苦手な場面を見える形にすると対策しやすい

インシデントが多いと感じるときは、自分がどの場面でつまずきやすいのかを整理してみましょう。

漠然と「ミスが多い」と考えるより、場面ごとに分けると対策しやすくなります。

見直しチェックリスト

□ 移乗介助で焦りやすい
□ トイレ誘導中に見守り位置が不安定になる
□ 食事介助でペースが早くなりやすい
□ 服薬確認に緊張する
□ 忙しい時間帯に記録を忘れやすい
□ 申し送りで伝える内容が抜けやすい
□ わからないことを質問するのが遅くなる
□ 利用者さんの状態変化に気づくのが苦手

チェックが多いから悪いわけではありません。むしろ、苦手な場面が見えると、具体的に相談しやすくなります。

「全部が苦手」と思うより、「移乗前の確認が抜けやすい」「夕方のトイレ誘導で焦りやすい」とわかったほうが、改善しやすくなります。

職場の雰囲気が合わない場合もある

インシデントが多いと悩んでいる人の中には、職場環境が合っていないケースもあります。

たとえば、次のような職場では、新人や経験の浅い人が不安を抱えやすくなります。

・質問すると強く責められる
・マニュアルや手順が曖昧
・職員によって言うことが違う
・忙しすぎて確認する時間がない
・報告すると怒られるだけで改善策がない
・同行期間がほとんどない
・夜勤や一人対応が早すぎる

介護職は、職場によって働きやすさが大きく変わります。

自分の努力で改善できる部分もありますが、教育体制や人員配置、職場の雰囲気は個人だけでは変えられないこともあります。

合わない職場で無理を続けると、心身の負担が大きくなり、さらにミスが増えることもあります。どうしてもつらい場合は、上司への相談、部署異動、転職も選択肢として考えてよいでしょう。

続けるか迷うときは「改善できる悩みか」を見る

インシデントが多くて辞めたいと感じるときは、すぐに自分を否定するのではなく、悩みの種類を分けて考えてみましょう。

悩みの内容見直し方
手順を覚えきれていないメモ、同行、確認回数を増やす
特定の介助が苦手先輩に見てもらい、体の使い方を確認する
報告が苦手伝える順番を決めて練習する
忙しさで焦る優先順位を上司に確認する
質問しづらい相談できる職員を決める
職場全体が責める雰囲気異動や転職も含めて考える

改善できる悩みであれば、時間をかけて慣れていける可能性があります。

一方で、相談しても改善されない、危険な業務を一人で任され続ける、精神的に限界を感じている場合は、無理を続けない判断も必要です。

介護職のインシデントを減らすには「責める」より「仕組みを変える」ことが大切

個人の注意力だけに頼らない

インシデントを減らすためには、個人の注意力だけに頼らないことが大切です。

「気をつける」
「次は注意する」
「もっと集中する」

これらも大切ですが、人は忙しいとき、疲れているとき、複数のことを同時に考えているときに確認が抜けやすくなります。

だからこそ、仕組みとして確認しやすくする必要があります。

・確認する順番を決める
・よく間違えることをメモにする
・申し送りで必ず伝える項目を決める
・食事形態や介助方法を見やすくする
・迷ったら誰に聞くか決めておく
・同じ危険が続く利用者さんはチームで対応を統一する

介護職のインシデントが多いときほど、根性論だけでなく、現場の仕組みを見直す視点が必要です。

利用者さんの尊厳と安全を両方大切にする

インシデントを防ごうとすると、つい「危ないから何でも止める」という対応になってしまうことがあります。

しかし、介護では利用者さんの安全だけでなく、尊厳や生活の自由も大切です。

たとえば、転倒リスクがあるからといって、本人の希望をすべて止めるのではなく、どうすれば安全に動けるかを考える必要があります。

・声かけのタイミングを工夫する
・手すりや歩行器の位置を整える
・立ち上がる前に足の位置を確認する
・本人のペースを待つ
・必要時は二人介助にする
・危険な時間帯をチームで共有する

安全を守ることと、利用者さんらしい生活を支えることは、どちらも介護職にとって大切な視点です。

不安が強いときは必ず相談する

インシデントが続くと、次の勤務が怖くなることがあります。

その状態で一人で抱え込むと、緊張が強くなり、さらに確認ミスが増えることもあります。

不安が強いときは、早めに相談しましょう。

相談先は、直属の上司、リーダー、先輩職員、看護師、ケアマネジャー、施設長など、職場によって異なります。内容によっては、リハビリ職や栄養士など専門職の意見が必要な場合もあります。

特に、医療的な判断、服薬、嚥下、急な体調変化、転倒後の対応などは、介護職だけで判断しないことが大切です。

この記事のまとめ

・介護職でインシデントが多いと感じても、すぐに向いていないと決めつける必要はない
・インシデントは事故を防ぐための大切な気づきでもある
・原因は確認不足だけでなく、焦り、思い込み、情報共有不足、職場環境にもある
・移乗、食事、服薬、排泄、忙しい時間帯は特に注意が必要
・報告や記録では、事実と推測を分けて具体的に伝える
・同じインシデントが続くときは、一人で抱えずチームで見直す
・不安が強い場合は、上司や看護師、専門職に確認しながら対応する

インシデントが多いと悩むと、自分ばかり責めてしまいがちです。

しかし、介護の仕事は一人で完璧にこなすものではありません。利用者さんの安全を守るためには、報告、相談、確認、共有を重ねながら、チームで改善していくことが大切です。

大切なのは、インシデントを隠さないこと、同じことを繰り返さないために見直すこと、そして自分を責めすぎないことです。

焦らず一つずつ確認しながら働ける環境を整えていけば、インシデントへの不安は少しずつ減らしていけます。

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