介護職として利用者さんを支えていると、利用者家族から強い口調で質問されたり、「どうして気づかなかったのですか」「きちんと見てもらえているのですか」と責められたりすることがあります。
一生懸命に介護していても、家族から厳しい言葉を向けられると、「自分の対応が悪かったのではないか」「また何か言われるのが怖い」と悩んでしまう人も少なくありません。
しかし、家族からの苦情や指摘は、必ずしも一人の介護職だけに原因があるとは限りません。利用者さんの状態変化、説明不足、家族との認識の違い、施設の人員体制など、複数の要因が重なって起きる場合があります。
大切なのは、その場で感情的に反応せず、事実を確認し、上司や他職種と連携して対応することです。この記事では、介護職が利用者家族に責められる原因や、その場での対応手順、抱え込まないための考え方を解説します。
この記事でわかること
・介護職が利用者家族に責められやすい場面
・家族が強い言葉を使う背景
・責められた時に避けたい対応
・その場を悪化させない受け答えの方法
・上司や看護師へ報告する際のポイント
・家族対応の負担を一人で抱え込まないための判断基準
介護職が利用者家族に責められるのはなぜ?
利用者家族から責められると、自分の技術や接遇に問題があったと考えてしまいがちです。しかし、家族対応のトラブルは、介護職個人の問題だけで起きるものではありません。
まずは、どのような背景から強い訴えにつながるのかを整理しておきましょう。
家族の不安や心配が強い言葉になって表れる
家族にとって、大切な人を介護施設や介護職に任せることは、簡単な決断ではありません。
施設に入所している家族の場合、日常の様子を直接確認できないため、わずかな変化でも不安を感じることがあります。
たとえば、面会時に次のような様子が見られると、家族の心配が強くなることがあります。
・以前より元気がない
・衣類が汚れている
・小さなあざや傷がある
・髪や爪が整っていない
・食事量が減っている
・本人が「何もしてもらえない」と話している
・職員から状態の説明を受けていない
介護現場では珍しくない変化でも、家族にはその背景がわかりません。そのため、不安が怒りに変わり、「ちゃんと見ているのですか」という言葉になって表れることがあります。
もちろん、強い言い方をすべて受け入れる必要はありません。ただし、怒りの奥に不安や心配が隠れている可能性を考えると、落ち着いて話を聞きやすくなります。
家族が想像する介護と現場の対応に差がある
家族が期待する介護と、実際に施設で提供できる介護には差が生じることがあります。
たとえば、家族は次のような対応を希望しているかもしれません。
・いつでも職員がそばについていてほしい
・毎日入浴させてほしい
・本人が転ばないように常に見守ってほしい
・食事を残さず食べさせてほしい
・頻繁に散歩へ連れて行ってほしい
・本人の希望をすべて優先してほしい
しかし、介護施設では複数の利用者さんを限られた職員で支援しています。また、本人の体調や意思、安全面によっては、家族の希望どおりに対応できない場合もあります。
この違いが事前に説明されていないと、家族は「頼んだことをしてもらえなかった」と感じます。
認識のずれに注意
家族の希望に対応できないこと自体が問題なのではなく、対応できない理由や代替案が共有されていないことが、トラブルにつながる場合があります。
介護職がその場で勝手に約束するのではなく、施設として対応できる範囲を確認し、必要に応じて上司や生活相談員、ケアマネジャーなどから説明してもらうことが大切です。
情報共有が不足すると「隠された」と受け取られる
利用者さんの状態に変化があっても、家族への連絡が遅れると、不信感につながることがあります。
特に注意が必要なのは、次のような場面です。
| 家族へ共有が必要になりやすい場面 | 伝える内容の例 |
|---|---|
| 転倒や転落があった | 発生時刻、状況、外傷の有無、その後の対応 |
| あざや皮膚トラブルを発見した | 発見場所、本人の訴え、看護師へ報告した内容 |
| 食事量や水分量が低下した | いつから変化したか、現在の摂取状況 |
| 発熱や体調変化があった | 体温、症状、医療職の判断、今後の対応 |
| 拒否が続いている | 拒否している内容、声かけや時間変更の結果 |
| 持ち物が見つからない | 確認した場所、職員間での共有状況 |
家族が面会時に初めて傷や変化を見つけると、「なぜ連絡がなかったのか」「何か隠しているのではないか」と感じる場合があります。
ただし、家族への連絡基準は職場によって異なります。介護職個人の判断で連絡せず、どの段階で誰が連絡するのかを確認することが必要です。
実際の介助や接遇に改善点がある場合もある
家族の訴えがすべて誤解とは限りません。介護職側の言葉遣いや説明、介助方法に改善点がある場合もあります。
たとえば、忙しさから次のような対応になっていないか振り返る必要があります。
・家族から話しかけられても作業を続けたまま返事をした
・「それは無理です」と理由を説明せず断った
・利用者さんへの声かけが強い口調になっていた
・家族の前で本人のできないことを一方的に説明した
・職員によって説明内容が違っていた
・確認していないことを推測で答えた
家族の伝え方に問題があったとしても、施設側に改善できる部分があれば見直すことが大切です。
ただし、反省することと、すべて自分の責任として背負うことは違います。まずは事実を確認し、個人ではなくチームで改善点を整理しましょう。
利用者家族に責められた時の基本的な対応手順
突然強い口調で責められると、焦って言い訳をしたり、すぐに謝ったりしたくなるかもしれません。
しかし、事実が確認できていない段階で話を進めると、後から説明が食い違う可能性があります。家族対応では、順番を意識することが重要です。
まずは安全を確保して落ち着いて話を聞く
介助中や移動中に家族から呼び止められた場合は、利用者さんの安全を優先します。
移乗介助や排泄介助の途中であれば、その場ですべてを聞こうとせず、次のように伝えます。
「お話をきちんと伺いたいので、まずこちらの介助を安全に終えてからでもよろしいでしょうか」
「担当者にも確認したうえでお話ししたいため、少しお時間をいただけますか」
安全を確保できたら、家族の話を途中で遮らずに聞きます。すぐに正誤を判断するのではなく、何に不満や不安を感じているのかを整理しましょう。
話を聞く際は、次の点を確認します。
・いつの出来事か
・どのような状態を見たのか
・誰から何を聞いたのか
・家族は何を問題だと考えているのか
・どのような説明や対応を求めているのか
相手が興奮している時ほど、介護職が大きな声で対抗すると状況が悪化します。声量を抑え、短い言葉で確認することを意識しましょう。
気持ちには配慮しても事実を決めつけない
家族の話を聞く時は、不安や不快な思いをしたことに対して配慮を示します。
たとえば、次のような言葉が使えます。
「ご心配をおかけしていることについて、まず状況を確認いたします」
「そのような状態をご覧になれば、ご不安になると思います」
「お話しいただいた内容を、責任者にも共有いたします」
ここで注意したいのは、状況を確認する前に施設側の過失を認めないことです。
「こちらのミスです」「私が悪かったです」「今後は絶対に起こしません」と断定すると、後から事実が異なっていた場合に説明が難しくなります。
一方で、「知りません」「私の担当ではありません」と突き放す言い方も避ける必要があります。
適切な受け止め方
家族の気持ちには配慮しながら、事実関係については「確認して回答する」と伝えることが基本です。
介護職個人で回答できない内容は、無理に説明せず、上司や担当職員につなぎましょう。
その場で約束や判断をしない
家族から強く求められると、早く話を終わらせるために「明日から毎日対応します」「必ず職員を一人つけます」などと答えたくなることがあります。
しかし、施設の人員や支援方針に関わることを、一人の介護職がその場で約束するのは危険です。
特に、次のような内容は責任者への確認が必要です。
・介助方法の大幅な変更
・入浴や外出回数の変更
・職員配置に関する要望
・医療的な説明
・事故の原因や責任に関する説明
・金銭や補償に関する話
・他の利用者さんや職員に関する情報
・ケアプランや契約内容の変更
「私からは判断できないため、責任者に確認いたします」と伝えることは、逃げではありません。適切な担当者へつなぐことも、介護職に必要な対応です。
一人で対応を続けず早めに職員を呼ぶ
家族が大声を出している、同じ要求を繰り返している、威圧的な態度を取っている場合は、一人で対応を続けないようにします。
周囲の職員や上司に合図を送り、可能であれば複数人で対応しましょう。
応援を求めたい状況
□ 大声や暴言が続いている
□ 職員個人を名指しで攻撃している
□ 長時間拘束されて業務に戻れない
□ 個人の連絡先や謝罪を要求されている
□ 退勤後に会うよう求められている
□ 身体的な危険を感じる
□ 金銭や補償の約束を迫られている
□ 他の利用者さんの個人情報を求められている
身の危険を感じる場合は、家族対応よりも安全確保を優先します。職場の緊急連絡手順や管理者への報告方法に従ってください。
よくある訴えごとに考えたい対応のポイント
利用者家族から責められる内容はさまざまです。ここでは、介護現場で起こりやすい訴えと対応の考え方を整理します。
傷やあざ、転倒について責められた場合
利用者さんにあざや傷があると、家族は「乱暴な介助をされたのではないか」「転倒を隠されたのではないか」と不安になることがあります。
この場合は、見た目だけで原因を断定しないことが重要です。
高齢者は皮膚が弱く、わずかな接触でも皮下出血が生じる場合があります。一方で、移乗介助や更衣介助の方法に問題がなかったか確認が必要なケースもあります。
介護職は、次の内容を確認します。
・いつ発見したか
・傷やあざの場所と大きさ
・本人に痛みや訴えがあるか
・転倒や接触の記録があるか
・看護師へ報告されているか
・写真や経過記録が必要か
・家族への連絡が行われているか
医療的な判断は介護職だけで行わず、看護師や医師などへ確認します。また、事故の原因や責任についても、個人で断定しないようにしましょう。
衣類や清潔面について指摘された場合
面会時に衣服が汚れていたり、髪が乱れていたりすると、家族から「放置されている」と受け取られることがあります。
現場では、食事直後だった、着替えを本人が拒否した、直前に排泄があったなどの事情があるかもしれません。しかし、家族はその経過を知りません。
まずは現状を確認し、必要であれば速やかに整えます。そのうえで、拒否があった場合などは、本人の尊厳に配慮しながら経緯を説明します。
「先ほどお着替えをお勧めしましたが、ご本人が強く希望されなかったため、時間を置いて再度お声かけする予定でした」
「お食事の際に衣類が汚れてしまったため、これから交換いたします」
このように、言い訳ではなく、起きた事実と今後の対応を簡潔に伝えることが大切です。
同じ指摘が繰り返される場合は、衣類交換や整容の確認方法、面会前の環境確認などをチームで見直す必要があります。
食事や水分を取れていないと責められた場合
家族から「もっと食べさせてください」「水分をきちんと飲ませてください」と求められることもあります。
ただし、介護職が無理に食事や水分を勧めると、むせ込みや誤嚥などの危険につながる場合があります。食欲低下や嚥下状態の変化には、体調や病気、薬の影響などが関係していることもあります。
次の内容を確認したうえで、看護師や管理栄養士、言語聴覚士などの専門職へ共有します。
・食事摂取量と水分摂取量
・むせ込みの有無
・食事姿勢
・口腔内の状態
・食事形態
・本人の好みや拒否の理由
・発熱、便秘、眠気などの体調変化
・食事介助を行った時間帯
注意
「本人が食べないから仕方がない」「全部食べるまで介助します」と単純に判断しないようにしましょう。食事量が低下している場合は、職場の上司や看護師などへの報告が必要です。
家族には、無理に食べさせることが安全とは限らない点を、専門職から説明してもらうと理解につながりやすくなります。
職員の態度や言葉遣いを指摘された場合
「職員の話し方が冷たかった」「本人が怒られたと言っている」という訴えが出ることもあります。
その場にいなかった介護職が、「その職員はそんなことをしません」と否定するのは避けましょう。反対に、本人の話だけで他の職員を非難することも適切ではありません。
まずは、いつ、どこで、どのような言葉があったのかを確認します。
「ご不快な思いをされた点について、当時の状況を確認いたします」
「どのような言葉だったか、覚えている範囲で教えていただけますか」
接遇に改善点があった場合は、職員個人だけの問題として終わらせず、チームで声かけや対応方法を見直します。
認知症などの影響により、利用者さんの話と実際の出来事が一致しない場合もあります。しかし、最初から「認知症だから事実ではない」と決めつけず、記録や職員からの聞き取りを行う姿勢が必要です。
家族対応を一人で抱え込まないために必要なこと
利用者家族から責められた後も、「また会ったら何を言われるだろう」「上司に報告すると自分が怒られるかもしれない」と考え、相談できない人がいます。
しかし、家族からの強い訴えを個人で抱え込むと、説明の食い違いや対応の遅れにつながります。小さな訴えに見えても、早めに共有することが大切です。
事実と感情を分けて記録する
家族対応を記録する際は、印象ではなく、確認できた事実を残します。
たとえば、「家族が怒っていた」「理不尽なことを言われた」だけでは、後から状況を正確に把握できません。
記録には、次の内容を整理します。
| 記録する項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 日時と場所 | いつ、どこで話を受けたか |
| 対応した職員 | 最初に対応した人、途中から加わった人 |
| 家族の訴え | 可能な範囲で実際の言葉を記録する |
| 利用者さんの状態 | 傷、体調、衣類、表情など確認できた事実 |
| 介護職の返答 | 何を説明し、何を確認すると伝えたか |
| 報告先 | 上司、看護師、相談員など誰に報告したか |
| その後の対応 | 家族への連絡、観察、ケア方法の変更など |
家族の様子を記録する場合も、「興奮していた」と曖昧に書くのではなく、「大きな声で同じ質問を繰り返した」「机を強くたたいた」など、客観的に記載します。
職場の記録方法や個人情報の取り扱いに従い、不必要な評価や悪口は書かないようにしましょう。
上司への報告は早い段階で行う
「自分で解決してから報告しよう」と考える人もいますが、家族からの訴えは早めの共有が基本です。
時間がたつほど、家族から「伝えたのに対応されなかった」と受け取られる可能性があります。
報告する際は、次の順番で簡潔に伝えると整理しやすくなります。
- 誰から、どのような訴えがあったか
- 利用者さんの現在の状態
- 自分が確認した事実
- 家族へどのように返答したか
- 何を判断してほしいか
報告例は次のとおりです。
「本日15時ごろ、面会に来られた娘様から、右腕のあざについて『なぜ連絡がなかったのか』と訴えがありました。現在、右前腕に約3センチの皮下出血があります。本人に痛みの訴えはありません。昨日の記録には転倒や接触の記載が見当たりませんでした。娘様には、看護師と責任者へ確認して改めて説明するとお伝えしています」
このように、事実と対応を分けて報告すると、上司も判断しやすくなります。
説明する職員と内容を統一する
家族対応では、職員ごとに説明が変わると不信感が強くなります。
ある職員は「毎日対応します」と言い、別の職員は「週に一度です」と説明すると、家族はどちらを信用すればよいかわかりません。
家族から継続的な要望や苦情がある場合は、次の点をチームで決めておきましょう。
・主に説明を担当する職員
・施設として伝える内容
・対応できることとできないこと
・次回の連絡時期
・観察や記録を強化する項目
・本人へのケア方法
・家族から再度訴えがあった時の対応手順
チームで確認したいこと
□ 家族の訴えが全職員へ共有されている
□ 説明内容に職員間の違いがない
□ 家族への連絡担当者が決まっている
□ 現場で実行できない約束をしていない
□ ケア内容の変更が記録されている
□ 看護師や相談員など必要な職種が関わっている
介護職だけで対応しにくい場合は、管理者、生活相談員、ケアマネジャー、看護師などに同席してもらうことも必要です。
暴言や過度な要求には組織として線引きする
家族の心配に寄り添うことは大切ですが、暴言や威圧的な要求まで介護職が我慢し続ける必要はありません。
たとえば、次のような行為は通常の意見や苦情の範囲を超えている可能性があります。
・人格や容姿を繰り返し否定する
・長時間にわたり職員を拘束する
・土下座や個人的な謝罪を要求する
・職員の自宅や個人連絡先を聞き出そうとする
・身体に触れる、物を投げる
・「辞めさせる」などと繰り返し脅す
・契約外のサービスを強要する
・特定の職員だけを呼び出して攻撃する
このような状況では、介護職個人の接遇だけで解決しようとせず、管理者へ報告し、施設として対応する必要があります。
危険を感じた場合はその場を離れ、他の職員を呼びます。緊急性がある場合は、職場の方針に従って警察や関係機関への相談が検討されることもあります。
責められる状況を繰り返さないための関係づくり
すべての苦情を防ぐことは難しいものの、日頃の情報共有や声かけによって、家族との認識のずれを減らせる場合があります。
問題が起きた時だけ話すのではなく、普段から小さな情報を共有することが大切です。
日常の様子を具体的に伝える
家族に「変わりありません」とだけ伝えていると、施設でどのように過ごしているのか伝わりません。
可能な範囲で、具体的な様子を共有すると安心につながります。
「今日は昼食を8割ほど召し上がり、午後は他の利用者さんとテレビをご覧になっていました」
「入浴前は少し迷われていましたが、時間を置いてお声かけすると入っていただけました」
「歩行時にふらつきが見られたため、職員が付き添って移動しています」
良い出来事だけでなく、気になる変化も早めに伝えることが重要です。
ただし、介護職が医療的な原因を推測して説明するのは避けます。体調に関する判断が必要な場合は、看護師などへ確認しましょう。
家族の希望と本人の意思を分けて考える
家族の要望が、必ずしも利用者本人の希望と一致するとは限りません。
家族は「毎日運動させてほしい」と考えていても、本人は強く拒否している場合があります。反対に、本人は外出を希望していても、家族は危険を心配して反対していることもあります。
介護職は、家族の希望だけを優先するのではなく、本人の意思、心身の状態、安全、ケアプランなどを踏まえて支援します。
対応に迷う場合は、介護職だけで判断せず、ケアマネジャーや生活相談員、看護師、リハビリ職などと相談します。
大切な視点
家族の希望を否定するのではなく、「本人にとって安全で無理のない方法を一緒に考える」という姿勢で調整することが大切です。
本人の意思確認が難しい場合も、これまでの生活歴や家族からの情報、普段の表情や反応などを参考に、チームで支援方法を検討します。
苦情が出やすい場面を職員間で共有する
同じ家族から似た訴えが繰り返されている場合は、個々の職員の対応力だけに任せないようにします。
たとえば、面会のたびに衣類や整容について指摘されるなら、面会前に確認する仕組みを作ることが考えられます。
食事量について強い不安がある家族なら、一定期間の摂取量を記録し、専門職から説明する方法もあります。
転倒を心配している家族には、現在行っている対策と、完全に転倒を防ぐことが難しい理由を説明する必要があるかもしれません。
「注意して対応する」だけで終わらせず、誰が何を確認するのかまで具体的に決めることが重要です。
職場の体制そのものに問題がないか確認する
家族からの苦情が頻繁に起きる場合、職員個人ではなく職場の体制に原因がある可能性もあります。
・人手不足で整容や清掃まで手が回らない
・事故や状態変化の報告基準が曖昧
・記録が不十分で経過を説明できない
・職員ごとに介助方法が違う
・家族からの要望が現場へ伝わっていない
・管理者が苦情対応を現場職員へ任せきりにしている
・新人が家族対応を一人で任されている
このような環境では、どれだけ一人の介護職が努力しても、トラブルを防ぎきれないことがあります。
職場体制の確認ポイント
□ 家族からの苦情を管理者が把握している
□ 事故や体調変化の連絡基準が決まっている
□ 家族対応の記録方法が統一されている
□ 困った時に責任者が対応を交代してくれる
□ 職員を守るためのルールがある
□ 家族の要望がケア内容へ反映されている
□ 定期的にカンファレンスが行われている
体制上の問題を相談しても改善されず、介護職だけが責められ続ける場合は、働き方や職場を見直すことも選択肢になります。
責められた後につらさを残さないための考え方
利用者家族から厳しい言葉を受けると、対応が終わった後も気持ちを切り替えられないことがあります。
真面目な人ほど、自分の介護そのものを否定されたように感じるかもしれません。だからこそ、反省すべき点と背負わなくてよい責任を分ける必要があります。
家族の言葉をすべて自分への評価と考えない
家族が強い言葉を使った背景には、利用者さんの状態への不安、介護への罪悪感、今後への心配、施設への不信感などが含まれている場合があります。
その感情が、目の前にいた介護職へ向けられることもあります。
もちろん、自分の対応に改善点があれば振り返る必要があります。しかし、家族の怒りをすべて自分の能力不足と結びつける必要はありません。
次のように分けて考えてみましょう。
| 振り返ること | 一人で背負わなくてよいこと |
|---|---|
| 自分の言葉遣いは適切だったか | 施設全体の人員不足 |
| 報告すべき内容を共有したか | 家族のすべての感情 |
| 確認せずに回答していないか | 他職員の未報告や記録不足 |
| 利用者さんの尊厳に配慮したか | 実現できない家族の要求 |
| 上司へ早めに相談したか | 医療的な判断や契約上の判断 |
自分で変えられる部分は改善し、それ以外は組織へ返すことが大切です。
対応後は職員同士で振り返る
家族対応が終わった後は、できれば上司や同僚と短時間でも振り返りを行いましょう。
確認したいのは、誰が悪かったかではなく、次回の対応をそろえるための情報です。
・家族は何に最も不安を感じていたか
・こちらの説明で不足していた部分は何か
・次に誰が連絡するのか
・利用者さんの観察項目は何か
・家族が再度来訪した時にどう対応するか
・介護職一人で対応しない方がよいか
対応した職員が強く動揺している場合は、業務を一時的に交代するなどの配慮が必要なこともあります。
「介護職なら責められても耐えるべき」と考えず、精神的な負担についても相談しましょう。
自分を守ってくれない職場では無理を続けない
家族からの苦情そのものよりも、職場が介護職を守ってくれないことに苦しむ人もいます。
次のような状態が続く場合は注意が必要です。
・事情を確認せず介護職だけを謝らせる
・管理者が家族対応を避ける
・暴言を受けても「我慢して」と言われる
・事故や苦情を個人の責任で処理させる
・報告すると責められるため相談できない
・家族からの無理な要求をすべて受け入れる
・同じトラブルが起きても改善されない
・精神的につらくても勤務を交代してもらえない
家族対応は介護職に必要な仕事の一つですが、職員個人が攻撃を受け続けることまで業務ではありません。
上司へ相談しても改善されない場合は、さらに上の管理者や法人窓口へ相談する方法があります。外部の相談窓口や労働関係の窓口を利用する選択肢もあります。
眠れない、出勤前に強い不安がある、動悸や吐き気が続くなど、心身に影響が出ている場合は、無理をせず医療機関などへ相談してください。
転職を考える時は「家族対応の体制」を確認する
現在の職場で家族対応の負担が大きい場合、転職先では給与や勤務時間だけでなく、苦情対応の体制も確認しましょう。
面接や職場見学では、次のような質問ができます。
面接で確認したい質問
「利用者家族から相談や苦情があった場合、どの職種が中心となって対応しますか?」
「介護職が家族対応で困った時は、管理者へすぐ相談できますか?」
「事故や状態変化を家族へ連絡する基準は決まっていますか?」
「新人が一人で家族対応を担当することはありますか?」
「家族から強い要求があった場合の対応方針を教えていただけますか?」
見学時には、職員が家族と話している様子や、相談員・管理者が現場にいるかも確認材料になります。
「家族対応が少ない職場」だけを探すのではなく、問題が起きた時に組織として対応してくれる職場かどうかを見ることが重要です。
介護職が利用者家族に責められる時は個人で解決しようとしない
利用者家族に責められた時は、まず相手の訴えを落ち着いて聞き、確認できている事実と、まだ確認できていない内容を分ける必要があります。
家族の不安に配慮することは大切ですが、その場で過失を認めたり、施設として実行できない約束をしたりする必要はありません。
家族対応は、介護職一人で抱える仕事ではありません。上司や看護師、生活相談員、ケアマネジャーなどへ報告し、説明内容や今後の対応をそろえることが大切です。
この記事のまとめ
・家族の強い言葉の背景には、利用者さんへの不安や情報不足が隠れている場合がある
・責められた時は、気持ちに配慮しながら事実確認を優先する
・確認前に過失を認めたり、その場で対応を約束したりしない
・傷や体調変化などは、介護職だけで判断せず看護師や上司へ報告する
・家族とのやり取りは客観的に記録し、説明内容を職員間で統一する
・暴言や威圧的な要求は我慢せず、組織として対応してもらう
・管理者が介護職を守らない職場では、異動や転職を含めて働き方を見直す
家族に責められたからといって、介護職としてのすべてを否定されたわけではありません。改善すべき部分はチームで見直し、自分だけでは背負えない問題は、適切な担当者へつなぐことが必要です。
利用者さんの安全と尊厳を守るためにも、介護職自身が安心して働ける体制を整えることが大切です。


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