介護職として働いていると、利用者さんから体を触られたり、性的な言葉をかけられたりすることがあります。
しかし、介助には身体接触が伴うため、「これくらいは我慢するべきなのか」「認知症だから仕方がないのか」「拒否すると介護を放棄したと思われないか」と迷う人も少なくありません。
利用者さんの尊厳を守ることは大切です。一方で、介護職の安全や尊厳も同じように守られる必要があります。セクハラを受けた職員が一人で我慢し続けることは、適切な利用者対応とはいえません。
この記事では、利用者さんからセクハラを受けた時の初期対応、記録と報告の方法、職場に求めたい安全対策、利用者対応に限界を感じた時の判断基準を解説します。
この記事でわかること
・介護現場でセクハラに当たる可能性がある言動
・認知症による言動と安全確保を分けて考える理由
・利用者さんから触られた時のその場での対応
・上司へ報告する時に記録しておきたい内容
・職場に求められる再発防止策
・利用者対応に限界を感じた時の相談先と判断基準
介護職が受けるセクハラはどこからなのか
不必要に体を触る行為や性的な発言は対象になる
介護現場におけるセクハラには、職員の意に反する性的な言動や接触などが含まれます。
例えば、次のような行為です。
・介助に必要がないのに手や腕、胸、腰、尻などを触る
・職員を抱きしめようとする
・入浴介助や排泄介助の最中に性的な発言を繰り返す
・恋人や性的関係を求める発言をする
・職員の容姿や体形について性的な評価をする
・下着を見せようとする
・キスを迫る
・断っても性的な誘いを繰り返す
・特定の性別や職員にだけ介助を求める
厚生労働省の資料でも、必要なく手や腕を触る、抱きしめる、入浴介助中に性的な話をするといった行為が、介護現場におけるセクシュアルハラスメントの例として示されています。
重要なのは、利用者さん本人が「冗談だった」「親しみを示しただけ」と考えていたとしても、職員が望んでいない性的な言動を受け続けてよい理由にはならないということです。
一度だけの発言でも、内容が強く、職員が恐怖を感じた場合は報告が必要です。回数だけで「大したことではない」と判断しないようにしましょう。
介助に必要な身体接触と不必要な接触を分けて考える
介護職の仕事では、移乗介助、入浴介助、排泄介助、更衣介助などで利用者さんの体に触れます。
そのため、一般的な職場よりも「業務上必要な接触」と「不必要な接触」の境界がわかりにくくなることがあります。
例えば、立ち上がり時に利用者さんが職員の腕につかまることは、安全確保のために必要な場合があります。一方で、姿勢保持とは関係なく胸や尻を触る、手を離すように伝えても触り続ける場合は、業務上必要な接触とは考えにくいでしょう。
判断に迷った時は、次の点を整理します。
| 確認すること | 判断の手がかり |
|---|---|
| 介助に必要な動きか | 移乗や体位保持に必要な接触だったか |
| 職員が拒否を伝えたか | やめてほしいと伝えても続いたか |
| 同じ言動が繰り返されているか | 特定の職員に何度も行われているか |
| 性的な意味が含まれているか | 性的な発言や要求を伴っていたか |
| 職員が恐怖や不快感を覚えたか | 介助を続けることが難しい状態か |
職員本人だけで判断できない場合は、上司やリーダーに事実を伝え、チームで確認することが大切です。
「介護の仕事だから触られて当然」と考える必要はありません。
認知症の症状かどうかは専門職を交えて判断する
利用者さんの性的な言動が、認知症や脳の病気、薬の影響、精神状態の変化などによって生じている可能性もあります。
厚生労働省の資料では、認知症などの病気や障害の症状として現れた言動は、単純にハラスメントと決めつけず、医療的なケアの視点から対応する必要があるとされています。
一方で、病気や障害が原因であっても、職員の安全に配慮する必要があることは変わりません。 ハラスメントなのか症状による言動なのかは、施設だけで判断せず、主治医、看護師、ケアマネジャーなどの意見も確認することが示されています。
そのため、現場では次の2つを同時に考える必要があります。
・利用者さんの症状や不安、体調変化を確認する
・職員が安全に介助できる体制を整える
「認知症だから仕方がない」と職員に我慢させるのではなく、介助方法、職員配置、環境、時間帯、服薬状況などをチームで見直します。
覚えておきたいこと
利用者さんの言動に病気や認知症が関係している可能性があっても、職員が触られ続ける必要はありません。
原因の評価と職員の安全確保は、別々に必要な対応です。
利用者からのセクハラを我慢してはいけない理由
心身の不調が仕事以外の時間にも残るから
セクハラを受けると、その場では笑って受け流せたように見えても、後から不快感や恐怖が強くなることがあります。
例えば、次のような変化が現れることがあります。
・その利用者さんの部屋に入るのが怖い
・入浴介助や排泄介助が苦痛になる
・勤務前になると動悸や吐き気がする
・自分の対応が悪かったのではないかと考え続ける
・眠れない、食欲が落ちる
・仕事に集中できず、ミスが増える
・異性の利用者さん全体への対応が怖くなる
このような状態になっている場合、単なる「苦手な利用者対応」ではなく、心身の安全に関わる問題として扱う必要があります。
特に、毎日のように同じ利用者さんを担当する職場では、被害が一度で終わらず、勤務のたびに緊張が続きます。
つらさの大きさは、行為の回数だけでは決まりません。 一度の行為でも強い恐怖を感じることがあります。
放置すると言動が強くなる可能性がある
最初は性的な冗談だけだったとしても、職場が何も対応しなければ、接触や要求が強くなる場合があります。
利用者さんが「この程度なら許される」「この職員は断らない」と受け取ってしまう可能性もあります。
そのため、初期の段階で境界を伝え、記録し、職員間で対応を統一することが重要です。厚生労働省も、ハラスメントでは初期対応が重要であり、不適切な初期対応によって言動や関係性が悪化する可能性があると示しています。
被害を受けた本人が笑って流す対応を続けると、周囲の職員も状況に気づけません。
利用者さんとの関係を悪くしたくない気持ちは自然ですが、曖昧に受け流すことが必ずしも利用者さんのためになるとは限らないと考えておきましょう。
介護の質と利用者さんの安全にも影響する
セクハラへの恐怖が強い状態で介助を続けると、職員が利用者さんから距離を取りたくなったり、必要な声かけが減ったりすることがあります。
また、突然触られて職員が体を引いた際に、利用者さんがバランスを崩す可能性もあります。移乗介助や入浴介助中であれば、転倒や転落などの事故につながりかねません。
ハラスメントを放置すると、職員の心身が傷つくだけでなく、サービスの質の低下や人材流出につながる可能性があると厚生労働省も指摘しています。
職員が安心して介助できる環境を整えることは、利用者さんへの安定したサービス提供にもつながります。
セクハラへの対応は、利用者さんを責めるためではありません。双方の安全を守り、介護を継続できる状態をつくるための対応です。
一人の対応力だけでは解決できないから
声かけを工夫すれば改善するケースもありますが、すべてのセクハラを職員個人のコミュニケーション能力だけで防ぐことはできません。
利用者さんの状態や環境によっては、次のような対策が必要です。
・担当職員を変更する
・二人介助にする
・同性職員を含めて担当方法を検討する
・居室の扉を開けて対応する
・ナースコールや応援要請の方法を決める
・介助時間や場所を変更する
・看護師や主治医に状態を確認する
・家族やケアマネジャーを交えて話し合う
厚生労働省のマニュアルでも、介護現場のハラスメントは個人の努力に任せず、組織として対応する体制を構築することが重要だとされています。
結論
利用者さんからのセクハラは、職員個人が我慢して解決する問題ではありません。
発生した時点で共有し、職場全体の問題として安全対策を検討する必要があります。
セクハラを受けた直後に安全を守る対処法
短い言葉でやめてほしいと伝える
性的な発言や接触を受けた時は、可能な範囲で、やめてほしいことを短く伝えます。
例えば、次のような言い方です。
・「そこは触らないでください」
・「そのお話には答えられません」
・「そのような言い方はやめてください」
・「手を離してください」
・「介助に必要なことだけ行います」
・「続く場合は、別の職員を呼びます」
長く説明したり、利用者さんを説得しようとしたりする必要はありません。
強い口調で怒鳴る必要はありませんが、笑いながら曖昧に答えると、拒否が伝わらないことがあります。穏やかでも、境界は明確に伝えることがポイントです。
ただし、恐怖で声が出なかった場合や、とっさに対応できなかった場合でも、自分を責める必要はありません。拒否できなかったことは、行為を受け入れたことにはなりません。
危険を感じたら介助を中断して距離を取る
利用者さんが手を離さない、抱きつこうとする、服をつかむ、出口をふさぐといった状況では、介助の継続より安全確保を優先します。
可能であれば、次の順番で行動します。
- 利用者さんの転倒リスクを確認する
- 手を離すよう短く伝える
- 安全に離れられる位置へ移動する
- ナースコールや内線で応援を呼ぶ
- 一人で対応を続けない
- 安全が確保されるまで介助を中断する
訪問介護では、その場に他の職員がいないことがあります。玄関までの経路をふさがれた、施錠された、身体をつかまれたなど、危険がある場合は、利用者宅から離れることを優先します。
厚生労働省のマニュアルでも、訪問先から速やかに外へ出られる経路を確認し、職員間で共有することが重要とされています。
その場の優先順位
1.自分と利用者さんの身体の安全
2.周囲への応援要請
3.介助の再開が可能かの判断
4.管理者への報告接遇や予定どおりの業務遂行より、安全を優先します。
暴力や強い危険がある時は緊急対応をためらわない
無理に体を押さえつけられた、服を脱がされそうになった、刃物を出された、帰ることを妨げられたなど、生命や身体に危険がある場合は、通常の利用者対応だけで解決しようとしないことが大切です。
施設内であれば、大声や緊急コールで周囲の職員を呼びます。訪問先で逃げられる場合は、建物の外や人目のある場所へ移動します。
差し迫った危険がある場合は110番、けがや体調不良がある場合は119番への連絡も検討します。
介護職だからといって、犯罪に当たり得る行為まで受け入れる必要はありません。厚生労働省の資料でも、介護現場のハラスメントには、内容によって犯罪になり得る行為が含まれるとされています。
「警察を呼ぶほどではないかもしれない」と迷うことがありますが、現場にいる本人が強い危険を感じている時は、安全な場所へ離れることを優先してください。
利用者さんを一人で問い詰めない
被害を受けた直後に、職員が一人で利用者さんを問い詰めたり、謝罪を迫ったりすることは避けます。
利用者さんが興奮している場合は、言動がさらに強くなる可能性があります。また、認知症や見当識障害がある場合、本人が状況を理解できず、混乱することもあります。
事実確認や今後の説明は、管理者や複数の職員が関わった状態で行う方が安全です。
その場では、次のように伝える程度にします。
「今の行為は困ります。いったん介助を中止し、責任者に相談します」
利用者さんへの説明と、被害を受けた職員の安全確保を同時に行う必要があります。どちらか一方だけに対応を任せないことが大切です。
被害を職場へ伝える時の記録と報告方法
小さなことだと思っても早めに報告する
利用者さんからセクハラを受けた時は、できるだけ早く、直属の上司、リーダー、管理者などに報告します。
「自分で対応できたから報告しなくてよい」と考える必要はありません。
一度目の報告がなければ、別の職員が同じ利用者さんから被害を受けた時も、それぞれが単発の出来事として処理されてしまいます。
早めに共有することで、次の対応につなげやすくなります。
・過去にも同じ行為がなかったか確認する
・他の職員から情報を集める
・次回の担当を変更する
・二人で対応する
・看護師やケアマネジャーへ相談する
・利用者さんの状態を再評価する
・家族へ説明する必要性を検討する
厚生労働省は、職員がトラブルを抱え込まず管理者へ相談し、施設・事業所の事案として捉えて対応することが重要だと示しています。
感想だけでなく具体的な事実を残す
記録する時は、「気持ち悪かった」「ひどいことをされた」だけではなく、具体的な言動を残します。
| 記録する項目 | 記載する内容 |
|---|---|
| 日時 | 何月何日、何時頃か |
| 場所 | 居室、浴室、トイレ、利用者宅など |
| 介助内容 | 入浴介助、更衣介助、訪問時の生活援助など |
| 利用者の言動 | 実際に言われた言葉、触られた部位や動作 |
| 職員の対応 | 拒否した、距離を取った、応援を呼んだなど |
| 利用者の反応 | やめた、続けた、怒った、笑っていたなど |
| 目撃者 | 同席していた職員や家族 |
| 心身の状態 | 痛み、けが、恐怖、勤務継続の難しさ |
| 報告先 | 誰に、何時頃報告したか |
| 希望する対応 | 担当変更、二人介助、面談など |
発言は、できるだけ実際の言葉に近い形で記録します。
ただし、利用者さんへの悪口や人格評価は避けます。「変態的だった」ではなく、「胸を触ろうとして手を伸ばした」「『一緒に寝よう』と3回発言した」のように書きます。
事実と職員の受けた影響を分けて記録すると、管理者が状況を判断しやすくなります。
上司への報告は要望まで具体的に伝える
被害の事実だけを報告しても、「様子を見ましょう」で終わってしまうことがあります。
今後どのような対応を希望するのかも伝えましょう。
報告の例
「本日14時頃、入浴介助中に〇〇さんから胸を触られました。手を離すよう伝えましたが、もう一度手を伸ばされました。現在、一人で入浴介助を担当することに恐怖があります。次回から二人で対応するか、担当変更を検討していただきたいです」
ほかにも、次のように伝えられます。
・「以前にも同じ発言があり、今回で3回目です」
・「笑って受け流すことができない状態です」
・「一人で居室へ入ることに不安があります」
・「看護師や主治医を含めて原因を確認してほしいです」
・「職員間で対応方法を統一してほしいです」
・「管理者から利用者さんや家族へ説明してほしいです」
被害を受けた本人が、利用者さんへの注意や家族説明まで一人で担当する必要はありません。
記録を残した後の対応も確認する
報告した後は、職場がどのような対応を行うのか確認します。
口頭で「わかりました」と言われただけでは、勤務交代後の職員に情報が伝わらない可能性があります。
確認したい内容は次のとおりです。
報告後の確認リスト
□ 申し送りや会議で情報共有されるか
□ 次回の担当者と対応方法が決まっているか
□ 一人介助を続けるのか見直されるか
□ 看護師やケアマネジャーへ相談するか
□ 利用者さんや家族への説明は誰が行うか
□ 再発した時の応援要請方法が決まっているか
□ 自分の心身の状態を確認する面談があるか
記録を提出した日、管理者から受けた説明、決定した対策も手元で整理しておくと、後から経過を振り返りやすくなります。
なお、個人のスマートフォンによる録音や撮影は、職場の規定や個人情報の扱いに関わります。自己判断で行わず、必要性や保存方法を管理者に確認してください。
職場に求めたい再発防止と安全対策
担当変更や二人介助を検討してもらう
セクハラが繰り返される場合、同じ職員を一人で担当させ続ける対応には問題があります。
状況に応じて、次のような調整を検討します。
・担当職員を変更する
・同性職員を含めて担当を組み直す
・入浴や排泄介助を二人で行う
・居室の扉を開けた状態で対応する
・他職員が近くにいる時間帯へ変更する
・訪問介護を複数名訪問にする
・緊急連絡用の機器を持たせる
・介助時間を短く区切る
・利用者さんと一定の距離を保てる環境にする
すべての職場ですぐに人員を増やせるとは限りません。しかし、人手不足を理由に、被害を受けた職員へ同じ対応を続けさせることが当然になってはいけません。
厚生労働省も、施設や訪問の場で職員と利用者さんが一対一になるリスクをできるだけ避けるため、環境や提供体制を整える必要があるとしています。
安全対策の考え方
「本人が気をつける」だけでは再発防止になりません。
人員配置、介助場所、時間帯、応援体制まで具体的に変える必要があります。
利用者さんの状態と行動のきっかけを評価する
セクハラに見える言動の背景に、認知症、せん妄、不安、孤独感、薬の影響、睡眠不足などが関係している場合があります。
チームでは、次の点を確認します。
・いつから言動が始まったか
・特定の時間帯だけに起きるか
・特定の職員や性別に向けられているか
・入浴、排泄、更衣など特定の介助中に起きるか
・体調や認知機能に変化がないか
・薬の変更後に始まっていないか
・性的な言動以外の不穏や興奮がないか
・家族や以前の事業所でも同様の言動があったか
必要に応じて、看護師、主治医、ケアマネジャー、リハビリ職などへ相談します。
原因を確認することは、行為を正当化するためではありません。利用者さんに合った支援と、職員が安全に働ける介助方法を考えるためです。
介護職だけで医療的な原因を判断せず、専門職へ確認しましょう。
利用者さんや家族への説明を職場として行う
利用者さんが説明を理解できる状態であれば、管理者などから、職員への不必要な接触や性的な言動は認められないことを伝えます。
認知症などにより本人への説明が難しい場合でも、家族や関係者へ状況を共有し、対応への協力を依頼することがあります。
説明では、感情的に責めるのではなく、次の点を具体的に伝えます。
・どのような言動があったか
・職員が安全に介助できない状態になっていること
・今後の介助方法を変更すること
・再発した場合に介助を中断する可能性があること
・継続的なサービス提供には協力が必要なこと
厚生労働省のマニュアルでも、どのような行為がハラスメントに当たるのか、発生時にどのように対応するのかを、利用者さんや家族へ周知することが重要とされています。
被害を受けた職員一人に説明を任せると、利用者さんとの関係がさらに悪化する可能性があります。管理者や複数の職員が組織として説明することが望まれます。
職員ごとに対応を変えない
ある職員は笑って流し、別の職員は厳しく注意し、さらに別の職員は何も言わないという状態では、利用者さんも境界を理解しにくくなります。
職場内では、次のような対応を統一します。
・性的な発言にはどのように返すか
・接触があった時はどの時点で介助を中止するか
・誰に応援を求めるか
・どの記録様式を使うか
・再発時に担当変更するか
・利用者さんや家族への説明を誰が行うか
申し送りでは、「〇〇さんは注意」といった曖昧な表現ではなく、具体的なリスクと対応方法を伝えます。
申し送りの例
「更衣介助中に職員の胸へ手を伸ばす行為が2回ありました。介助前に触らないよう説明し、必ず二人で対応します。再度接触があった場合は介助を中断し、リーダーへ連絡してください」
職員全員が同じ方針で対応することで、被害を受けた職員だけが悪者になることを防ぎやすくなります。
職場が動かず利用者対応に限界を感じた時は
改善されない職場では相談先を一段上げる
上司に相談しても、「介護なんだから我慢して」「そのくらいうまくかわして」「利用者さんを怒らせないで」と言われ、具体的な対応が行われないことがあります。
その場合は、同じ上司だけに相談を繰り返すのではなく、相談先を変えます。
・施設長や管理者
・法人本部の人事・労務担当
・職場のハラスメント相談窓口
・安全衛生委員会
・労働組合
・産業医や外部相談員
相談する際は、日時、具体的な言動、これまでの報告内容、職場の返答、現在の心身の状態を整理して伝えます。
厚生労働省の総合労働相談コーナーでは、ハラスメントを含む幅広い労働問題について、無料・予約不要で電話や面談による相談を受け付けています。(厚生労働省)
また、2026年10月1日からは、顧客等によるカスタマーハラスメントへの対策が事業主に義務づけられます。(厚生労働省)
法的な判断が必要な場合は、労働局、弁護士、警察などの専門機関へ確認してください。
心身に症状がある時は休むことも必要になる
利用者対応のことを考えると眠れない、涙が出る、動悸がする、出勤できないといった状態は、無理を続けてよいサインではありません。
早めに医療機関へ相談し、必要に応じて休養や勤務調整を検討します。
受診する際は、次の内容を伝えると状況を説明しやすくなります。
・いつ頃から症状があるか
・職場でどのような出来事があったか
・睡眠や食欲への影響
・仕事中に感じる恐怖や緊張
・出勤や介助の継続が可能か
・職場へ提出する書類が必要か
「休んだら同僚に迷惑がかかる」と感じることもあります。しかし、限界を超えて働き続け、事故や体調悪化につながれば、本人にも利用者さんにも大きな影響があります。
安全に仕事を続けられない状態なら、休むことも必要な対処です。
異動や転職は逃げではない
相談しても一人介助を続けさせられる、記録を残しても改善されない、被害を訴えたことで責められるような職場では、働き続けること自体を見直してよいでしょう。
次のような状態が続く場合は、異動や転職を検討する目安になります。
職場を離れる判断チェック
□ セクハラを報告しても記録されない
□ 同じ利用者さんを一人で担当させられる
□ 「我慢できない方が悪い」と責められる
□ 担当変更や二人介助を一切検討してもらえない
□ 相談後に不利な扱いや嫌がらせを受けた
□ 出勤前から強い恐怖や体調不良がある
□ 事故が起きそうな状況でも介助継続を求められる
□ 法人や外部窓口へ相談しても改善の見込みがない
介護職は、施設形態や管理者の考え方によって、ハラスメントへの対応に差があります。
今の職場で守ってもらえなかったからといって、介護職そのものに向いていないとは限りません。職員の安全を重視し、相談窓口や対応マニュアルを整えている職場もあります。
転職先を探す場合は、面接や職場見学で次のように質問します。
応募前に聞きたい質問
「利用者さんから職員へのハラスメントがあった場合、どのように対応していますか?」
「一人での対応が危険な場合、二人介助や担当変更は可能ですか?」
「職員が相談できる窓口や報告書はありますか?」
「訪問先で危険を感じた時の緊急連絡体制を教えてください」
回答が曖昧で、「現場でうまく対応してもらう」と個人任せにする職場には注意が必要です。
我慢ではなく組織的な対応で安全を守る
利用者さんからのセクハラに悩んでいる時、最初に覚えておきたいのは、あなたが悪いわけではないということです。
服装、話し方、年齢、性別、利用者さんへの接し方を理由に、自分を責める必要はありません。
介護職には利用者さんの尊厳を守る責任がありますが、そのために職員自身の尊厳を差し出す必要はありません。
利用者対応の限界を感じた時は、我慢を増やすのではなく、安全対策を増やすことが大切です。
この記事のまとめ
・不必要な身体接触や性的な発言は、介護現場のセクハラに当たる可能性がある
・認知症などが関係していても、職員の安全を守る必要性は変わらない
・危険を感じた時は介助を中断し、距離を取って応援を求める
・被害の日時、場所、具体的な言動、対応を客観的に記録する
・担当変更や二人介助など、職場全体で再発防止策を検討する
・相談しても改善されず限界を感じる場合は、外部相談や異動、転職も選択肢になる
セクハラを我慢できることは、介護職としての能力ではありません。
安心して利用者さんと向き合うためにも、問題を一人で抱え込まず、上司や同僚、専門職、外部機関へ早めに相談しましょう。


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